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無職でも英雄や勇者になれますか?  作者: チム子


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39 国家反逆罪の判決



やはり廣瀬は作戦などは何も考えずに僕の危機をどこからか聞きつけて来てくれたのだろう。仲間思いは廣瀬の素晴らしく良い所なのだが、アンドレス宰相の顔色を見る限り僕たちの立場がより悪い方向に行っているのが手に取るようにわかる。廣瀬のその発言を聞いてなのか第6騎士団長のエルクは冷笑し、あからさまに不機嫌になったアンドラス宰相の眉間に深いしわが刻まれる。



「その者たちの刑罰は決まっている。勇者に命の危険を及ぼした罪は重い、勇者の損失それはこの王国の滅亡にもつながる!!明日にでもその者を処刑いたす!!」


「そんな事この俺が許すかと思っているのか?キクシオ出番だ……心友《しんゆう》を処刑するというならば俺の屍を越えて見せろおおおお!!『ディバインズ・ブレイバー』ああああああ!!!


このスキルは身体強化なのだろうか?黄金のオーラが廣瀬の身から噴き出し身に纏っている。騎士団と大臣はその迫力に慄いていたが、第6騎士団長エルクは違った。クイナさんが偽物と言っていたが剣聖の名を継ぐだけの実力はあったのか。冷静に剣を抜き廣瀬に相対する。



「剣聖を舐めるなよ。勇者に選ばれたばかりのお前ごとき、この私に勝てると思っているのか?」


「貴様こそ我々の絆を舐めるんじゃない!!カナタは俺が守る!!キクシオォォォオオオ!!」


黄金の光がエルクの剣を弾いた。不意打ちの攻撃にエルクは対応できずにそのまま自身の剣を手放してしまう、廣瀬はこの好機を見逃すわけもなく、エルクに頬に重い一撃を解き放った。まともに受けたリオンは膝から崩れ落ちたが、さすがの騎士団長なのかすぐに立ち上がったが様子がおかしい。瞳が赤く煌々と光っている。



「ふざけるなふざけるなふざけるなあああああああ!!」


リオンが叫び手を胸に手をかざすと禍々しい剣の柄が現れ、引き抜かれようとしている。廣瀬もこの禍々しいオーラに当てられたのか額から冷汗が伝ってくる。廣瀬も剣を構え両者の緊張が最大限になった時に手の叩く乾いた音がこの部屋に響き渡った。



「両者ともに止めい!!勇者殿の気持ちは分かった。私もこの国を守ってくださる召喚者の同胞を処刑したいわけではない、だが王国がそして勇者が命の危機にさらされたのもまた事実なのだ。法律に則り処罰をしなければならない……だが勇者殿が国の為にその身を削ってくれるというなれば罪を軽くすると約束する」


「そのようなことをしなくても、俺は皆を元の世界に戻すためにこの国を救うと決めていたのだが……いいだろう何をすれば良いのだ?出来る事なら協力しよう!!」


「この王国の南に位置する森は死の森と言われており、森の中央には毒の沼が広がっております。この国の民が長年苦しめ続けられている、そこに住まう9つの首を持つとされている竜を討伐していただくと約束していただけるのなら、この者の罪を軽くする事をディアス様に誓おう」


廣瀬は騎士団の人にその9つの首を持つ竜の情報が書かれた紙を受け取ると、猛ダッシュでこの部屋を出ていった。嵐のような男が過ぎ去った後には残された僕らに今にも爆発しそうな第6騎士団長のリオンとそして宰相の間には嫌な緊張感が漂う。廣瀬と約束をしたと言ってもこの人たちがまともに守るとは到底思えなかった。



「私たちはどうなるのですか?廣瀬殿の約束を守ってくださるのならば罪は軽くなるはず……」


「はて?私はそこの召喚者の罪を軽くすると言ったがお前まで軽くするとは言っていないぞ?」


「ふざけるなよシキさんを処刑してみろ!!他力本願だろうが情けなくてもなんでも、他の勇者をけしかけてお前をぶっ倒してやる!!覚えておけよ……」


「ディアス様に誓ったのはお前だけだが……先代剣聖とて討伐までは至らなかった、あの猛毒竜に挑むとなれば帰って来れぬと思うがな。だが御し難いあの黄色の勇者が本当に討伐してきたときは面倒だからな……良いだろう、そこの奴も助けてやろう……だが無罪とは行かない、それはお前もだぞ」


