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さらなる喜びを求めて

「おっここね。」


本と書かれた民家の扉を開け、カランコロン、とお手製の金具で入店を知らせる本屋に足を踏み入れる。


…ふぁああああ!!!


思わず声を出さずにはいられない世界がそこには広がっていた。クローバット家の玄関の半分にも満たない小さな店だけれどどこもかしこも本棚とぎっしりと詰まった本でいっぱいだった。今まで本を買うとなると商人に持ってきてもらうか、タイトルを伝えて注文してもらうだけだったからこのような光景は初めて見る。…素晴らしい!素晴らしいわ!!!さすが王都の本屋である。


私の曾祖父の世代から識字率の向上を目指して手間がかからない活版印刷が開発されたり、国からお触れが出されたり読み書きを教える手習い場が建てられたらしい。そのため王都の方ではある程度の人が読み書きでき、価格が抑えられて誰でも本に親しみやすくなっているらしいが、やっぱり農村や辺境の方ではその効果が薄いらしい。おそらくそちらの方ではこのような書店は存在すらしていないのだろう。


うーん、もったいないなぁ…こんなに面白くて役立つ本が読めないなんて…働いている人にそんな余裕がないのもわかるけれど何かできることはないのかしら。それに曾祖父の世代に出されたっきりのお触れだから忘れ去られているのかもしれない。お父様に進言して政府に嘆願を…いいえ、そんなことをしたら情勢に関心があると思われて大変なことになりかねないわ…あぁ!もどかしい!!!


頭を振ると思わずたたらを踏む。おっとっと…!あらこの本は!経済の発展と商業の意義が平民視点で書かれたもの…そしてこちらは各国を遊学していた吟遊詩人の旅行記…!あらこちらはある著名な数学学者の叡智の結晶…!?到底9歳の子供が父に頼めるものでないからと遠慮していた本の山…!!!


…じゅるり、…だめよシルヴィア。そんな侯爵令嬢としてよだれを垂らすのは…!!!きいえ関係ないわ!!!今の私は引きこもり!周りの目など気にしないのよ!!!さあ手にとって…それを買うのよ!














「…全然足りないねぇ」


ガクッと思わず肩が落ちる。そうなのだ。最初の目的はあの本だけだったし、何の拍子に落とすかもわからないし、平民の子供が大金を持っていることも怪しく思われるのでギリギリ子供が持っていて怪しまれるかどうかといった銅貨数枚に先程貰った銅貨1枚しか持っていないのだ。何で私……うぅ。わかってる、わかってるわ…働いていないのにご飯が食べられて本さえも買い与えられているんですもの!わがままを言っていけないわ…


「じゃあこの1冊で…」


テンションだだ下がりの声色におばさんはビックリしていた。当初の目的の本だけでも買えたんだから良しとしよう。本を紙で包んでもらってお釣りを受け取る。


「…あんまり言いたくないんだけどさ」


「え?」


「あんたわかるかい?あっちの方ずーっと歩いて行くと王立の図書館があるんだよ」


「…おうりつのとしょかん。」


「ああ、持ち出しは禁止だろうけど読むだけならタダさ。本屋としては商売上がったりだけどあんた凄い顔してるからさ」


「もちだしはきんしだけどよむだけなら…ただ!?ありがとうおばさま!!!お金ができたら絶対買いに来るからね!!!」


なんて素敵なものを教えてくださるの!!!ありがとう!!!


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