23 マサヨシの本気
クイナさんの辛辣な声を受けて膝から崩れ落ちたマサヨシだった。だがまだ諦めきれないようで、不気味に笑い出した。なんか既視感のある光景で嫌な予感がする。不気味に笑い出したマサヨシを見てクイナさんは距離を取り若干引いていた。
「ふふふふここまで私をコケにしたのはクイナさんあなたが初めてですよ!!!」
つい先日、天清さんに同じことを言っていたような気がしていたのだが、まさかマサヨシのやつクイナさんにも同じスキルを使うつもりなんじゃ…
「私には2つ目のスキルがある!!!!アナラ~~~イズ!!クイナさんのスリーサイ……」
「マサヨシ!!やめてお…」
マサヨシの瞳に光のオーラが集まって来ていた。しかし突如突風が吹いてきたと思ったら。マサヨシが発していた光は収縮して霧散した。何が起こったかと思いマサヨシを見ると、眼前にクイナさんが短剣を突き立てられていた。
「ダメっすよ…どんなスキルか知らなくても大体わかるっす……乙女の秘密を覗き見したら…死ぬっすよ…」
「ひゃい…私は何も…見てませんって言うか見れませんでした」
「そうっすか、それは良かったっす」
「なるほどな!!なぜか鑑定士が早死にする訳は余計なことを知ってしまうからかもしれんな!!!ガハハハハ!!お互い勉強になったな少年!!」
クイナさんの本気見ているとこっちまでちびりそうになるほど怖かった。だけど自業自得だな。櫛枝さんは心配そうにマサヨシを見ている。涼宮はマサヨシに駆け寄り、腰を抜かしていたマサヨシを無理やり立たせたのだが膝はガタガタ震えていた。
「マサヨシ大丈夫か?近くに俺たちが暮らしている騎士団寮があるから休むか?」
「まだだ…まだ諦めんよ…今のでサーチのスキルレベルが上がったようだ。半径5メートルくらいなら人でも魔物でも把握できるようになった。これでクズスキルと言わせない…もう一度見ていただきたい!!クイナさん…いやクイナ様!!」
「5メートルくらいなら探索者系なら下位スキルで取得できるんすけどね…熱意に免じて最後っすよ。うちを見つけられたら合格っす。『絶影』っす!!」
「おいおい絶影なんて本気出しすぎだろ。そんなもん探索系でも上級職業しか看破できないだろう。しかも近距離で辛うじてってやつだ、クイナのやつ合格させる気ないじゃねぇか。ドンマイだな少年強く生きろ!」
クイナさんは音もなく消えてしまった、ガライさんも言っていたのだが合格させる気はないようだ。探索者系職業の憧れの存在、おそらくマサヨシのスキルの効果範囲に居るはずなのだが、本気になったクイナさんの姿は周りに障害物がないのだがどこにも居ない。
「ふふふふふふ!!あーはははははははは!!!!!」
先程まで暗い表情をしていたマサヨシが高笑いをしだした。オーラの光やら笑い声やらで訓練場に居る人たちがみんなマサヨシに注目している。
「クイナ様…私の事を舐めすぎですよ!!私の近くにしかもすぐ手に届く所に居るなんて!!!そこだ~~~ターーーッチ」
マサヨシが触れたところにはクイナさんが最初から居たかのように佇んでいた。もしかしたら絶影のスキルは極限まで存在感を小さくして認識できなくさせるスキルなのかも知れない。
「ははははははクイナ様これで私は合格ですよね!!もにゅ…な…なんだこの感触は…もにゅもにゅ」
「……っす」
マサヨシが勝利を掴むために手を伸ばしたところは決して触れてはいけないクイナさんの胸の一房だった。マサヨシはあまりの衝撃で混乱しているのか揉むことを止めなかった。それとも冷静に頭を働かせこれから起きる惨劇の前に一回でも多く揉んでいるのかどちらかだろう。
「大人しく死ぬっす!!!!!」
「ぶべらぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!」
何回転かしたのちにマサヨシは訓練場の壁にめり込んだ。ぷるぷる震えていたのでこれまた残念ながら生きながらえたようだった。ボロボロになったガライさんに抱えられて僕たちの近くに乱暴に降ろされるマサヨシは案外見た目よりダメージは少なそうだ、さすがのクイナさんも手加減をしたのだろうか。
「しかし凄いな少年!!絶影を看破するとはな!しかもクイナの絶影だぞ!!ガハハハハハハハ!!」
「そうっすね何か癪なんすけど使えそうすね、気が付いたらうちの下でボロ雑巾のように使ってやるっす。それで死んだら死んだでしょうがないっすね」
マサヨシはどうやら試験には合格したようだ。良かったのか良くなかったのかはまだ分からないのだが、これでようやく僕たちの訓練が出来そうだ。飛翔斬を何とかモノにしたいと思い、涼宮と共に素振りを開始した。
