20 スキルと第5騎士団長
騎士団見習いの寮から訓練場が近いのもあって僕たちが一番乗りみたいだ、まだ予定されている団長たちとの訓練の開始まで時間がある。シキさんは訓練前の準備運動を隣にいる涼宮は大きなあくびをしていた。
「シキさんこの世界のスキルについて質問があるのですがスキルの取得条件って何ですかね?」
「同じ職業の人に教えてもらうとスキルとして顕現することが有ったり、職業のレベルに応じて獲得されるから無職だと厳しいかも知れないね。もしかしたら取れないって事もでも…」
その言葉に膝から崩れ落ちそうになるがシキさんは「まあまあ話は最後まで聞いて」と言われギリギリ踏みとどまる。涼宮も焦っている表情をしていたがシキさんの話を聞いて安堵したようだ。
「まず1つ目は女神さまの試練を達成すると職業が上位になることがある、その時に絶大な力とスキルも増えたりするみたいだね。試練の内容などは知るすべはないけど、ただの剣士から剣鬼になったが第三の騎士団長のユーリ様が有名だね。今代の剣聖様よりも強いと噂されているみたいだよ」
ユーリさん只者ではないと思っていてけれど、剣鬼か今度会ったら職業について質問するのもありかもしれない。ただ僕たち無職が上位になれるのかは怪しいのだが少しは希望が持てる。
「2つ目は今持っているスキルが変化することがあるみたいだね、ある者は効果が反転したり、効果の力が上昇したり減少したりするという。原因は当人の心的要因が強いとされているみたい」
2つ目の条件は全く当てにならなさそうだ、反転や効果の上昇して今のスキルに変化があったとしてもレアアイテムスキルには無職の僕にはメリットがなさそうだ。
「最後に3つ目は称号によるスキル取得だね、これらは神の試練よりも難しいとされているよ、歴代の勇者様が魔王を討伐したことにより授けられたスキルがあったみたいだね、名前付きを倒した時にも極稀に手に入ったとされているよ。魔王は難しいにしても、既に名前付きを倒した四葉殿なら手に入れられるかもしれない」
シキさんの言う通り3つ目の条件が一番希望があるように思えた、名前付きか…あんな思いは二度としたくないけれど非力な僕たちでも倒せることは昨日の自分たちで証明できている。
そうこうしているとクラスメイトや騎士団長たちが集まってきたようだ、騎士団長らしい集団の中にエルクさんの姿を見受けられた。視線が合うと手を振って応じてくれたのでお辞儀をする。辺りを見渡すがユーリさんは居ないようだった。職業の話を聞きたかったので残念だ、しかし騎士団長は揃いも揃って美男美女だらけだった。
「よし皆揃ったようなので訓練を開始しようと思う。各々職業にあった騎士団長に教えを乞うようにまず騎士団長の紹介をしよう…」
騎士団長の紹介と各騎士団の対応職業の説明が終わるとクラスメイトとシキさんは各々職業に合った騎士団のもとに向かいだす。僕たち無職組はどこに向かえばよいのだろうか、二人しておろおろしていると向こう側から黒川さんと櫛枝さんが近づいてくる。
「おはよう四葉君と涼宮君」
「ラブリちゃんおっすおっす」
涼宮は相変わらず軽い挨拶をしている。櫛枝さんも黒川さんの陰に隠れて涼宮に対しておっすおっすと口を動かしているのだが残念ながら音になっていない。恥ずかしいのかすぐに顔を赤くして俯いている。櫛枝さんの涼宮に対しての気持ちは何となく察しているので、櫛枝さんの事は応援している。だが涼宮てめぇはダメだモテる奴はみんな爆散しろ。
「おっクルミちゃん俺っちの真似?おっすおっす~もしかして俺っちにホの文字なら付き合おう??なんちて」
こういう所なんだよなモテる要因はなんで気付けるのかね?櫛枝さんはあわあわとしてゆでだこ状態になっている。まぁそうだよな好きな人から告白まがいの事されたら…そうなるよな。
「もう涼宮君クルミさんに意地悪しないで私たち」
意地悪じゃないんすよ黒川さん、櫛枝さんあんなになっているけれど心なしか…いやかなり嬉しそうにニマニマしている気付いてくれたの嬉しいんだよね。
「冗談半分はこれくらいにしといてラブリちゃんどしたん、黒の勇者様なら引っ張りだこでしょ」
半分…だと…どこから冗談でどこから本気なんだ?!まさか涼宮も………?!
