今なんて言ったの?
「今なんて言ったの?」
混乱していた。
(殺されるかもしれなかった奴が結婚だと? ってか結婚って結婚だよな、血痕でしたとかいう寒い話じゃないよな)
俺がおかしくなったのかと思ったが、横目でナコを見るとナコも目が点になっていた。
(ということは多数決で俺達はおかしくないな・・)
なんて考えているとカリファーが答えた。
「だから結婚することになったんだ。領主様の姪御様と」
「話が飛び過ぎだよ! どうなってるんだ?」
「そうですよ御主人様! 私は御主人様は囚われたんじゃないか、処刑されるんじゃないかと――」
「ナコよ、もう私は御主人様ではない。 しかし、そうだったな・・俺もあまりの展開についていけなかったんだ最初から話そう」
「そうしてくれると助かる、とりあえず喉が渇いた。休憩室に行こう」
「そうですね、私お茶入れますね」
俺達は2階の休憩室に移動して一息つくとカリファーは話し始めた。
「まずは魔剣を届けたところからか、俺は領主様に面会するやいなや、確実に直した!ぜひ振ってみて欲しい! と同席していたラオル様に魔剣を渡した」
「いきなり水差すようで悪いが誇張してないか?」
「いや強気で行っても弱気で行っても結果次第がダメなら同じだ、なら弱気で行って成功するより強気で行って成功した方がその後の印象はいいだろう?だから俺は最大限に強気で行ったのさ」
(相変わらず変に回る頭だ・・)
「なるほどな。続きを頼む」
「ああ。領主様もラオル様も最初は驚き半分疑い半分という感じだった。そこでその場にいる全員で訓練場に移動した。俺達が訓練場につくと鉄の像のようなものが準備してあった。そして魔剣を構えてラオル様がこう言った。本来の魔剣であるならばあれくらいはバターのように切れる」
(えー俺の見た戦いだと押し勝ってはいたけど魔剣自体は受け止められてたんですけどー)
「そして魔剣を背負うようにもって鉄の像に構えると魔剣の全体がまるで生きる炎のように燃え上がった。そして魔剣を振り下ろすと鉄の像は真っ二つになった。それを見た領主様が驚きながらラオル様にどうだ?と聞くとラオル様は1度魔剣を素振りして炎を消すと、元通りいや以前の力が戻っていますと言ったんだ」
「リーシェさん・・魔剣を直しちゃったんですね・・すごいです・・」
ナコが驚いたような表情で俺の顔も見ている。
カリファーもナコの言葉に頷いていた。
「しかし以前の力っていうのが気になるな」
ちょうど2人がこちらを見ていたので切り出した。
「それは続きになるんだが、俺も気になって聞いたんだ。領主様曰くはあの突然鍛冶の技術が衰退した日を境にラオル様の魔剣フレイノーグの切れ味も炎の勢いもなにもかもが封じられたかのように力を発揮できなくなったらしい」
「またそれか、でもそれって職人とか限定の話じゃなかったのか?」
「そこまではわからない。でも領主様がそう言ったんだ」
(突然の鍛冶技術の衰退と魔剣の弱体が繋がるのか? 魔剣はどうやって作ったかもわからないオーパーツだろ、職人の腕とは遠い話だろうが)
「それでその後は?」
「ああ、そうだな。それで完全に直ったのか信用できてないのか今度は騎士達を呼び出して模擬戦をはじめたんだが結局魔剣は折れたりせずラオル様もご満悦で終わったのだ。そこで俺は言った、依頼は成功ということでよろしいですね? すると領主様がまるで人が変わったかのように笑いだすと、魔剣を直すほどの腕を持つものがいるなら街の商人がいくら文句を言ってもどうにもできないだろう約束通りこれからは私が後ろ盾になろう」
よほどうれしかったのか領主のセリフの最後の方はカリファー立ち上がり握り拳を作って演じてくれた。
「意外と心変わり早いな」
「魔剣直されちゃって笑うしかなかったんだじゃないでしょうか?」
