40 ホイロス城砦
何日たったのか分からない、馬車に揺られて少なくとも3日は立ったような気がするが目隠しをされていたので外の風景を知るのは食事の時だけだった。ヴェルタニア周辺では魔物が少なく戦闘もあまり起きていなかったが、ホイロス城砦に近づくにつれて魔物との戦闘間隔が短くなってきたかのように思える。何回目かの戦闘に入る。何れの戦闘でもさすがの王国の騎士団なのか、素早く終わらせて僕をホイロス城砦に連行する任務に戻り馬車を走らせた。
「どうなっているんだ?ホイロスの奴らは何をやっているんだ!!魔物が多すぎる、これでは有事の時に援軍にすぐに駆け付けられないではないか!!」
「まあ、パラミデス卿を率いる第2騎士団の連中の事は隊長も知っているでしょう?まともに働くわけがありませんよ……」
「先祖はかつて勇者と共に魔王と共に戦った傑物なのに……王様もかつてのパラミデス家に恩を報いれるために代々第2騎士団の座はパラミデス家にしてきたのに……それに胡坐をかくとは同じ騎士として情けない…」
「パラミデス卿は自分の事は騎士なんて微塵も思ってないと思いますけどね…先祖の七光りで実力も無いのに騎士団長になってしまって。王様もパラミデス家は無下には出来ないからって、数100年攻められたことが無いホイロス城砦に防衛隊長として派兵任務いる任せているんですから」
パラミデスへの不満が騎士団員から止まらない、僕はその悪名高いパラミデスの下に向かおうとしている。本当に大丈夫なの?クイナさん!!もしかして宰相の作戦なのではないのか?悪辣な環境に僕を閉じ込めて事故やあるいは別の手で始末しようとしているのでは……
考えても仕方がない今は生き残る事だけを考えなくてはもしかしたら噂はあくまで噂だけなのかもしれないし以外にいい人の可能性も…あるわけないか。馬車が停車したようだ。最後の食事休憩から余り経っていない、目隠しを外されると目の前には城壁に守られているヴェルタニアのような煌びやかな感じの建物ではなくあくまで戦闘に最適化したのであろう無骨な建物が視界に入った。
「我々の任務はこれにて終了になる。後の事はパラミデス卿に聞いてくれ」
「分かりました……ありがとうございます」
ここまで連れて来てくれた騎士の方々はヴェルタニア城にの方へ帰っていった。残された僕はホイロス城砦の門番であろう騎士に声を掛ける。僕に軽い紹介をしてくれた門番の方はサイロさんという方らしい、噂とは違い真面目そうな雰囲気で安心する。
僕も軽く自己紹介をしてからサイロさんと共に門の方へ入ろうとする。門が開き内側から1台の馬車が出てきた。馬を操っている人の顔は隠されて確認できなかったが馬車に書かれている9本の尻尾の紋章が目に入る。何かを思い出した騎士は慌てて僕の目の前に立ちふさがる。
「今日は商人が食料品の運び入れがあった日だったとは忘れていた。商品に異常が無いかパラミデス様が選果することになっているので…今は入ることは出来ない…しばらく待っていてくれないか?」
「待っていろって言われてもどこに待っていたらいいんですか?」
「そうだな……そういえば私もパラミデス卿から仕事を頼まれていた。君も一緒にやってみるか?いずれは君にもやってもらう事になるだろうからな今から覚えておくのも良いかもしれない」
僕を残してサイロさんはホイロス城砦入ってしばらくすると馬に乗ったサイロさんが出て来た。僕は馬の引いている荷台の方に乗るように言われたので乗り込むと目の前には袋に包まれた何かがある。近づくにつれて酷いにおいが鼻を刺激する。サイロさんに中身の確認をするとホイロス城砦から出た生ごみらしいのだが袋の形状を見ると嫌な想像しかつかない。
ホイロス城砦から離れて数時間した。森精人が住まうとされている魔の森の近くに降ろされる。僕とサイロさんは穴を掘っていた。城砦近くに捨てると魔物が集まってきたりするので離れた所に廃棄するのだそうだ。魔の森なら森が養分にするために直ぐに分解するので大量に出た場合でも魔物が集まって来る心配はないそうだ。僕たちは手分けをしてその荷物を埋める穴を掘っていった。
