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無職でも英雄や勇者になれますか?  作者: チム子


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33 勇者と無職に鉄拳制裁



最終日、今回のダンジョン攻略は階層主との戦いになる。階層主との戦いは僕達召喚者と騎士の皆さんとの大規模レイド戦になるようだ。基本的には僕達召喚者の力で討伐するようだが、もし戦闘出来ないほどの被害が出れば後ろで控えているミゲルさん率いる騎士の皆さんが階層主を討伐するそうだ。


階層主の名は『タヴラス・ホーン』階層主なだけあってソロで戦うとなるとBランク冒険者レベルでないと厳しい。しかし魔法攻撃には極端に弱いらしくレイド戦ならば距離を取って魔法を使い続ければ難なく倒せるみたいだ。



「この前のキクちゃんが言っていたカスミンが一刀両断していた階層主だろ?さっきミゲルさんから聞いたけどほとんど一人で戦ったらしいな。カスミンは少なくとも現時点でBランク冒険者以上の強さってことだよな?俺たちコボルトやゴブリンで苦戦していたのに自信なくすぜ…」


「あんたでも自信がなくすことってあるんだ以外…」


「俺っちも落ちる時ぐらいあるっての!!気負っているからか皆もピりついているし…」


「だったら帰れればいい無職の雑魚が何してんだ。俺たちの邪魔をするな!!」


この傲慢な感じ…ここにきて現れたのか…ダンジョン攻略に参加しているとは聞いていたが姿を見ていなかったので、もう来ないとばかり思っていた。出来れば会いたくなかったクラスメートの一人、雪松郝也《ゆきまつかくや》が残りの勇者、緑谷千鳥《みどりやちどり》と炭崎翁雅《すみさきおうが》を引き連れてやってきた。



「雪松君の言うと通りだよ。無職で無能の君たちが来ても迷惑になるだけでしょ」


「俺様の経験値を掠め取ろうとしてんじゃねぇよ!!クソ三下がぁぁあ!!」


炭崎のスキルなのか、手から腕にかけて大きな刃になり僕の喉元に突き立てる。薄く切られて血がうっすらと滲んでくるが不思議と恐怖は無かった。赤ゴブリンや眼帯の方がはるかに怖く思えたので、やはりこの世界に来てから何か僕の中で変わってしまったのだろうか。


急に気温が下がったと思ったら氷の柱が炭崎と僕の間に落ちてきた。僕は咄嗟に後ろに下がって回避したが、灰崎は急に現れた氷の柱に対応できなくて尻もちをついてしまう。



「ダサすぎ……」


やはり天清さんの攻撃魔法だったようだ。僕も避けなかったら普通に危なかった気がするけど天清さんの方を見るとウインクされた。何それカワイイ…いかんいかん僕には黒川さんっていう心に決めた天使が居るから屈しない!!屈してたまるものか!!


目の前には尻もちをついて顔を真っ赤にしている炭崎が居る。口の端がひくひくしてしまう押さえろ今笑うとダメだ絶対にめんどくさい事になる。騒動に気が付いた騎士団や他のクラスメイトも集まって来た。



「ぎゃははっはははははははアマちん辛辣すぎる~」


涼宮の笑い声がするそれに気づいた炭崎の顔は赤を通り越してもう何色かわからなくなっている。怒りに任せて涼宮に切りつけるが大盾で受け止める。



「ふざけんじゃねぇ『ディアペルノ・ブレイド』!!」


「痛ってぇえスキル使うのはちげぇだろ」


「舐めたことしたてめぇらが悪い!!それにクソアマも魔法を使っただろうがぁ!!てめぇがその程度に済んでいるのは俺様が手加減してやったからだろうが!!次舐めた事したらは本気で切る」


いくら腹が立ったとはいえ、スキルを使って傷つけたのはケンカの範疇を越えている。涼宮が苦しそうにうめいているのを見た瞬間に怒りで我を忘れそうになったが、背後から眼帯や赤ゴブリンが可愛く思えるほどの殺気を感じた…自身の全身が粟立つのが分かる。その正体を確認するために後ろを振り返ると櫛枝さんが灰崎を黄色く濁った眼で睨んでいた。



「コロ……ス……コロ……コロ……絶対……」


櫛枝さんはスキルを唱えてないので『ベルセルク』使っていないはずだが、訓練場でスキルを使った時と似たような状態になっている。このままでは危険だと感じたので、櫛枝さんを落ち着かせる為に手を差し伸べようとするが櫛枝さんの姿が視界から消えしまった。炭崎が刃の切っ先を涼宮に向けながら脅しの言葉を並べていた。その横顔に影が差した瞬間、炭崎の体は吹き飛ばされる。身体が何回転かした後に地面に叩きつけられた。



「……死……シ……死死シ……シシ死シシあああああ!!!」


炭崎の体に馬乗りし櫛枝さんがオーラを纏った拳を落としていく。「『シデ……スキ……』やめ……ろ!!」炭崎は喚くが櫛枝さんは拳で炭崎を黙らせた。炭崎の頬に拳が当たった瞬間に何か砕ける音がした。最初は骨が砕かれたかと思ったが、骨にしては音が違うような気がする。


