25 ベルセルク
いよいよ櫛枝さんのスキル確認をする。ユニーク職業バーサーカーで、しかも属性が前代未聞の黒色と言うこともあって、万全を期するためにスキルを受けるのはガライさんになった重戦士なので何かがあっても持ち前の防御力で防げるだろうと考えだ。
「よーしクゥちゃんスキルを理解するのはダンジョンで生き残る上で重要っす」
「はい…皆に迷惑にならないように頑張ります!!」
「何かあってもこのお兄さんが助けてあげるからね」
ウインクする涼宮に顔を赤く染める櫛枝さん。お兄さんって言っているけれど「同級生だから年は一緒だろう」と言いたいが緊張を解くためにあえて言っているかもしれないので心にとどめておこう。
「マサもアナライズでステータスを確認しておくっすよ。余計なものは…」
「了解ですクイナ様!!誓ってもちろん余計なものは見ません!!」
「お嬢ちゃんガライ様が受けてやるから安心しろ!!まだレベル1のお子様には負けんよ!!ガハハハハハハハ」
ガライさんは仁王立ちで不敵な笑顔で櫛枝さんを見つめており、櫛枝さんは震えながらガライさんと相対する。どう見ても変質者に出会った幼気な少女な絵面なのだが今は気にしないでいよう。
「じゃあクゥちゃんスキルを使うっす何かあっても皆いるっすから」
「分かりました…べる…せるく…」
櫛枝さんがスキルを唱えると空気が一気に張り詰める。凄い緊張だ冷汗が止まらなくなっている。隣に居るクイナさんの額にも汗がにじみ出ている。相対しているガライさんに至ってはまるで強大なモンスターに出会ったかのような表情で櫛枝さんを睨んでいる。
「まずいかもっすねガライさん南無っす」
「馬鹿言ってねぇでクイナぁ!!そこの俺の盾を寄こしやがれ!!」
クイナさんがガライさんに盾を投げつけると受け取り防御姿勢を取る。櫛枝さんの髪は乱れ、顔は目から下が赤く染まっている。唸り声をあげながらガライさんに距離を詰めて拳を振り下ろす。
「『ハイ・プロテクト』ぉぉぉおおおおお」
「あああああああああああああ!!!!ころしてやる!!」
「すごいっすねガライさんのプロテクトも破られそうっす」
「冷静に言ってる場合ですか早く止めないとガライさんやられちゃいますよ」
ガライさんのハイ・プロテクトにひびが入り割れてしまう。盾を使い櫛枝さんの猛攻を防いでいるがその頼みの綱の盾も所々へこんでいっているので、破壊されるのも時間の問題だろう。櫛枝さんの拳も盾を素手で殴った影響か血がにじみ出ているが煙を出してすぐに治っている自動回復が発動しているようだ。
「すごいっすね。重戦士のハイ・プロテクトにひびを入れるなんて下位の竜種くらいなら1撃っすよ」
「もう我慢できない!!俺止めてくるよクルミちゃん苦しそうだから見てられない」
「待つっすよガライさんのハイ・プロテクトも破るあの威力、カイっちが受けたら一撃であの世っす」
涼宮が櫛枝さんを止めるために二人の間に入ろうとするが攻撃の衝撃で吹き飛ばされる。廣瀬もこの騒動に気が付いたのかゴーレムを召喚し待機している。櫛枝さんのあの熾烈な猛攻を耐えきったガライさんが声を上げて笑い出した。
「ガハハハハハハハ!!お嬢ちゃんもう終わりか俺はまだまだ行けるぞ!!この威力数年前に戦った名前付きのオーガよりも数段上だなこの程度ならあと数時間受けられる『ハイ・プロテクト』おおおお」
ガライさんが完全防御姿勢を取り、櫛枝さんににじり寄る。櫛枝さんは危険を察知したのか距離を取り拳に力を集中させるどす黒いオーラが拳に纏わりつく。ガライさんは慌てて止めるべく櫛枝さんに近づこうとするが間に合わず見るからにヤバそうな攻撃が放たれた。
「おおおおおおああああああああああああ」
「ぐうううううおおおおおあああああああああ」
ガライさんの奮闘をするもハイ・プロテクトごと盾を粉砕されて壁向こうの訓練場外に吹き飛ばされていった。目と目が合った気がした櫛枝さんの次のターゲットに僕が選ばれたようだった。
「いつもいつもいつも……よ……つば君の……話……ばかりばかりいいいい殺してやるううううう」
「ヤバいヤバいヤバい何言っているのか分からないけど明らかに僕の事見てるよね!!!」
どす黒いオーラを再び拳に宿して凄い勢いで僕の方に走って来る。途中で廣瀬のゴーレムが助けに割って入ったような気がしたが一瞬で粉砕されてしまい。廣瀬の情けない声で「キクシオおおおおおおお」と叫び声も聞こえた気がしたのたが気のせいに違いない。現実逃避をするもあり得ない現実がすぐそばまで迫ってきていた。
「ああああああああああああ」
「クルミちゃん待ってくれ!!」
