その後と新たな問題
「ハァ……ハァ……まだ終わんないのかよ」
俺は山積みにされた粗悪品の武器に囲まれていた。
あの後ナコがロココを連れてきて、状況を確認したロココはマテーヌとナコ、ソノ、ミニニ、冒険者を代表してマハを連れて商人ギルドへ帰って行った。
夕方ロココとマテーヌ以外の4人が戻ってくると、マハはまだこの場にいた冒険者を解散させると自分もどこかへ帰って行った。
ソノとミニニは修理の受付は明日からという看板を作り店の前に目立つように設置していた。
ナコは解放されたがその場から動けないでいる事務員達に自分が辞めてから今日まで仕事の引継ぎをするように言った。それが終わったら全員解雇になったそうだ。
マテーヌはさすがに領主の姪を商人ギルドの判断で奴隷というわけにはいかなかったようでしばらくは商人ギルドに身柄を押さえられていたが領主が迎えにきた時に商人ギルドの支部長に事情を説明された結果、親類の縁を切られ予定通り奴隷に落ちたらしい。
名誉上級貴族の縁者であるカリファーとの婚姻を拒み、さらにはその商会を潰れるところまで追いやったのだ。領主には既に邪魔以外の何でもないだろう。
しばらく店舗はソノとミニニで運営していたがさすがに回らず、2人がナコに泣きついて辞めさせられていった従業員を呼び戻した。
工場の方は職人達が俺のおかげでいい武器になっていたことを知ったようで、生産速度は落ちたものの1本1本を丁寧に作るようになった。
事務所は事務員がすべて辞めたのだが、カリファーがいないと事務所の方の求人ができないのでナコが一人でやっている。
そして俺は1日は店舗の方で修理していたが出荷分のチェックの再開もあって事務所内の作業部屋に戻っていた。
もうどれくらいの日が経ったのかもわからないほど毎日が激務で家にも帰れない日が続いていた。
ある日、修理の終わった俺が事務所でナコの手伝いをしていると突然扉が開く。
そして見知った顔がこちらを驚いたようにして見ている。
「おや? リー、ナコ。どうしたんだこっちで仕事なんかして。他の者はどうした? マテーヌは?」
その懐かしい声にナコが泣きながら走り出す。
「おかえりなさい、カリファー様」
そう言ったナコはカリファーに抱き着いて泣き声を上げる。
カリファーは驚きながらもナコの頭を撫でる。
「おいおい、どうしたんだナコ? なぁどうなってるんだリー?」
俺はカリファーに今日までのことを説明する。辞めたこと、2人でカリファーの借金を返したこと、商会と商店に起こったこと、マテーヌのこと、2人でカリファーの借金を返したこと。
「なぜ借金のことを2回言ったんだ?」
「貸しの押し売りだ。うれしいだろ?」
カリファーはすべて聞き終わると「そうか……」と呟いたあとナコを離して一歩下がると俺とナコの顔をそれぞれ見た後に深く頭を下げた。
「すまなかった」
「知らん、お前のせいじゃないなんて言うつもりはない。すまないと思うなら俺とナコに早く楽させるようにしろ」
俺がそっぽを向いてそういうとナコがクスクスと笑っているのが聞こえる。
カリファーは俺の言葉に「そうだな」と笑う。
すると、扉の方から物音がした。3人で同時そっちを見る。
長い前髪で顔のよく見えない女の子がいた。カリファーは「忘れていた」と呟いて女の子に近づく。
「リーにお土産だ。助手を欲しがっていただろう?この子は元聖女様らしいんだが神に見放されたとかで奴隷になっていたんだ。鍛冶の知識が豊富なのだが奴隷になった理由が理由なので買い手がいなかったところを首都での取引先が俺に勧めてきたのだ」
「はじめまして、リーシェ様の奴隷として購入されたエディリシと申します」
カリファーの説明が終わったのを見計らってエディリシが1歩踏み出してそういう。
「俺がリーシェだ、よろしくな」
俺はそう言って笑顔でエディリシの頭を撫でた。そして笑顔のままカリファーの方を向いていう。
「元聖女様で? 今どこの世界でも欲しがる鍛冶の知識を持った奴隷か、すごいお土産だよカリファー」
ナコが察した様子で耳に手を当てる準備をする。
しかしカリファーはなにも察せずに、俺に褒められたと思って上機嫌になっている。
「そうだろう? 思ったより高かったんだが確認したら借金がなくなっていたのでな――」
「借金してんじゃねええええええええええええええ。お前何考えてんの!? 俺とナコがどんだけ苦労して借金返したと思ってんだよ!」
そしていつものように悪びれず大丈夫だと言うカリファーと呆れた顔でカリファーを見るナコがそこにあった。
俺が怒鳴り終わるとカリファーとナコは商人ギルドへ事務員の募集に向かった。
俺はエディリシを連れて作業部屋に来ていた、俺の奴隷になるということはいろいろ話しておく必要があったからだ。
作業部屋の扉を閉じた途端エディリシが両膝を地につけて祈るポーズになる。
「ああ、あなた様にこうして実際にお会いできるなんて私はなんと幸運なのでしょうか鍛冶神様」
突然そんなことを言い始め俺を崇めるようにするエディリシに俺は言葉を失った。
新たに登場した元聖女はサイドストーリーなどに出てくる聖女とは別人です。