俺とナコはそんな軽口をいいながら店が潰されることがなくなったことに喜んでいた。
「それで? そこからなんで結婚になるんだよ?」
そう聞くとカリファーは座り直して話始めた。
「領主様が後ろ盾になる以上は商会の代表である俺のことを知っておかなくてはならないので身元を明らかにしろ、といわれてな身分証を渡したんだ」
カリファーは身分証を実際に取り出して俺に見せた。
ナコはなにか訳を知っているように頷いていた。
カリファー・オルギリアン 22歳 男
俺はそこだけ読んで首を傾げているとカリファーが話始めた。
「そういえばリーは田舎の出で世間知らずだったな」
「うるせー田舎者でも魔剣を直せるんだぞ」
「すまんすまん、そういう意味じゃないんだが。俺の姓であるオルギリアン家はこの国の名誉上級貴族なんだ」
「貴族は知ってたけどかなりすごいとこなんだなー。あぁなるほど、お勉強は家庭教師がいるからできるけど世間は知らず、メンツを気にしては先を考えず動き、金の使い方がおかしい」
「自覚はしてるが言い過ぎだ!」
カリファーが少しイラッとしたような仕草で俺を見る。
俺はさすがに言い過ぎたかなと思って罪悪感で目を逸らすとその先にブルブルと震えて下を見るナコの姿があった。
「つまりは後ろ盾より強い家の繋がりで商会を保護しようと言う名目で名誉上級貴族様と家の繋がりを持とうってわけか、熱心なの信徒と聞いていたが欲の塊じゃないか」
「俺は何度も家を出た身だと説明したんだがな」
「そう思ってるのはカリファーだけってことだよ。で? 結婚するのか?」
「ああ。この店の、いや俺達の商会の為だ」
「俺はそんな理由でお前に結婚して欲しくはないんだがな。お前すぐ勝手なことするからな」
俺は少し低いトーンで言った。
(犠牲・・と言うのは酷すぎるか。政略結婚なんて元世界でも星の数ほどあった話だ)
すると場の空気を変えるようにカリファーが切り出した。
「それでな――」
「待て!」
そして俺は阻止した。
「なぜだ?」
「そのパターンでこれまでよかったことがあった試しがないからだよ」
ナコもものすごく頷いている。
「ごしゅ・・店長様少し待ってください。私とリーシェさんに心の準備をする時間を下さい」
カリファーは少し困惑しながら「わかった」と言ってお茶のすすった。
「俺はもう大丈夫だ、ナコはどうだ?」
「度合にもよりますが大丈夫です」
俺は心臓を抑え、ナコは祈るポースで備えた。
「よしカリファー、話してくれ」
「この街のすべての武具店と武器職人がカリー商会の傘下に付くことになった、それでナコにはこの店の店長をしてもらいリーには職人たちの工場の管理者をやってもらう」
(あれ? すごい話だけど普通にすごいだけの話じゃないか?)
俺が横目でナコを見るとナコもこちらをちらりと見て首を立てに振っている。
「すごいじゃないかカリファー、大出世――」
「それで街の1等地を買い上げてきたからそこに最大規模の武具店と作ることになった、中古ではなく新品の扱いもできるぞ? この店は改装して事務所兼ナコの家にしようと思う」
俺が横目でナコを見るとナコは真っ青になって遠くを見ている。
俺は冷静になるように自分に言い聞かせてカリファーに聞いた。
「カリファー?今なんて言った?」
「この店は改装して事務所兼ナコの家にし――」
「その前だ」
「なんだ重要な方だぞ? いいかよく聞け? 街の1等地を買い上げてきたからそこに最大規模の武具店と作ることになった」
「その土地と店を立てる金は?」
「店の分では足りなかったからな借りてきた、だが安心しろもう向かうところ敵はいないんだ稼ぎ放題だぞ?」
「またこれかああああああああああああああああああああ」
そしてまたマイナスに戻った。




