俺は探して来いって言ったんだよ!なんで買ってきてんだよ!
「俺は探して来いって言ったんだよ!なんで買ってきてんだよ!」
ナコがビクビクしているがそんなことお構いなしに俺はカリファーに言った。
カリファーはなんでもないような顔で俺の顔みると笑いながら答えた。
「実は探し始めて気付いたんだが給与をいくらにするか、休みを与えるのか、など雇用するにあたって決めていないことが山ほどあることに気付いた」
「確かにそうだったな」と俺は相槌をうった。
「しかし手ぶらで戻るのも恰好つかないと思ったとき閃いたんだ。奴隷なら条件をクリアできると!だから私はすぐ奴隷商に走り、数名の奴隷と面談し、算術ができて容姿も申し分ないこのナコを買ったんだ」
「買ったんだじゃねえよ!まず相談するとかしろ勝手に決めて金使ってんじゃねぇ!」
「安心しろ、俺個人の奴隷として俺のポケットマネーで買ったんだ」
「それお前の金じゃないからな!」
「すぐ返すことになるんだ変わらないさ」
「だからその考えがそもそも―」
言いかけた俺はナコの異変に気付いた。ナコの瞳からはボロボロと涙がこぼれていた。
俺の視線に気付いたナコが震える声で俺に問いかけてくる。
「・・私、来ちゃいけなかったんですか・・?」
「いや、それは・・」
「リー、女を泣かせるな」
「ほとんどお前のせいだよ」
空気の読めないカリファーにイラッとしつつもナコをなだめようと俺と同じ目線になるように屈んだ。
「なぁナコ、俺はナコが来たのがいけないなんて言ってないんだ」
「でも御主人様には私を買ってきたことを怒っていらっしゃいました」
「それはな、カリファーが自分のメンツを守るために俺に相談もなく行動したからだ。ナコが来てくれたことは嬉しく思ってるよ」
「本当・・ですか?」
「あぁお前の御主人が無計画に作った借金をなくすために1日も早く店を開店させなきゃないんだ。ナコ、力を貸してくれるか?」
そういうとナコはまたボロボロと泣きながら「はい、がんばります」と嗚咽交じりに返事をした。
「さて、本当ならば今日はもう休みたいんだが。そんな暇はないようだ」
俺はそう言いながら運ばれてきた武器の山に目をやる。パッと見ただけで頭が痛くなるようなボロボロの武器が3つの山を形成している。
(仕分けが必要だな・・)
「カリファー名誉挽回のチャンスをやる。ナコを連れてナコの必要最低限の服や身の回りの物を買いに行け、そして飯を多めに食わせてやってゆっくり休ませろ」
「そんなことでいいのか?」
「あぁ、不本意だが明日から酷使することになりそうだからな、それと服はいいものを買ってやれよ?ナコは店の顔になるんだからな」
「ナコが店の顔?どういうことだ?」
カリファーは不思議そうな顔でこっちを見てきた。
「簡単な話だ、お前にはクランのツテや商人ギルドに登録しているという点から外回りの仕事をしてもらうことになる。俺は作業場に入り浸ることになるだろう。そうなると店に常時出れるのはナコということになる」
「なるほどわかった。いくぞナコ!今からお前をこのカリー商店の看板娘にふさわしい姿にしてやる」
そういうとカリファーはナコの手を強引に引っ張り店の外に出て行った。
(さてと、やるか・・)
俺は武器の山の前に座るととりあえず剣だけに絞って1つ1つ手に取り、折れてる物、折れてない物に分け始めた。
そして作業始めて1刻たったあたりで重大なことをスルーしていたことに気が付いた。
(カリー商店って言ってなかったか?え?なになに?カリファーとリーシェでカリー?ないないないない、安直過ぎ。なによりどう考えてもカレー屋じゃねぇか)
仕分ける手は止めず、しかし明らかにモチベーションを下げた俺は折れてない物を10本ほど分けると立ち上がり、折れてない物だけを小分けに抱えて作業部屋に運んだ。
(さてと誰もいないしここで門を開こうかな)
運び終えた俺が門を開いて帰ろうとすると、店のスペースと作業部屋をつなげる廊下の奥にある扉が開いたような音が聞こえた。
(裏口?カリファー達だったら表から来るよな。ってことはオープン前に泥棒か?)
俺がそんなことを考えていると、作業部屋の扉が少しづつ開いていく。それと同時に声が聞こえた。知ってる声だ。
「リーシェくんまだお仕事中?」
「リアさん、自然な感じで現れないでもらえますか?」
「まずはリーシェくんの疑問に答えるわ。この建物をカリファーくんが借りたのは偶然よ。私が裏口から来たのは元々私の店とこの店は同じ人が所有する建物だったの、だから裏庭から行き来できるのよ」
聞いてもいないのに答えが返ってきた。もうこの人に関して驚くのは辞めにしよう。
(真後ろどころか敷地内ってレベルじゃねぇかよ)
「それでリーシェくん。まだお仕事なの?」
「いえ、もう切り上げて(家に)帰るところでした」
「そうなの?じゃあ一緒に(私の部屋に)帰りましょう?」
「・・・」
多分かみ合ってないと判断した俺はなにも言わず、店の戸締り確認してロノリアと裏口から出た。
ロノリアの案内で裏庭を歩くと小さな門がありその先にロノリアの店の裏口が見えている。
(文字通りまっすぐ来れるのかよ)
俺とロノリアはそのまま3階の奥、ロノリアの部屋に向かった。
部屋についた俺は門を開こうとするとロノリアに止められた。
「待ってリーシェくん、お話があるの」
「え?家で聞きますよ?」
「あぁ違うのよ、そんなに毎日泊まりに行ったりしないわ」
(じゃあなんでわざわざ迎えにきたんだ・・?)
「レソちゃんから伝言頼まれてたのよ。それとそれに関することなんだけどリーシェくん忘れてそうだったから」
「なんですか?」
「レソちゃんから、ウチにもお菓子、だそうよ。リーシェくん、ヨーちゃんと約束したんでしょ?」
(すっかり忘れてた・・)
「その顔はやっぱり忘れてたのね?カリファーくんの行動力には私も驚いたもの、あれだけいろんなことがあったらしょうがないと思うわ。だけど店長として店の女の子の楽しみを守ってあげる義務があると思ったの、だから迎えに行ったのよ」
「わざわざすいませんでした」
「いいのよ?あの可愛いお菓子は私も楽しみですしね」
(さりげなく且つ大胆に自分をねだってきたな)
「わかりました。明日必ず持ってきますね」
俺はそう言い残して門を開いて家に帰ってすぐ風呂に入り、それからお菓子作りを始めた。
型枠がない上に時間もないので凝った形のものは少なくしてあとは小さめハートや星など簡単な形のものを大量に作る。焼きあがる頃には俺の精根は尽きていて、自室に使っている部屋に行きベットに体を投げ出すとすぐさま寝息を立てはじめた。




