19 騎士団見習い
この建物は騎士団見習いの寮らしい。何十年か前に平民から騎士団に入隊させることも考えて、その時に居住できるようにと建てられたらしいのだが、ほとんどの騎士団は血統主義で結局は貴族以外は正式な入団を許されなかった。そのようなことを続けていたら、もちろん平民からの入団希望者が現れることもなくこの寮も放置されることになり、このような残念な状態になったのだそうだ。
中に入ると外壁以上に悲惨な光景が広がっていた。至る所に埃があり層になっている。だれも住んでないのかと思ったのだが、涼宮が言うには何年かぶりに平民から騎士見習いになった人が居るらしいのだが見当たらない。
内部には部屋がいくつもあり、掃除をすれば快適に暮らせそうだ。家事スキルは自慢じゃないが現世ではインドア派だったのもあるので、如何に家で快適に暮らせるのかを極めようとしたのでかなり上がっている。掃除や洗濯、それに料理はかなり自信がある。料理教室に通わなくても僕たちの世界には動画に色んな先生達が無料で教えてくれるので料理のレパートリーはかなりあると自負している。
「こんな所で住めるか!!かび臭いしなんか変なの生えてるし鼻がさっきからムズムズする」
涼宮が部屋の隅に生えていたキノコみたいなものを取り外に投げ捨てている。明かりもどこにあるのか分からないので日が完全に落ちるまでに掃除し始めないと寝床に困りそうだ。掃除道具は埃に被っているがあるので何とかなりそうだ。手に取ろうとした時に背後に何か気配を感じた。
「動くな…ここに何の用だ、取るものは何もないぞ」
「ひぃいいいいお助けを~」
涼宮の首筋に短剣を押し当てられ赤い筋からは血がうっすら滲み出ている。服装を見る限り王国の紋章が刻まれているので騎士の人の様だが、訓練場で見たような剣士のような重厚な鎧ではなく。それよりもかなり軽装だった。
「待ってくれ僕たちはこの世界に召喚されてこの国の人からここに住むように言われただけで盗みに入った訳じゃないんです」
「そういえば何か無職のハズレが来るとか何とか先輩が言ってたような…」
僕達は王国の人からハズレって言われてるんだ、ショック過ぎる…涼宮は拘束されているが、ハズレと聞いて憤慨しジタバタしている。拘束している当人は思い出したのか、みるみる顔色が悪くなり、慌てて涼宮の拘束を解き地面に突っ伏した。この国にも土下座文化があるんだと感心したのだが恐らくこの人が前から住んでいる騎士見習いの方だろう。
「申し訳ありません!!召喚者様でしたか王命で世話をするように言われていたのですが失念していましたどうか命だけは助けてください田舎には幼い兄妹がります故、何卒ご容赦を!!」
額を地面に擦り付けて許しを乞うているのが騎士団見習いのシキさんで、平民出身の騎士団見習いだそうだ。今年から騎士団見習いとして貴族の同期と一緒に訓練をしているらしい。
「分かりましたから、顔を上げてください涼宮も良いよな?」
「納得いかないけどな田舎の兄妹に免じてエベレストよりも高くマリアナ海峡よりも深い心で許してやろう…今度なんか奢れよな」
「エベ?…マル…アナ海峡?…良くわかりませんがありがとうございます」
「色々聞きたいことがありますがこの状態では衛生的にも精神衛生的にも悪いので早く掃除しましょう」
「おぉ!!一人では何から手を付ければいいのか分からなくなり掃除は諦めていたので助かります!!」
僕達は手分けして掃除を始め、かなりの時間が掛ったがすべての部屋を掃除することが出来た。人数分の部屋を確保できれば良かったのだが、やり始めると最後までやりたくなるのが性分なのだから仕方がない。
「やっと終わったか…これでようやく休めるな」
「掃除してる間に今夜のご飯も作っておいたから食べながらこれからの事を話そう」
「おぉ!騎士団に見習いになって初めて人間らしい食べ物が食べれます!!」
