28 ユーリの愚痴とプレゼント
僕達に声を掛けたユーリさんの表情は何か思い詰めていたのか暗い。先程見かけたのはやはりユーリさんで間違いなかったようだ。この先には大逆人メアリーが処刑された広場につながっている、おそらくユーリさんと何かつながりのあった人物だったのであろう。とてもじゃないが詳しく聞けるような様子ではななかった。
「君が涼宮檜人殿か……采配の儀式の時に見かけたな。改めて紹介させてもらおう、私はユーリ・モルドレイだ。クイナから君の話も聞いている。君も四葉殿と同様に無職だったそうだな…そしてうちの団員のクイナやガライが世話になったとも」
「いやいや~先輩や師匠には俺の方がお世話になりまくっているっすよ!!」
「僕もお世話になっています。おかげで少しは強くなった気がしています。ユーリさんは今から騎士団の所へ戻る感じですか?」
「そうだが……その前に少し私の話を聞いてはくれないか」
僕たちとユーリさんは噴水の前に設置されているベンチに腰を掛ける。涼宮はユーリさんに食べ物と飲み物を奢ってもらい上機嫌になっているのだが、ユーリさんは相変わらず暗い表情だった。その中には怒りも交じっているように見受けられた。ユーリさんは重い口を開く
「君も見ただろう大逆人メアリー……彼女は…私の伯母上なんだ…本当に愚かな人だったよ…魔族と人族がともに生きることが出来るって本気で思っていた……だが結局は利用されて処刑されてしまった」
「魔族に利用されたって?」
数十年前に前獣魔王と人族の間に友好条約を結んだ。その立役者がユーリさんの伯母上のメアリーさんだそうだ、何年かは獣人と人族の間に不戦条約が結ばれ、国交が開かれた。徐々に友好関係が築かれつつあったが、獣魔王が一方的にその条約を破棄し、人族と魔族の友好の式典を利用し凶行に及んだ。人族の貴族をよりにもよって友好関係になれるよう尽力してきた貴族たちを大量に殺戮した。
その獣魔王を打倒したのが先代剣聖だった。獣魔王を倒した数日後にメアリーさんはその先代剣聖である父親を殺めてしまった。自身の父親が倒れている直ぐそばで血塗れになっているメアリーが佇んでいたという。魔族の力を使ったのか、もしくは父親である剣聖もさすがに実の娘には手を出せなくて一方的にやられてしまったのかは分からない。真相を知る人間は死んでしまっているので永遠にわからないであろう。
「少なくとも私の前では優しくて良い伯母上だったよ。私の剣の師匠だったし…だから思うこともある…私の話を聞いてくれてありがとう…少しは気が晴れた気がする。部下にはこんな話は出来ないからな……」
「大丈夫っすよ!愚痴ならいくらでも聞くので俺と相棒がだから何かあったら言ってください!!」
「そうですよ、今はまだ弱いので戦力とかにはなれないかもしれないですけど、話ならいくらでも聞けます」
「ありがとう、私はこれで失礼する。これ以上仕事をサボるとフレイに怒られそうだからな」
ユーリさんが少し微笑み、感謝の言葉を残し城へと向かっていった。僕たちはまだ天清さんたちが待ち合わせ場所に来ていなかったのでこのまま待つことにした。彼女たちが来たのはユーリさんが城へ向かってからかなりの時間が経って辺りも日が沈み始めて薄暗くなってきたころだった。
「お待たせ!服似合ってんじゃん、準備は出来たみたいだね」
「待ちくたびれて干物になりそうだった……って何それ?!アマちんもカッコよくなってるし、クルミちゃんも何それ?めちゃくちゃ可愛いいナイスゥウ!!」
「黒川さんもとてもよく似合っているよ!武器は剣なんだね。僕の黒剣と同じくらいの刀身かな」
「っていうか皆の装備めちゃくちゃ高そうだったけれど足りたの?」
「勇者だからね。私たちの装備全部で金貨100枚くらいだって言われたけれど足りない分は城の方に請求するように言ったわ」
「なにそれズルいズル過ぎる…相棒!!俺たちも今から行って僕の考えた最強装備を揃えるんだ!!」
涼宮は今すぐにでも店に戻ろうとする勢いだったのだが、僕たちの装備も買ってくれていたそうなので涼宮は落ち着きを取り戻した。見た感じは僕たちが使いそうなものは何も持ってなさそうなので、アクセサリー系なのだろうか?異世界定番の何か特別な効果を持ったアクセサリーだったら欲しすぎるだろう。
「桔梗様!!ぜひ私共にお恵みを!!相棒よ頭が高いぞ桔梗様に媚びへつらうのだ!!」
「はは~僕も見切り品だけでは明日のダンジョンは心持たないです。何卒よろしくお願いいたします!!
」
「あんた達!街の人たちが見ているから恥ずかしい事は止めてよね。カナタもこの世界にきてカイトのバカが移ったんじゃないの?アイリ早くこのバカたちに出してあげて」
黒川さんは『インベントリ』と詠唱すると何もない空間に亀裂が入りそこに手を伸ばす。最初に出てきたのはガントレットで、もう一度手を伸ばすとかなり大きい盾が出てきた。どれもこれも高価そうな代物だ。
「ラブリちゃんすげ~何にもないところからこんなもの出せるなんて、もしかして天才?」
「インベントリって言う黒の魔法なんだ、生き物とかはダメみたいだけど、食料とかアイテムをたくさん入れられるよ。明日のために役に立つアイテムとか買ったから、戦えなくてもこれで少しはみんなの役に立てるかな?」
「すごいよ黒川さん!!この魔法はダンジョン攻略にすごく役に立つはずだよ」
「ガントレットはカナタね、あんたこの前の戦いで腕をケガをしたんだって。あんたがまた同じような怪我をしないように心配で心配で仕方ないアイリがあんたにってね」
「大盾はカイトね、ちなみにその盾を選んだのはクルミね。私はもっと使い勝手の良い盾にしようとしていたんだけど。クルミが大きくてかっこいいからこれが良いって、その盾で私たちを死んでも守りなさい」
「イエス!!桔梗様!!!イエス!!」
黒川さんが頬を赤く染めているのと同じく自分の顔が熱くなっているのもわかる。天清さんは涼宮にああ言ってはいるがおそらく櫛枝さん辺りにこの前の戦いの事を聞いたのだろう。友達に危機が訪れると誰よりも早くに駆け付けて自分の命を顧みらずに突っ込んでしまうのを心配して選んだのだろう。
「天清さんありがとう、黒川さんも選んでくれて嬉しいよ」
「俺っちも嬉しいぜ~クルミちゃんもありがとな~」
いよいよ明日は初めてのダンジョン攻略だ怖くないと言ったら噓になる。それ以上に高揚している自分が居るのが分かる。多分涼宮も同じ気持ちだろう、また黒川さんや櫛枝さんのような戦いたくない人もいるのも事実だ。王命で仕方なく戦わされている人たちの分まで僕たちが戦おう。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