「そういえば3日後にわたし達のだんじょん探索が始まるって言ってたよ」
「クルミちゃん本当?!ダンジョンかぁどんな所なんだろう」
「お城の偉い人が言っていたので間違いないと思う、今日も何人かダンジョンに向かっているみたいだよ」
訓練場の参加人数が昨日と比べて少なかったのはこれも理由の一つだったのか。しかし僕たち無職組には何の連絡もなかったな、期待されてなさ過ぎて涙が出そう。
「狛井くんも今日だんじょんで戦うみたい、強さが認められたかで王様からすご~く強い装備を貰ったんだって凄いよね」
「ちきしょー!!俺っちだってダンジョンで敵を千切っては投げ、千切っては投げて、そして王様からすご~い装備貰おうぜ」
「だんじょんの為の準備金って言って今朝少しお金貰ったよ」
「僕たち……貰ってないよ何か届いていたか?涼宮よ……」
「いや……俺っち言われたんだけど見習い騎士団寮に行けって…届いていないってことは……」
無職には何も施しはないようだ。支援職や生産職みたいに何か作ることも出来ないし、戦闘面だってまだ役に立ててないだろうけど冷遇がひどすぎる。
「見てられないっすね。後輩ちゃんこれで明日城下町で何か買ってくるっす」
「そうだな!俺の弟子がこんな扱いなのが許せんねぇな!!カイトこれも持ってけ!!!」
僕と涼宮はそれぞれこの国のお金を受け取った、クイナ先輩とガライさんの優しさに感動で涙が溢れそうになる。これで明日は城下町まで行って装備を整えよう。馬車で通りがかっただけだけどかなりの数の店や人たちが居たので楽しみだ。
「あとはクゥちゃんっすね。このままダンジョンに行けば間違いなく死ぬっすよ」
「でも……私……戦う事なんて出来ない…です」
「ダンジョン探索はおそらく王命っすよね。戦闘職は行かないと処罰があるっす。逆らうと国外に追放されてしまうっすよ。召喚者には実質死刑っすよね。クゥちゃんのその感じだと誰もパーティー組んでくれなくて途方に暮れるっす。でも優しい後輩ちゃんとカイっちは間違いなく手を差し出すっすよね」
「あったぼうよ!!クルミちゃんが戦えなかったらその分俺っちが敵をちぎって投げる!!」
「クゥちゃんはそれで良いんすか?」
「私は……それでも……」
「それで後輩ちゃんやカイっちが死んでもっすか…」
クイナさんに詰められて櫛枝さんは小柄な体をさらに小さくさせている。僕たちの死の可能性、それは僕にも言える事だ、無職の僕達を守るために大切な人を犠牲にしてしまうかもしれない。僕もそして櫛枝さんもその可能性の方がきっと辛いだろう。だけど僕は自分の可能性を信じてみたい。
「櫛枝さんは僕たちが守ります。僕たちも死にたくないので慎重に行きますから」
「お前らも分かっていると思うがクイナは意地悪で言ってんじゃねぇぞ。そうやって弱い奴を守って死んだ仲間をそれこそ死ぬほど見てきたんだ。ダンジョンは甘くねぇ……お嬢ちゃんも少しは強くならねぇと足手まといで仲間を殺したくねぇだろ」
「…分かりました……私……がんばります!」
「いいっすね!!その意気っす!クゥちゃんはバーサーカーだったすよね?しかもスキル持ち」
「そうですね……何で私がこんな職業なのか……ごめんなさい」
「今から鍛えるのも次のダンジョンまで時間ないし、今クゥちゃんが何できるか確認してみるっす。おいマサ起きるっす。気がついてんのはもう分かっているっすよ」
マサヨシはボロ雑巾の件を聞いて気絶ふりをしていたのだろう。クイナさんに気が付いている事を指摘されると、すごい勢いで立ち上がり敬礼をしている。眼鏡の奥の瞳には恐怖に染まっている。クイナさんに櫛枝さんの今の能力を調べるためにスキルを使うようにとのことだった。余計な事まで調べたら始末すると言われクギを刺されたマサヨシは全力で首を縦に振り詠唱を始める。
「アナラ~イズ!!どれどれ……櫛枝さんのステータスは全体的に私よりも少し高いぐらいですかね」
「支援職のマサより少し高いってユニークの戦闘職なのにおかしいっすね。あとは属性色は何すか黄色とか青色なら良いんすけど」
「黒川会長と同じ黒色ですな!!」
「「黒色?!それは本当か!(っすか!)」」
「あれ?采配の儀式のときは無色って言われたような……」
「なんか分からないけどクルミちゃん凄いぜハイターッチ」
マサヨシの鑑定スキルの結果を聞いてガライさんとクイナさんはかなり驚いている。黒色は珍しい属性なのかも知れない。黒川さんもおそらく黒の勇者なので櫛枝さんと同じなのだろう。黒のバーサーカーの当人は顔を赤くしながら涼宮とハイタッチしていた。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




