嘘でしょう?
去り際に完璧なカーテシーまでしてくるりと自分の部屋を目指す。ふん、このくらいできますからね!!!このような皇太子妃として理想的な姿は他人に見せてはまたあらぬ噂を招いてしまうだろうけれど兄ぐらいにはよいだろう。これに懲りてまた口出しして来なければよいのだが…こんなに口うるさく言ってくる人だっただろうか。先ほども疑問に思った通りに前の人生での兄は普通に小説にも馴れ親しむ人だったはずなのに、どうしてあんなことを言ってきたのだろう。…私が引きこもりとなったせいでなんらかの変化が起きたと考えるのが普通だろうか。それでも私にとっては殺されないことが一番大事であるから仕方のないことなのだが………勿体ないわ!こんなに面白いんだから!あ!何冊か良いものをピックアップしてお届けして布教…げふんげふん同志にしたいものだわ。
さて、引きこもりを自称するからにはさっさと自分の部屋に戻らなければ!!兎にも角にも手に入れたばかりの本の重みといったら!もうよだれが出てしまいそうになるほどたまらない…!早くページをめくって想像の旅に出なければ!そう言って早速扉を開けて、机の上に置き包装を解く。中から出てきたのは新進気鋭の作家によって書かれた恋愛小説のシリーズもの。一口に恋愛といってもこの作品はそこだけに重点を置いているわけでなく、先程私が使ったアダトルの文化を下敷きとした重厚な世界に、作者独自の世界観を組み合わせて説得力もありつつも空想の域を出ない、なんとも夢のある物語になっている…らしい。さて!夢の世界へ行ってまいります!!!
ぱら…ぱら…
ふぁぁあ!!!これは傑作だわ…!!!なんなんでしょうこの今までありそうでありえなかった最高の組み合わせ…!えっこれもう完結しているっていうの!?あと1巻しかないの!?最後まで読みたくない…終わってほしくないけれどここまで読むと気になってしまう…ああカイト様(ヒーロー名)!シルヴィアは結末を受け入れます!いざ最終巻へ!!!
すかっ
「えっ」
机の上には本が乗っていなかった。
「???」
夢中になっているうちに落としてしまったのかしらと机の周りを這いつくばってくるりと回ってみる。
ない!ない!ない!!!えっこれってもしかして…?慌てて本を包んでいた跡の残る包装紙を読み終わったばかりの本に合わせてみる。
「…ぴったりあっちゃった。」
どうしたことでしょう。なんと最終巻が不足しておりましたとさ。
「こんないいところでお預けなんて嘘でしょう!?」




