31 眼帯の化け物
次の日はミゲルさんの許可も取れたので、他のクラスメイトよりも早くにダンジョン攻略に挑むことにした。昨日は他のパーティーメンバーよりも深くダンジョンに潜っていたらしい。ミゲルさん曰く王都ヴェルタニア近くのダンジョンは下層に行くほど探索範囲が狭くなるみたいだ。
ヴェルタニアのダンジョンは他のダンジョンと比べて階層も段違いで深いらしい。最下層には何でも願いが叶うアイテムがあるらしいのだが、最下層まで行ったものは歴史上聞いたことが無いみたい。1階層は広すぎるがゆえにモンスターとのエンカウントも少なく初心者には優しい。もし勝てそうにない時も敗走しやすいのも良い点みたいだ。
「いよいよ3階層だ。ミゲルさんも言っていたけれど、探索範囲が少し狭まるから1階層に比べてモンスターとも遭遇しやすくなるから、大声出したり変な行動をしないようにな」
「はいは~い分かっているよ!!次からまた違う敵が来るんしょ、この前のゴブリンでさすがに学習したよ」
「ここに来るまでにあんたのせいで何回危ない目にあったのやら」
「それは…中々モンスターが現れなくて、新階層のためのウォーミングアップも兼ねてたのよ。あの赤いゴブリンだってもう難なく倒せるようになったし大丈夫かなって思って……てへっ」
涼宮が約一名の恋する乙女以外に辛辣な目を向けられている。涼宮は張り切って3階層に続く階段を下りて行く、僕たちも後に続くように降りて行った。3階層は森林地帯のようだ。天を仰ぎ見ると地下に降りたはずなのだが、青い空が広がっている。魔物ではなさそうな虫や鳥などもあり生態系が築かれているようだ。
「私たち洞窟に居たはずよね……この森に入っていくの?地図は貰っているから次の階層には行けそうだけど、洞窟とは違って魔物が近づいてきても気付くのが遅くなりそうね」
「そうね……さすがにこんなに虫や鳥の声が聞こえていると洞窟と違って足音に気付けないかも…それにこの足元の草がより足音を消しそう。みんなも周りに気を配らないと急に襲われたらヤバいかも」
「アマちんの地獄耳でも厳しいとかダンジョンはマジでダンジョンだな!!」
「余り変なことを言ってると地上で溺れさせるよ……『アクア・ジェット』」
「ひいいい」
天清さんの放った魔法が涼宮の顔面に向かって飛んでくる。涼宮が尻もちをつきながら避けると、背後から「グヴォオオ」と言う声が聞こえてくる。声のする方向を見ると二足歩行の犬の顔をした魔物が額を撃ち抜かれて倒れていった。この階に来る前に新たに取得した天清さんの魔法の威力は凄まじい、この魔法があればこの階も難なくクリアできそうだ。
「犬の顔をした人型の魔物はこの階層によく出る確か…コボルトっだったよね?」
「ゴブリンさんより早くて危ないってミゲルさん言ってたね。」
「マジで撃たれたかと思ったわ……ってか近くに来てたの全然気づかなかったわ……アマちんありがとうな」
木々が生い茂っているからか僕にはどこにコボルトが隠れているのか分かりそうにもない。探索系の職業の人が居れば魔物探知や罠解除なども出来るようだ。
罠は中層以上から極端に多くなるらしいのでを今後中層以上を目指すなら探索系のスキルを使える人をパーティーに誘うのも良いかもしれない。ふと虹色に光る笑顔でサムズアップしているメガネが頭によぎったが振り払う。倒したコボルトもゴブリン同様にアイテムをドロップしていた。
「これは…革製の鎧かな?だいぶボロいけど無いよりましかな?着てみるか」
「マジかよ相棒やめて置いた方がいいんじゃないの呪われてるかもよ」
「の…呪い?!ダメだよ四葉君、私が預かっておくから渡しなさい」
黒川さんがインベントリで回収しようとするのを必死で説得して鎧を装備してみると、予想通り何も嫌な感じはなかった、むしろ少し体が軽い気がしたのでステータスを確認すると、俊敏に少し補正が掛かっているようだった。魔物系の装備にはもしかしたら人が作った装備とは違い特殊効果があるのかもしれない。