アンドラスはその言葉を言い残すとリオンと共にこの部屋から出ていった。ボロボロになったこの牢屋ならば脱獄もできそうなのだが、脱獄がバレた時には今度こそは本当に処刑されかねないので大人しく待つことにした。さらに1週間後に僕の処罰は決まった。首都ヴェルタニアからの追放が決定されたようだ。あの3バカ勇者の命を危機に瀕した大きな要因は僕のスキルの人族のパラメーターの低下の影響と認められたそうだ。


その上に階層主の攻略を妨害してきたとの雪待の発言も支持されて首都からの追放になった。他の召喚者も僕のスキルの影響下に入らないように遠方に追放するという事らしい。そこで第2騎士団長アグスティン=パラミデスが魔の森に住まう森精人《エルフ》からの侵攻を防ぐ北方のホイロス城砦にまで連れていかれる事になった。パラミデスと言えばクイナ先輩が探っていた貴族の方だったような気がしていたけど気のせいにしておきたい。



「シキさんの処遇は決まってないんですよね?」


「僕も王命に背いた事と勇者に暴行を働いた罪に問われているので、軽くない罰にはなりそうです……ですがあのままだったら処刑されていましたからね!!命あれば全部軽傷っすよ。これもクイナさんの言葉です」


「買ってくれたんっすか?嬉しいっすね!!それはクイナ列伝5章8ページにかいた覚えがあるっすよ」


聞き覚えがあり過ぎる声が聞こえてきた思ったら、目の前にはいつの間にか部屋に入っていたのか、クイナさんが目の前の椅子に座っていた。シキさんは驚きつつも憧れの探索系の伝説《レジェンド》に会えて感動の涙なのか嗚咽交じりに喜んでいる。



「私もこの牢屋に入ってからは探知スキルを絶えさずに使っていたのにいつの間に?……見えなかった……これがあの絶影か?!やっぱ凄すぎるううううううううサインください!!!」


何度も見返したであろう年季の入ったクイナ列伝を差し出し、クイナさんへサインを求めている。受け取ったクイナさんは慣れた手つきでサインをしている。クイナさんが手を差し出すとシキさんはズボンで手を拭き握手に応じた、やはり伝説《レジェンド》ファン対応が慣れ過ぎている。



「クイナさんはどうしてここに来たんですか?もしかして僕達を救いに来てくれたんじゃあ?」


「そうっすよ!!第5騎士団にカイっちとラブリちゃんたちが来たんすよ。後輩ちゃんが捕まったっていって助け出しに行くのを手伝ってくれって、あの時のラブリちゃん鬼気迫る感じを後輩ちゃんにも見せたかったっす!!団長もラブリちゃんの事をめちゃくちゃ気に入ってたっす素質がある!!って」


「もしかしてクイナ様は私たちがここに入れられてからずっとこの部屋に居たのではないですか?」


「そうっすよ!最初はすぐに連れ出そうとしてたっすけど、後輩ちゃんが中々目を覚まさなかったから焦ったっす。目が覚めたら行動開始しようとしていたんすけど……クソ雑魚とクソ宰相が来ちゃったので待機していたんすよ!


「だったらなぜ今まで姿を現してくれなかったんですか?」


クイナさんは当初は僕が目が覚めたらこの牢屋から僕達を連れ出して逃げようとしていたのだそうだ。脱獄した場合は2人とも指名手配犯になり賞金を懸けられて、冒険者や騎士団から一生逃げ続けないといけなかったみたいだ。それでも処刑されてしまうよりはいいと思い脱獄の準備をしていたのだが、廣瀬が現れてこの場をかき乱してくれておかげで処刑は免れた。脱獄して賞金首になってまで助けなくてもいいという判断に至ったと言う訳らしい。



「でも僕はヴェルタニアから追放になってしまいました。しかもあのパラミデスって人の所にですよ!!」


「後輩ちゃんやっぱり聞いて居たんじゃないですか……まぁ普段なら口封じするところですが安心してくださいっす!パラミデスの変態が守る所なんて、ここ数100年以上攻められたことがないっすから!!それに直ぐには無理っすけれど、準備が出来たら必ず後輩ちゃんを迎えに行くっすから」


その時は大手を振るってヴェルタニアに戻れるという、クイナさんの言葉を信じて待つしかない。僕はパラミデスが守るとされているホイロス城砦に連れていかれる。ここを発つ前にみんなと話をしたかったが、軽くなったとはいえ罪人である僕には許されることもなく馬車に雑に押し込まれる。逃げ出してもヴェルタニアに戻れないように道中は目隠しをするように命令されて大人しく従うことにした。



チム子です。

初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。

少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。

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