異世界だったので食材も見たことがないものかと思ったが、見知ったものばかりだったので助かった。シキさんの口に合うか思ったが杞憂だったようで泣きながら美味しそうに食べている。
「そういえばクラスメイト達に配られていたんだけど何なんだこの腕輪」
「おおおお!!それはかの勇者様たちが付けていたといわれる魔法の腕輪ですよ!ステータスオープンって唱えると自身の事がよく知れるという女神さまが残したと言われるアイテムです」
二人目を合わせ腕輪を身に着けると光の粒子になって体に吸い込まれるように消えていった。羨ましそうにシキさんは見ていたが、その気持ちはよくわかる異世界での勇者や英雄によくあるステータス提示一度やってみたかった。因みに腕輪がないものはお金を払って教会でステータスを聞かないとわからないらしい。
「「ステータスオープン」」
僕達は自身のステータスを確認してみる。女神さまの腕輪でもスキルの名前は文字化けしてて分からず効果は采配の儀式で言われた通り、レア率上昇、経験値上昇、人族の全ステータス微減と書かれている。涼宮のスキルは名前も効果も文字化けして読み取れない。
「このステータスの称号って何なんだ、名前付き殺し自身よりレベルの低い魔物に対して全ステータス微向上…って書かれているけれど」
「称号ですか?!なにか偉業を成し遂げた時に現れるというものです、ハズレって先輩が言ってたけれど全然そんな事ないじゃないですか。団長達以外で名前付き殺し持っている人初めて見ました」
「俺っちも頑張ったんだけどな…今後も機会はあることを祈って、明日に備えて休むとするか」
涼宮はおおきな欠伸をしながらいつの間にか決まっていた自分の部屋に戻っていった。今後の予定を聞かされていない僕は不安で眠れそうにないと思ったが、疲れがたまっていたのであろうか秒で夢の世界に旅立った。
真っ白な世界…目の前には大きく煌びやかな装飾を施されている玉座らしいものがある、誰かが座っているがはっきりと認識が出来ない、声を掛けようとするが、喉に何かが詰まっているように声が出なかった。
「俺の…名前は……」
目の前の奴がどこかで聞いた事がある声で語りかけようとするが、とてつもない衝撃を身に襲い掛かりこの世界から強制的にたたき起こされた。
「起きろおおおお!!朝だぜ相棒!!!今日は楽しい訓練の日だぜ!!」
「おはようございます今日は自分も一緒に訓練です」
ベットから強引に落とされ頭をぶつけたのかかなり痛い。額を擦りながら朝からハイテンションの涼宮を枕でヘッドショットを狙うが華麗に躱され隣のシキさんに当たってしまう。
「避けんなよシキさんに当たってしまっただろ、それに訓練ってなんだよ」
「戦場では油断は大敵なのだよシキパイセンは修業が足らんのだよ!!」
「なるほど勉強になります、日々修業ですね自分も早く一人前の騎士団員に成れるように頑張ります」
涼宮が明らかに適当なことを言っているが、シキさんは生真面目にメモまで取っている。訓練か…スキルの事も気になるしシキさんや誰かに訓練してもらえるなら、そのほうがありがたい。
「今日は騎士団長さん達が直々に俺たちの事を鍛えてくれるってよ。楽しみだよな第3騎士団はおっかなくて勘弁だけど、めちゃくちゃ綺麗なお姉さん団長がいたしその方に手取り足取りなんつって」
「自分にとっても団員にスカウトされるチャンスなので気合が入っています!!!……何としても田舎に残してきた家族の為に頑張らないと!」
「気合十分だなシキパイセン!!とにかく訓練場にレッツラゴーだぜ!!!」
昨日の疲れやダメージはまだ完全には抜けていないが、それよりも楽しみが勝っていた。騎士団長たちが直々に訓練してくれるという、異世界あるあるのチュートリアル訓練が始まろうとしていた。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