「ちょっと俊敏のステータスが上がったみたい。特に体調が悪くなったりはないな」
「本当かよ相棒!ちょっち装備するには気が引けるな…他にも何か落とすかもしれないしどんどん倒していこうぜ」
「この階層が地図だけじゃあ自分が今いる位置が分かりにくいのが問題だな…」
「それは大丈夫かもしれない。さっきの戦いでレベルが上がって新しいスキルを覚えたみたい『自動地図化』今まで来たことがあるところをスキルの地図に記してくれるみたいだよ」
「黒川さん凄いよ!このスキルがあればこの階層でも難なくクリアできそうだよ。ただ気を付けないといけないのは前の階層にいた壁から出て来る強力な敵だな。この階層にもいるのかな?」
「この階層、前みたいに壁とかはないからどうなんだろうな、まあ考えても仕方ないし何とかなるっしっしょ」
地図と黒川さんのスキルを使って僕たちの位置を把握してもらいながらこの階層を攻略していく。何回かコボルトたちを倒したがドロップアイテムの大半はコボルトの毛皮だった。
たまに装備品が落ちたことがあったが、金貨100枚もしただけあって女性陣には今装備しているもの以上のものは手に入らなそうだ。コボルトの装備は僕と涼宮は恩恵がありそうだが、涼宮はカッコよくないからと我がままを言って装備していない。
「4層までやって来たけれど、みんなが強くなったからか、コボルトもあまり怖くないな。壁から生えてきたデカい奴や赤色のゴブリンの方が強く感じる。俺っちもあれから全然レベル上がらないし、もしかしたらレアなモンスターだったのか?…だったら地面とか木とか叩いてみる?」
「確かにレアの可能性はあるかもしれないけれど…この階層ではまだ壁から生えてくるタイプのは見てないから怖すぎるな…赤ゴブだってスキル使っていたしな。会わないで済むならそれでいいだろう」
「わたしも赤いゴブリンさんみたいのは嫌だな…コボルトさんも赤くなるのかな?」
「ちゃんと警戒もしないと何が起きるかわからないよ。ちょっと待って何か地面が揺れてない?みんな下がって!!」
「地図には何も反応がないけれどこの感じ…壁から赤ゴブリンが出てきた時と同じような感じがする」
僕たちの目の前の地面にひびが出来て、その割れ目から犬の顔をした片目には眼帯をしているモンスターが這い出てきた。片手には大鉈を持ち、コボルトの3倍は大きい。奴は凶悪な笑みを浮かべている、口元は一噛みでもされたら喰いちぎられそうな凶悪な犬歯が見える。
赤いゴブリン同様に人間を舐めているのだろう。品定めをするかのように僕たちを順番に見ていく。その視線が僕に止まった瞬間、僕の脳内で危険信号が鳴りやまない。赤いゴブリン以上に危険な感じがする。そいつと対峙するだけで生命力がガンガン削られていく。
「黒川さんはデバフをかけて!!天清さんは魔力は気にしなくて良いから攻撃できないように攻撃魔法を当て続けて!!」
「相棒!!俺っちは何をすればいい?」
「櫛枝さんを守りながら飛翔剣で隙があれば攻撃してくれ。みんなも無理はしないで、危なかったらすぐに撤退しよう。眼帯は赤ゴブよりも危険な感じがする、前衛は僕に任せて!!」
足の震えも止まった、これで戦える。天清さんの魔法も強力で奴も攻撃出来ずに防御姿勢を取ったままだ、天清さんの攻撃に合わせて眼帯をしている死角から攻撃をしよう。見えているほうの目を傷つけられれば視覚を封じることが出来る。魔法攻撃に乗じて近づき黒剣を振り上げヤツの右目に振り下ろす。
「グオオオオオン!!」
死角から放った一振りはまるで見えているかのように受け止められて、黒剣ごと僕の体は叩きつけられた。黒川さんの声だろうか悲鳴のような声が聞こえる。だがその声もダメージのせいなのかノイズのようなものでかき消されている。前にもあったような感覚…ノイズの中に声のようなものも聞こえる気がする。ぼやけた視界の端には邪悪な笑みでとどめを刺そうと大鉈を振り上げているのが見えた。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