「私たち昨日の事もあって、やっぱり怪物が怖くて戦う事がどうしても出来そうにないからどうしようかと…」
「俺っち達もどうしようかと思っていたんだよ。皆から聞いていると思うけど無職だからどこに行けばいいのかわからなくて途方に暮れていたところなのよ」
「ユーリさんが居れば良かったんだけどね、話してみると案外いい人だと思うよ?」
「なぜ疑問形なのか聞かないでおくとして、マジでどうしよう」
途方に暮れているところに一人の女性騎士…確かミア=プリンシヴァルがまっすぐ近づいてくる。先程の説明によると第5騎士団の団長で、この世界の女神を信仰するディアス教の枢機卿でもあるから勇者たちには教会にも一度来て頂きたいと言ってたような。
「確か第5騎士団の団長のミアさんですよね?」
僕は握手しようと手を差し出したのだがまるで僕の姿が見えていないのかのように通り過ぎて、黒川さんの目の前に立ち止まる。後方で「無視されてんじゃん、美人さんだからって下心バレたんじゃね」と腹を抱えて笑っている涼宮は後で始末するとしてこのめちゃくちゃ恥ずかしい状況を何とかしたい。
「お初にお目にかかります、黒の勇者様。僭越ながら本日は私の隊にて訓練をするのはいかがでしょうか?黒の勇者様は魔法技術が卓越していたと聞き及んでいます。我が第5は魔法部隊その技術を惜しみなくお伝えすることをお約束します」
跪き恭しくしているこの騎士の姿はさながら勇者物語の1ページに相応しい状況であったが、その当の勇者様の表情がブチ切れ一歩手前だった。
「いえ結構です。あなたのような失礼な方に何かを教えてもらう事なんてありません。」
「彼は女神ディアス様から見捨てられたあり得ない存在。勇者様の傍に居て良い存在じゃないんです」
奇麗な顔してめちゃくちゃ酷いこと言うなぁ…涼宮も笑っているけれどお前も無職で女神様チュートリアルに参加できなかった見捨てられた側なんだからな。黒川さんもめったに見られない怒りの表情をしていた。このままではマズいかも知れない。
「黒川さん僕のことは平気だからミアさんの所で訓練してもらうのも悪くないかもしれないよ」
僕たちはこの世界にきて分からないことが多すぎる、凶悪な魔族が居る世界。この国の人もまだ信用ができない。そうなるとどうしても必要なのは力だ、最低でも自分の身を守れるくらいの力が欲しい。直接戦うのが怖くても魔法なら安全な距離から戦えるかもしれない。惜しみなく教えてくれるならこの提案に乗るのもよい選択だ。
「でも……わかったわ四葉君がそういうなら…でも私は何かを殺めるとか出来ない。だから違う方法でみんなの助けになる方法があるなら教えていただけますか?」
「我が隊に来て頂けるのなら必ずやそのご期待に沿えるように努力いたします。それと四葉様…私は勘違いしておりました申し訳ありません。女神さまに見捨てられようとも同じ目的を持つ者、ともに黒の勇者様を高みへと導きましょう。もし怪我や病気をなされた時、我が教会に来た時には格安で治療することを約束致します」
結局金を取るのかよと喉まで出かけたが飲み込んだ。第5騎士団の団長ミアさん、ユーリさんと勝るとも劣らない性格の持ち主だった。僕が無職ではなかったら対応も違ったのだろうか?言葉では謝っていたのだが最後まで路傍の石を見る目をしていた。
「俺たちはどうっすかな?クルミちゃんはともかく無職の俺たちはどこか拾ってくれるのかな」
「とにかくエルクさん所に行けたらいいけど回復部隊だからな…魔法も無理だし近接教えてくれそうなところに行くか櫛枝さんもそれでいいかな?」
「私も戦うとか無理だけど…見るだけなら…」
そうと決まれば第6騎士団の所に向かうかな、確か今代の剣聖という話だったよな。僕たちの剣の技術も我流だし少しでも強くなれるのなら英雄に近づけるのなら教えを請いたい。
「じゃあ第6騎士団の所に向かおうか」
「剣聖様の所だな。訓練とはいえ倒してしまっても良いのだろうか?」
「私も頑張ります……応援を…」
「まさかまさか後輩ちゃん裏切りっすか?帰ってきたらビシバシ鍛えるって言ってたのに…クソ雑魚の第6に行っちゃうなんてクイナ先輩ちゃん、かなしいな……なあ!!!」
「裏切りなんて許さねぇぞ。俺もお前にガチガチの上下関係を叩き込んでやる、覚悟しておけよ!!」
背後から聞いたことがある恐ろしい声がしたので恐る恐る振り返るとそこにはクイナさんが青筋を立てて両手には短剣を持っている、その隣には両刃の大剣を背負っているガライさんが邪悪に笑っていた。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