怒りに満ちた櫛枝さんは拳を振り下ろし続ける。下手すると自分が標的になってしまうからか、3バカの他の勇者も目の前の光景に顔を引きつらせて黙って立ち尽くす事しか出来ていないようだ。


騎士団や他クラスメイトは殺気のせいなのか恐怖で固まっていた。あのミゲルさんですら青い顔をしてその惨劇をただ見ているしかなかった。炭崎の顔面が崩壊しかかった所でダメージから立ち直った涼宮が櫛枝さんを止めるべく背後から抱きしめる。



「涼宮!!危険だから離れろその状態の櫛枝さんは僕達じゃ止められない」


「いやだってこのままじゃ自業自得とはいえ炭崎死んでしまうぜ、俺は大丈夫だからクルミちゃん正気に戻って!!」


「……………………」


抱きしめられたまま櫛枝さんは大人しくなっていた。正気を取り戻したのか?目はまだ黄色く濁ったままだったが、涼宮も急に大人しくなった櫛枝さんを見て落ち着きを取り出したのかと思い、恐る恐る抱きしめていた腕を解放した。



「グルルルルルルルrrコロオオオオオオ!!」


櫛枝さんは拳を振り上げて炭崎の顔面に叩き込もうとする。炭崎は恐怖のあまり小さな悲鳴を上げるが慌てて涼宮が後ろから抱きしめると「………………」櫛枝さんは大人しくなる。涼宮が面白がって抱きしめたり放したりを繰り返してして炭崎の反応を楽しんでいる。



「涼宮は遊んでないで炭崎を殺さないように櫛枝さんをそのまま止めておいて。炭崎も今のうちに櫛枝さんの視界に入らないように早く逃げたほうが良い」


炭崎は慌てて起き上がり前かがみになりながら逃げていく。捨て台詞を吐く余裕もなかったのだろう、炭崎が倒れていた場所には硬い鉄の様な欠片と床には恥ずかしいシミが広がっていた。騎士団から渡されたおそらく高価なポーションを乱暴に受け取ると残りの3バカ勇者と共に逃げるようにダンジョンの入り口に入っていった。



「相棒来てくれよ!!あの野郎のスキルのせいでケガしちまった。ポーション使いたいから、ちょっち代わってくれ」


「分かったよ!今ポーション持っていくから待っていてくれ」


騎士団の人からポーションを受け取り涼宮の元まで行く。櫛枝さんは無言のまま大人しく涼宮に抱きしめられていた。涼宮も腕がしびれてきたと言って早く代わるように催促してくる。黒川さんがこちらを見つめる視線が何故か鋭いのが気になるが、これは不可抗力だと己に言い聞かせて櫛枝さんを後ろから抱きしめるべく腕を伸ばした。



「し…失礼します……うぼぁあああああああああああああ!!!」


抱きしめた瞬間に櫛枝さんの頭突きが顔面にクリティカルヒットする。後方に吹き飛ばされ、鼻の骨が折れたかと思うぐらいに痛みに悶絶していると天清さんが呆れるようにこちらを見ている。



「あ!!相棒!!大丈夫か?!クルミちゃん待って!相棒に追い打ちかけようとしないで!!」


「あんたバカでしょ…薄々気付いていたくせに下心出したでしょ。仕方ないわね……あんたにはあまり効かないだろうけど『アクア・ヒール』その痛みは天罰ね」


な…何を仰っているのか分かりませんな!!天清女史……背後にいる黒川さんの極寒の視線が痛すぎる……すみませんごめんなさい何となく分かっていました!!なぜ櫛枝さんが大人しくなったのかそれは恋心を抱いている涼宮に抱きしめられたからでしょ!


再び涼宮に抱き留められた櫛枝さんは目が未だに黄色く濁ったままだけど、よく見ると口元が少し笑っているような気がするし、なぜか心なしか頬が赤く染まっている。でも仕方ないでしょ僕だって男子なんだから!!不可抗力チャンスが来たかと思ってしまった。



「何の事かわからないけど……と…とにかく櫛枝さんの事は涼宮に任せた!!ポーションは任せろ僕が直接飲ませてやる!!」


黒川さんの視線に居た堪れなくなったので、再び涼宮の下に駆けつけて今度は涼宮の口にポーションを注ぎ込んだ。1本で十分だと言っていたが、その状況が羨ま……いや涼宮が心配だったので2本目のポーションを無理やり涼宮の口に注ぎ込んだ。


数時間後、櫛枝さんは完全に落ち着いたのか寝息を立てて寝てしまっていた。最終日のダンジョン攻略だったのだが仕方ないので、ダンジョンの入り口に設営されている騎士団のテントに櫛枝さんを寝かしつけて僕達4人でダンジョンに足を踏み入れることにした。



チム子です。

初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。

少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。

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