30 赤ゴブリンとの戦闘
赤ゴブリンの下卑た笑みに黒川さんが慄いていると、それに気づいた赤ゴブリンは更にその目を弧を描く。ダンジョンに入ってからゴブリンを何度か倒したのだが、何れも優先して女性を狙う傾向があるように思える。赤ゴブリンは持っている小刀を振り上げ黒川さんに向かい走って来る。
「黒川さん!!危ない!!!」
「ゲギャギャギャギャアアアア」
赤ゴブリンと黒川さんの間に入り黒剣で攻撃を受け止めたのだが、緑のゴブリンとは膂力が段違いで高く、受け止めることは出来たがジリジリとその刃が僕の喉元まで迫って来た。
「おりゃあああああ修行の成果を見せてやるぜえええ」
「ゲギャアグウウウウウ!!」
涼宮が赤ゴブリンの背後から胴体に向かって切りつけるが、ゴブリンは体を翻し後方に飛ぶ。赤ゴブリンの背中には薄く傷が付いていて血が滲みでてきている。その傷にゴブリンは先程までの下卑た笑みは一切無くして涼宮の方をまっすぐ見据えている。ゴブリンは小刀を真横に構えて力を貯めている。嫌な予感がしてくる。
「涼宮あああ!避けろおおおおお!!!」
涼宮は盾を構えゴブリンの攻撃に備える。ゴブリンは横薙ぎに小刀を振るうと斬撃が涼宮を襲った。まるで飛翔剣の様に見える。大盾のおかげで攻撃をなんとか防ぐことが出来た。ゴブリンは小刀を涼宮に向けて振り下ろすべく涼宮に飛び掛かる。盾のおかげでゴブリンとの間に壁を築くことは出来ているのだが、時間の問題だろう。次に何をしようか逡巡を巡らせる。
「お願い当たって!!ウォータボール!」
「グボボボグギャギョボ」
天清さんの魔法のおかげで赤ゴブリンが一瞬怯むが攻撃の波は止まらない。加勢に向かおうとすると、こちらに向けて飛翔剣を放ってくる。涼宮が赤ゴブリンの攻撃を大盾で防いでいるが衝撃は伝わりそれによって体力も削られているだろう。
体力が尽きて来たのかだんだん涼宮が押されはじめ、しまいには盾ごと押し倒された。赤ゴブリンが小刀を振り下ろそうとする。ここに来て天清さんの魔法が効いたのか苦悶の表情を浮かべた。この機を逃すわけにはいかない、僕は赤ゴブリンに向かい走り出す。
「うわぁぁぁあああああああ」
「グギャギャギャアアアアアアア」
赤ゴブリンの頭部に目掛けて黒剣を振り下ろすと、断末魔を上げて力尽き涼宮に覆い被さるような形で力尽きた。涼宮が無事なのか確認すると赤ゴブリンの血で真っ赤に染まっているのだが、ギャーギャー何か騒いでいるので問題は無いようだった。
「ぺぺぺっぺぇ~赤ゴブの血飲んじったぁ…毒と無いよな?お腹壊さないよなぁ~」
「あんたなら大丈夫じゃない?って言うかそれ以上近づかないで何か臭い!!『ウォータボール』」
「ぷぺぇ~アマちんひどいよ俺っち頑張ったんだよ……っておおおおおおああああああああああ!!!」
「涼宮どうしたんだ?まさか本当にゴブリンの血が毒だったのか?」
「毒消しのポーションなら持っているよ『インベントリ』」
「待て待て違うって!パッパラーパーン!シュピーン!!俺っちレベルアップ!!!」
涼宮が念願のレベルアップしたようだ。僕は相変わらずレベルは上がっていないのだが、無職でもレベルは上がることが確認できたので安堵する。櫛枝さんも小さく拍手して祝っている。赤ゴブリンは強いだけあって僕以外の皆もレベルが上がったようだった。更に黒川さんも新たな魔法を獲得したようだ。
「新しいスキルは重力の操作をするスキルみたいあまり大きなものは操作できないけれど、対象の物を重くしたりできるみたいね。一度試してみるね『グラビティ』」
指定した所に魔法陣が浮かび上がり魔法陣の内側にあった石や岩は地面にめり込んでいく。道中で現れたゴブリンにも使ってみるとゴブリン自体には効かないようだったが、持っている武器や鎧などには有効みたいで動きが遅くなったり武器を落としたりしていた。
「いや~だいぶ強くなったんじゃね俺っち達、今ならあの練習の成果を披露できる気がする!!!お~い出てこいゴブリンたち~」
「バカじゃないの学習しなさい!!!右の方からゴブリン2体、前から3体来るわ!」