「涼宮ダメだ!!僕の事は良いから逃げろ」
涼宮が僕と櫛枝さんの間に割って入る。あの鉄よりも硬かったゴーレムを一瞬で粉砕したあの攻撃を涼宮が受けたら怪我だけでは済まない。櫛枝さんは拳を振り上げ涼宮に振り下ろそうとするが寸前で止まった。櫛枝さんは何かに抗っているのだろうか苦しんでいる。この機を逃さないように涼宮には悪いが涼宮を櫛枝さんの攻撃範囲に入らないように蹴り飛ばす。
「今……蹴…た……ゆる……さないいいいいい!!!!」
「クゥちゃんもう大丈夫っすよスキルの確認は出来たっす『チェーン・バインド』」
再び僕に攻撃を仕掛けようとした櫛枝さんをクイナさんのスキルだろうか光の鎖で縛りつける。櫛枝さんは瞳から涙を流し暴れ続けるが、鎖からは逃れられないようだ。しばらくすると櫛枝さんは力なく眠るように項垂れた。
「クイナ先輩…櫛枝さんのスキルって」
「規格外っすね。ガライさんをあそこまで吹き飛ばす威力でまだレベル1何すよね。これで制御が出来れば勇者以上の力になりそうっすけど……マサ何かわかったことある?」
マサヨシの鑑定によるとステータスの上昇値は異常だったのと、やはり状態異常の怒りが付与されていたの事。クイナさんのスキルで動きを封じられて魔力が尽きてスキルが解除されたようだ。
「俺はクルミちゃんがあのスキルを使うのは反対ですよ。スキルがあっていいなって思っていた自分が馬鹿でした、あんなになってまで戦うくらいなら…それなら俺が代わりに戦います」
「そうっすね…今のままクゥちゃんがダンジョンでスキルを使うのは危険かもしれないっす。でも覚えてほしいっす。いつかクゥちゃんも戦わずにはいられない状況になるっす、その時にスキルの使い方を分からないまま使って他の人を傷つけるようなことが合ったら、きっとクゥちゃんが後悔するっすよ」
「理屈ではわかるけど……それでも俺はその力を使わないように無職でも戦います」
「僕も最悪な状況にならないようにうまく立ち回りますよ、王命であろうが場合によっては逃げきって見せますよ」
「って事は今度のダンジョン攻略は5人パーティーだから私と四葉と涼宮に櫛枝氏だな!!あと一人を誰にするかだが……むむむ出来ればガライ師匠のようなタンク出来そうな人が良いのだがな」
「マサはダンジョンダメっすよ。支援職だからダンジョン攻略は強制じゃあないっす。今日こそクゥちゃんの特訓で鍛えられなかったけれど、うちにした罪を償ってもらうべく諜報員としてのノウハウ叩き込みその派手な虹色の光を何とかして使える兵隊になるべく、ビシバシバキボキに鍛えてやるっす」
マサヨシは一目散に逃げようとするがスキルを使用し先程の鎖で縛りあげていた。バーサーカーモードの櫛枝さんを止められるほどの強度にマサヨシが逃げられる訳もなくそれでも抵抗をするとクイナさんは鎖をきつく締めあげてダメージを与えている。「クイナ嬢王様……ご勘弁を…」と呟きマサヨシは抵抗をあきらめたようだ。
「せっかく久しぶりにアイリに会えてテンション上がっていたのに、急にすごい音がしてデカいおっさんが降って来たのって、やっぱりあんたたちの仕業だったの?マジでむかつく」
「四葉君と涼宮君もあの時の訓練以来だったよね。そこで寝ているのは櫛枝さん?!大丈夫なの?怪我は無いみたいだけれど顔色が悪いわ。服もボロボロだしどうしたの?体調悪いの?救急車は?この世界に無いしどうしよう!!」
黒川さんと天清さんもこの訓練場にやってきたようだ。天清さんの手のひらの上にデカい水球があり、その中にガライさんが入れられている。色々聞きたいが今は聞ける状態ではない。櫛枝さんの様子を見てパニックに陥っている黒川さんに鎖で縛られてクイナさんに踏まれている異常な状況なマサヨシが居る。
天清さんと黒川さんにはマサヨシの事は目には入っているはずなのに何も触れない「私も櫛枝氏と同様に可哀そうな状況なのだが……」っと愚痴を力なく呟いていた。とても混沌としている状況だったので何が起こっていたのか説明をすることにした。
「ふぅ~ん何があったのか大体わかったけれど」
「そんなことがあったんですね四葉君も涼宮君も大変だったね」
「でも鎖で縛られているのは榎本君(部長)が悪いかな(でしょ)」
2人からの援護がないと判断したマサヨシはクイナさんの鎖から逃げる抵抗を止めて大人しくなった。
「こんなことなら気付かないふりをしてもっと触っておけば……ぎゃあああ」自白ともとれる供述をしたマサヨシに容赦なくクイナさんは鎖の締め付ける力を強めた。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




