35 階層主ダヴラス・ホーン
3バカ勇者一同はこちらに気が付くと少し驚いた表情を浮かべていたが、僕たちのパーティーメンバーに視線を巡らせると櫛枝さんが居ないことに気が付きと明らかに安堵していた。退屈そうに座っていた勇者たちは立ち上がり引きつった笑いを浮かべながらこちらに向かってくる。
「来るのが遅かったね?俺はてっきり階層主にビビって逃げたのかと思ったよ」
「あのクソチビは居ねえのかよ!!さっきは卑怯な手を使いやがって許さねぇからなぁ」
「シキどこに行ってたんだよ!!お前のせいで僕がどんだけ苦労したことか!!王様に行ってクビにしてやる」
「緑谷殿……あなたに言われて城下町の人気店のスペシャルサンドを買いに行ってたんじゃないですか…階層主攻略前の腹ごしらえにしたいって言って、それもこのダンジョンに到着する寸前ですよ!城下町まで戻るのに何分かかると思っているんですか??それに雪待殿も炭崎殿もいつも言ってるじゃないですか勇者の自覚を持ってください。この天清殿や黒川殿の様に!!」
さすがのシキさんもこの理不尽な扱いに我慢できなくなったのか珍しく声を荒げていた。櫛枝さんに叩きのめされた炭崎は緑谷に八つ当たりをしていたのだろう。普段のシキさんの扱いのひどさが垣間見えた。この正当な抗議に一番怒りを示したのは意外と炭崎ではなくて雪待の方だった。
「誰が誰の様になれって?聞こえなかったな?シキ……」
「私の事はどう扱って頂いても結構です。仕事ですので……ですが他の召喚者様に危害や迷惑をかけないで頂きたい。何れは魔王を共に倒す同志じゃありませんか?白の勇者、狛井殿と同じように騎士に優しくしろとは言いません同郷のものに対しては少しでも思いやりを持って…」
シキさんは雪待の地雷を踏み抜いてしまったらしい。そういえばあいつは誰かと比べられて下げられるのが許せない性格だった、特に狛井君を目の敵にしていた。涼宮に聞いた話だが、中学では雪待は勉学やスポーツは誰にも負けたことが無かった。だが高校生になるとあの完璧超人の狛井君が現れると連戦連敗、雪待の高いプライドをボロボロにしていった。
「うるさいうるさいうるさいうるさい!!!俺をあいつと比べんじゃねぇよ殺すぞ!!認めてさせてやる俺があいつより上だってなぁ!!どいつもこいつも俺をバカにしやがって行くぞ!!」
「行くってどこに?僕まだスペシャルサンド食べてないし……」
「あいつがほとんどソロで階層主を討伐したんだろう……だったら俺は完全無欠のソロで攻略してやる。お前らはその証人になれ!!」
「それは面白れぇな!!一番は譲ってやるその次は俺様がやってやる」
雪待は階層主の扉に手をかざすと扉はひとりでに開いていく。正面には階層主『タヴラス・ホーン』が腕組みしながら待ち構えている。体長はあの赤いオークよりも遥かに大きかった。部屋に入っていないからなのか、僕たちの姿は見えているはずなのに襲ってくる様子はなかった。
「待ってください。あのタヴラス・ホーン何か変です…」
「死にたくないからって嘘ついてんじゃねぇ!嫌ならそこで大人しくしていろ三下ぁ」
「待ってくださいって!!時には経験より直感を信じろっすですよ。クイナ列伝3章の5ページ目に書かれてあります。あのタヴラス・ホーン嫌な感じがします!!」
クイナさん書籍まで発行しているんだ……そして熱狂的なファンまでいる。見た感じミゲルさんから聞いていた白い姿に大きな2本角にそしてフレイさんと同じ両刃斧を両手に携えている。目の前のタヴラス・ホーンと何も違いはないのだがシキさんの表情を見るからに嘘を言っているようには見えない。
「お前らはそこで見ていろ、あいつより俺の方が優れているってことを証明してやる」
「また僕たちに意見を言うなんて、絶対にクビにしてもらうからね覚悟しておきなよ」
「魔法が弱点な雑魚なんだろ、良いから黙って見てろ!!」
階層主の部屋に足を踏み入れるとタヴラス・ホーンの瞳に光が入る。両刃斧を雪待に向けて振り下ろすが性格はあれだが勇者なだけあって軽々避けていった。他の二人は戦いの場なのだが危機感がないのか炭崎は壁にもたれて座り、緑谷はその隣でいつの間に貰ったのかスペシャルサンドを食べている。