「バカ涼宮は右のゴブリン、黒川さんは前方のゴブリンにグラビティを準備して。櫛枝さんはあの馬鹿の後ろで待機、ピンチになったら声をかけて。僕と天清さんは前のゴブリンにグラビティがかかったら叩く!!」
「俺っちに任せなさい!!!今ならいける気がする飛翔剣!!!」
涼宮が横薙ぎに剣を振るうと衝撃波となってゴブリンに飛んでいき両断する、まさかとは思ったが本当に出来るとは思わなかった、悔しい気持ちもあるが、無職でもスキルを放つことが出来る証明になったので嬉しい気持ちもある。
「涼宮君凄い……」
「だあ~はっはははは~俺っちも確実に強くなっているぜ!!」
そこからの僕たちの快進撃は自分で言うのもあれだが凄かった。2階層へ降りてからも黒川さんのスキルは大活躍をした。黒川さんのスキルで足止めをして、天清さんの青の魔法や涼宮の飛翔斬で決める。この強力コンボで緑ゴブリンは楽に倒せるようになっていた。探索で分かったことがあったのだが、ダンジョン探索中の道中で遭遇した全てのゴブリンは緑だった。
一方壁から生まれたゴブリンは殆ど赤のゴブリンだった。赤ゴブリンじゃなくても少し大きかったり、魔法やスキルを使ったりしてきて強さが明らかに違った。僕たちのレベルも上がったので、僕は上がってないのだが、こちらも何とか苦が無く倒せるようになるまで成長した。
「だいぶ進んできたけれどそろそろ帰った方がいいかもね……」
「俺っちまだまだやれるぜ!あれから全然レベル上がってないし、相棒もまだレベル上がってないんだろう?」
「そうだけど僕達ダンジョンに降りて夢中で戦っていて、どれだけ時間がたったのか分からない。3階層の階段も見つけたけど…今日の所は帰ろう」
「そうね私も魔力が尽きてきそうだし安全なうちに帰っておきたいわ」
僕たちのダンジョン探索初日はこうして幕を閉じた。成長率でいうと櫛枝さんが一番上がっていた。力に関しては僕の数十倍以上になる。試しにダンジョン内の巨大な岩を攻撃してもらったら、中央に大きな穴が開いたのを見た……
このパラメーターで前の様にベルセルク状態で襲われたらと思うと背筋に嫌な汗が伝う。本人は涼宮にべた褒めされてニコニコしていた。ダンジョンの入り口まで戻るとそこにはミゲルさんが居て僕たちに気が付くと満面な笑みを浮かべて手を振っている。
「四葉殿!!帰ってこられたか!貴殿で最後だな。他の皆はもう帰還して城に戻っている頃だろう。いい顔になられたな。素晴らしい騎士の風格を纏っておられる!成長したのだな四葉殿!!」
力いっぱいに抱きしめられ腹の内容物が押し出されそうになるのだが、この中で僕だけが一切成長していない。だが涙まで流しているミゲルさんを見ていると言い出せなくてされるがままになっていた。
「そういえばダンジョンで魔物を倒したら出てきたアイテムはどうしたらいいですか?」
「ほうこれは珍しい!魔石がほとんどなのだがアイテムが出るとは素晴らしい!!それは探索者のものだ取って置くと良い。このダンジョンは女神ディアス様が作られたと言われている。殆どは魔物の武器や装備なのだが極稀にディアス様の創り出したアイテムがドロップしたり、階層主の宝箱から出るらしい。きっと魔王討伐に役に立つだろう!!!」
「結構あるんですけれどゴブリンたちの武器が30本ほど……」
「えええええええ!!ゴブリンのドロップ品はあまり価値がないとは言え30本も?!驚きだなこれも女神の思し召しか…一番手っ取り早い方法はギルドでさばいてもらうのが良いだろう。良いものを見つけたら商人に直接交渉して高値で売るという手もあるが、買いたたかれないようにだな」
とりあえず黒川さんに保管してもらってダンジョン探索が終わったら考えることににしよう。魔物のアイテムのドロップ率が高いのはおそらく僕のスキルによるものだろう。女神のアイテムか…気になることが山積みだ……今日の所は寮に戻って次の日に備えよう。次は3階層に向かう、ミゲルさんによると犬系の魔物が出現するらしい。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