「よしこの辺りでいいだろう、あとはこの荷物を埋めれば終わりだ酷いにおいがするが我慢してくれよ働かざる者は食うべからずだ。カナタはそっち側を持ってくれよ…重いから慎重にな」
「分かりましたよ……やれば良いんでしょ……」
酷いにおいをする荷物を二人で持ち穴の方へ向かう、慎重に運んでいたつもりが途中で木の根っこに足を引っかけて転倒してしまった。荷物を落としてしまい中身が袋から出てきて露になってしまう。嫌な想像した通りそれは死体だった。腐敗が進んでしまっているのか顔はつぶされてしまっていているので性別すらも判断できない状態だった。分かるのは青色の髪で耳は人ではない犬のようなものが生えている事だけだった。僕はあまりの光景に胃の内容物を全て出してしまう、サイロさんの方を見るとバツの悪そうな表情をしていた。
「すまないなカナタ……その遺体はホイロス城砦に侵入してきた魔族で恐らく城砦の情報を調べるために来た諜報部隊の者だろう。何百年も攻められたことが無いホイロス城砦だが稀にこういう事がある。知らないままならそれで良かったがすまないな…」
その遺体を拾い上げて穴に落としていく。僕とサイロさんは遺体を埋めてからホイロス城砦へと帰還した。その道中はお互いに無言で気まずい状態だった。僕もダンジョンで魔物を人型の魔物を狩っていたので慣れているものだと勘違いしていた。目の前で見た光景と匂いがいくら振り払っても頭から離れなかった。
ホイロス城砦の中に入るとサイロさんは門番の任務に戻り僕はパラミデスの下に向かうように伝えられた。パラミデスが待っているとされている部屋の前には2人の騎士が守っている。粗相のないように言われたので慎重に部屋の中に入ると、肉を食べてワインなのか赤い飲み物でその肉を流し込んでいる。肥え太ったとても騎士団長には見えないが、恐らく彼がアグスティン・パラミデスなのであろう。
「お前が聞いてた四葉奏多かえ…わしは聞いて居るだろうがアグスティン・パラミデスだえ。気軽にアグーちゃんと呼ぶぞえ、他の皆は家名でばかりで中々呼んでくれないから悲しいだえ。この城砦は働かざる者は食うべからずぞえ、たくさん働くものには給金を弾むのでがんばるぞい」
「わ……分かりましたア…アグーちゃん…」
「後の事はランカに任せるぞい。彼女から仕事の事を教えてもらうだえ」
騎士団の方がパラミデスの前に2枚目の肉を置くと美味しそうに齧り付いている。僕はそのまま退出して僕がこれから住み込みで働く事になる場所に向かった。パラミデスの居る建物からかなり離れた所に僕が前に住んでいた騎士団寮を彷彿させる建物があった。案の定ここがこのホイロス城砦で寝泊まりすることになるようだ。
部屋に入ると一人の犬の獣人だろうか?犬の耳に褐色の肌に鈍色の髪をしている、僕よりも年は少し上に見えるかなり美人の女性が居た。着ているものはかなり薄着でいろいろ危ない。心の中で般若心境を唱えつつ僕の信仰する黒川さんの姿を思い出し何とか耐えてみる。彼女は僕の姿を目にとめると笑顔で向かい入れてくれた。
「あたいの名前はランカだよ!!君が私の後任になってくれる新人さんだね!!よろしく」
「僕の名前は四葉奏多って言います。よろしくお願いしますランカさん」
このランカさんと一緒の部屋と聞かされた時は驚き戸惑ったがこれから共同生活をする人がランカさんでよかった。あの3バカ勇者みたいなやつが居たら早々に心が折れていただろう。ランカさんは面倒見がよく僕がここに来た理由を話した時は一緒になって怒ってくれたりした。人族は魔族に対して悪い感情しかもっていなかったが、魔族はそんな事ないのか僕には不思議だった。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