「お前の攻撃にも慣れてきた。そろそろ終わらせよう『ファイア・ジャベリン』!!」
「グォォォオオオオオオオオ」
「そんなに俺の攻撃が気に入ったのか、特別に先程手に入れた魔法もプレゼントしよう『エクスプロージョン』!!」
腕を振るうとタヴラス・ホーンの顔面付近で大爆発が起こる。その威力に興奮したのか恍惚とした表情で笑いながらオーケストラを指揮をしているかのように腕を振り攻撃をする。爆炎による煙でタヴラス・ホーンの姿が見えない。満足したのか魔力が切れたのか分からないが攻撃を止めると入り口の方に歩き出すが煙が徐々に薄れていくと凶悪な笑みを浮かべたダヴラス・ホーンが雪待を煌々とした両目で見つめていた。
「雪待君!!後ろ!!まだ生きている!!」
「バカな事言うなよ…あれだけ俺の攻撃を受けて立て…ルュヴヴ!!」
タヴラス・ホーンの両刃斧の攻撃を受けて壁に叩きつけられる。死んでしまったかとその場の誰もが思った装備が良かったのか悪運が強かったのだろう、身体が痛みに悶えているのか少し動いていた。虫の息だがまだ辛うじて意識はありそうだ。止めを刺すべく雪待の下にダヴラス・ホーンは突進していく。
「後で文句は言わないでくださいよ!!」
「オゴォ…お前…許さ……」
シキさんはいつの間にか階層主の部屋にいた、3バカ勇者が勝負に挑んだ時には階層主の部屋に入って気配を消して直ぐに助けに入れるように待っていたのであろういたのであろう。倒れていた雪待を出口の方向に蹴り上げた。恨み節を言ってはいたがシキさんの蹴りで耐えられなかったのか気を失ってしまったようだ。シキさんも持ち前の素早さで出口の方まで走り、雪待を回収して僕たちの下まで帰って来た。
ダヴラス・ホーンの敵視はシキさんと雪待にまだ向いているのだが、僕たちのいる階層主の部屋の外まではやはり来れないようだ、敵視がやがて階層主の部屋にいる2人へ向けられる。雪待があんな目にあったのに何故か炭崎と緑谷は逃げ出そうとはしない。緑谷の方は足が小刻みに震えているので恐怖で身動きが取れなくなっているのだろう。
「雪待も油断したな。こんな雑魚に何やってんだよ!だったら1番は俺様が貰うぜ!!『シデロス・ブレード』!!」
両手を鉄の刃に変えてタヴラス・ホーンの首に切りつけるが傷1つ付けることが出来ない。ダウラス・ホーンは両刃斧を地面に突き刺し、何度も切り付けて来る炭崎の両腕を掴み握りつぶした。絶叫とともに崩れ落ちる炭崎であったがダウラス・ホーンは待ってはくれない。地面に突き刺した両刃斧を拾い上げ炭崎の命を刈り取ろうと両刃斧を振り下ろした。
「『シ、シデロス・スキン』………………」
炭崎の身体が鈍色になり地面に突っ伏したまま動かない。だがダウラス・ホーンはその振り下ろした両刃斧を遠慮なく振り下ろした。凄惨な場面になるかと思いその場に居るものは目を伏せたがそこで聞こえてきたのは甲高い金属音だった。
「相棒あれって防御魔法か?炭崎の奴、亀みたいになっているけど……」
「多分そうだな、恐らくあの魔法を使うと動けなくなるみたいだ……いや地味に動いているな身体を鉄に変えているから重くて動けなくなっているのか?!でもこれなら炭崎には囮になってもらって、緑谷を助けた後に回収すれば何とかなりそうだ、それまでに持ちこたえてくれれば」
執拗に両刃斧を炭崎に振り下ろすダヴラス・ホーン。緑谷の存在を忘れているようなので助かる。相変わらず震えている緑谷をこの隙に助け出そうと準備にかかる、炭崎の魔法はまだ解けてはいない、時間はまだあるはずだったなのに何を思い立ったのか緑谷はダヴラス・ホーンに向けて魔法陣を展開している。
「『アネモス・アロー』!アネモス・アロー!アネモス・アローぉおおお!!!」
パニック状態になったのかダヴラス・ホーンに向けて風の矢を何度も放つがダヴラス・ホーンにはやはり効いていないようだ。魔力が切れかけているのか何度も放っていた風の矢が次第に少なくなり、焦ったのであろう緑谷は最後の力を振り絞って巨大な風の矢を放つのだがダウラス・ホーンは羽虫を払うようにその緑谷の最大級の魔法を手で振り払われた。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




