15 先輩とおかっぱ
団員の方々は少し…かなり変わっている方が多かったが、エルクさんが言うような危険な感じでは無かった。むしろいい人たちばかりで安堵した。いよいよ采配の儀式の会場に戻ろうかと武器庫から出ようとした時、団員であろう軽装な少女が慌ただしく現れた。
「外からすごい音が聞こえたけれど、また剣を試してたっすか?懲りないっすね」
「今回の被害者はガライよ、もう少し早く来ていたら見られたのに残念ね」
フレイさんは気絶しているガライさんの方を向き思い出し笑いをしている。ガライさんはというと、あの聖剣の件から無造作に床に寝かせられている、僕を巻き込もうとした因果応報だけれど、ちょっと可哀そうに思える。
「マジっすか…あのガライさんが?!見たかったな~」
軽装の少女はガライさんが気絶している事を良いことに、顔を指で突いたり、引っ叩いたりしている。ガライさんって結構人望がないのかな、ますます可哀そうに思えてくる。
「クイナ、君が戻ってきたという事は、パラミデス卿について何か進展があったのかな」
ユーリさんは軽装の少女クイナさんに対して少し険しい表情をしている。周りの団員達も先程までのゆるい空気と一変してユーリさんと同じように険しい表情をした。
「団長に報告したい事があるっす。やっぱ団長の言う通り…」
クイナさんの視線が僕に向けられる、彼女は訝しげにこちらを見るとそれ以降の会話は団長に耳打ちで報告した、気になるけれど部外者の僕がいるなら、仕方がないよな。
「こんな感じっすね、証拠は後ちょっとで掴めそうですけれど…間違いなく黒っすね」
話の内容は把握出来なかったが何やらパラミデス卿って方が裏で何か悪いことをしているらしい事は僕でもわかる、クイナは今度は僕の方に近づいてきた、何かされるのかと身構えていると
「君、もしかして新人かな?今聞いた事他の人に喋ったら…」
凄くかわいらしい笑顔だがその裏の副音声が聞こえる『他言したら殺す』僕は反射的にブンブン首を縦に振ると彼女は腕組みをしながらウンウン頷いている
「ボク後輩は初めてだから嬉しいっすね、ボクの事はクナイ先輩でヨロシク」
可愛らしい顔でサムズアップしながらウインクをしている、クイナさんには申し訳ないけれど新人じゃないし、団員になる気もないので早く否定しないと…
「四葉奏多って言います、クイナさん…」
「あ゛ぁ」
何処から聞こえたのだろう、ドスの利いた声が聞こえたけれど聞こえた方向を見ると笑顔でサムズアップしウインクしているクイナさんしかいない…気のせいかこういう事は早く否定しないと後から面倒なことになり兼ねない気を取り直して…
「クイナさ…」
「あ゛ぁ」
「……クイナ先輩!!」
気のせいだと思っていたけれど、否定していたかったけれど、やはりクイナさんの声だった。クイナ先輩と言うと後輩が出来た嬉しさを噛みしめている。どうしよう、もう否定できない…本当に団員にされそうだ。
「後輩ちゃんよ、今日は任務で忙しいから相手出来ないけれど戻ってきたらビシバシ鍛えてやるっす」
クイナ先輩はその言葉を言い残すと目の前から一瞬で消え去った何かのスキルなのだろうか?最後まで勘違いされたままだったのだが…今度会ったときに話そう。
「四葉殿、申し訳ない。急ぎやらなければいけない事が出来た」
「大丈夫ですよ。僕もそろそろ戻らないと、儀式が始まっていると思いますし」
「では、団員の誰かに送らせよう」
「大丈夫です、帰り道は覚えていますし、これから何か大事な話があるんでしょうから」
ユーリさんはすまないと言い残しフレイさんやリーゼさんを引き連れて騎士団の一室に入っていった。采配の儀式の会場に戻るとやはり開始には間に合わなかったようで、何人かのクラスメイトは職業を手に入れたようであった。クラスメイト達の一人、おかっぱ頭で眼鏡をかけている男がこちらへ向かってくる。
この男との出会いは、通っている高校の校則が部活は必ず入部しないといけなかったので、何か良い部活がないのかと探していたところ。このおかっぱ頭、榎本昌義が漫画研究部を創部するからと言って土下座までしてきたので仕方なく数合わせで入部した。ほぼ幽霊部員だったけど、たまに行くと漫画の趣味は合うし居心地は悪くなかった。
「やぁカナタ氏、僕は新たな力を手にいれた、聞きたいかい?」
眼鏡をクイっとさせながら一瞥する、めちゃくちゃウザいがこの世界のスキルに好奇心をくすぐられる。
いつもなら軽く手刀するところだが我慢しよう。
「どんな職業だったんだ、まさか戦闘職なのか?」
「聞いて驚け!そして慄け!!僕が手に入れた職業それは……鑑定士なのさ!!!」
どうやら支援職らしい、召喚者のほとんどは支援職らしいし、マサヨシには戦闘は厳しいだろう。人に言えた事ではないがどう考えても戦闘は不向きな性格だろうから良かったと言えば良かったのかもしれない。
「支援職か鑑定士という事は商人とか向いているんじゃないのか?」
チッチッチ人差し指を振りながら再び眼鏡をクイっと上げるウザいがこの自信のある態度…まさか漫画やアニメでよくある展開のあれなのか…僕の表情で察したのであろうマサヨシは次の言葉を紡ぐ
「察しの通り、鑑定士との名のバッファーだよ…見せてあげようこの力を…サーチ!!」
マサヨシが目を瞑り魔力を貯めだした、するとマサヨシの身体の周りに魔力が奔流する。風もないのにおかっぱの髪がふわふわと舞い上がり身体は虹色に発光しだした。周りのクラスメイトも目の当たりにしたその姿に驚きを隠せないのであろう、口々に「ゲーミングマサヨシ」と言っている。
魔力の奔流が終わり、虹色の光も収まりマサヨシは目をカッと開く。
「なんなんだそのスキルは光に当たると少し暖かい感じがしたけど…」
「それだけじゃない…温度調節の他にも探知能力もあるこの部屋に……………」
「いっぱい人が居るよ!!!」
どうやら演出が派手な割には探知能力は精度が低いようだ。魔力を消費したマサヨシは肩で息をしている。この能力にとても満足しているような表情だった。
チム子です。
初めての作品なので誤字やら脱字やらあると思いますので申し訳ありません。
少しでも心に何か残せたら嬉しいかな。。。




