ほんとです、ほんとなんです・・ハッ!夢か・・
「ほんとです、ほんとなんです・・ハッ!夢か・・」
昨晩の悪夢にうなされて目覚めると俺は土下座の姿勢で目を覚ました。
(我ながらすごい寝相だな・・)
汗だくで気持ち悪いほどに肌にまとわりつくパジャマに不快感を感じながら、俺は着替えをもって風呂場へ向かった。
浴槽のお湯を洗濯乾燥機にうつし昨日きた服とパジャマを放り込んでスイッチを押し、俺はシャワーを浴びた。
シャワーから出て朝食の準備をしているとロノリアが起きてきた。
「リーシェくんおはよう」
「リアさんおはようございます」
「目玉焼きとパンでいいですか?」
「ありがとう、いただくわ」
俺とロノリアは他愛もない会話をしながら朝食を済ませた。
「そういえば昨日俺帰りにいなくなったけどそこらへんどうなってるんです?」
家を出ようと玄関にきたときふと疑問になったので聞いてみた。
「あぁヨーちゃんには事前にリーシェくんをあのタイミングで連れていくって言っておいたからカリファーくんには上手く話をしていると思うわ。口裏合わせが必要ならヨーちゃんに聞くといいわ」
「一応なんて言ったかだけ聞いておきたいかな、ヨールさんはどこに?」
「ヨーちゃんの部屋に行けばもういると思うわよ」
「え?こんな時間からいるんですか?」
「彼女毎日宿を深夜から早朝までの一番安い時間だけとってるの、だからほとんどの時間は大体部屋にいるのよ」
「そうなんですか、じゃあちょっと行ってみますね」
話しながら俺達は門を通ってロノリアの部屋にでて、そこから一緒に部屋を出た。ロノリアは一旦家に帰るらしい。
俺は昨日夜に通された2階の階段から3つ目の部屋の扉を叩いた。
「はーい」と返事が聞こえると、すぐ扉が開いた。
「おはようございますヨールさん昨日はありがとうございました、カリファーへの言い訳までお願いしてしまって」
「あらリーシェ様、いいんですよ。店長とレソートちゃんのお願いですもの。あぁそれできたのですね?」
「カリファーにはあまりここに居着いてると知られたくなかったので」
「カリファー様にはリーシェ様は部屋を出たときに腹痛を訴えていたので他のものに医務室に運ばせた、ということになってますわ」
「わかりました。手間をかけさせてしまって申し訳ないです」
「いいえ、その代わりというわけではないのですが、レソートちゃんが自慢している料理の上手な婚約者ってリーシェ様ですよね?」
(・・あいつ何言っちゃってんのーーー)
「婚約者ではないですが、多分それ俺ですね」
「まぁやっぱり。レソートちゃんが言うにはおいしいだけじゃなくて可愛らしいお菓子を作れるとか?」
「あー、少し前にレソートにあげた動物型のお菓子のことだと思います」
(あのクッキーもどきか)
この世界のもので作ったために焼く前に本当にクッキーになるのか?と悩み、とりあえず形が良ければ飾りにくらいなるだろうと動物にかたどったのだ。
(型枠なんてないから自力で仕立てたけど霊格の力なのか思いのほか綺麗にできたやつだな)
「それをぜひ私にもご馳走していただけないでしょうか?」
「それくらいでしたら構いませんよ、明日にでも持ってきます」
「ありがとうございます、楽しみにしてますね」
笑顔のヨールに「それでは」1つ頭をさげて俺はその場を去った。
冒険者ギルドに向かうとすでにカリファーが入口で待っていた。
俺を見つけるなりカリファーが駆け寄ってくる。
「遅いじゃないか」
「約束なんてしてないぞ」
「そうだったな。腹の調子はどうだ?」
「店側の対応のおかげで朝には何ともなくなってた」
「それはよかった。それではまず店舗なのだが―」
「店舗探す前に商業ギルドへの登録とかあるだろ。そもそも俺達には資本金がないだろうが」
「心配するな、商業ギルドには今朝早く登録してきた。店舗もすでに良い場所を借りてある」
(フットワーク軽すぎだろ)
「ってかどっからそんな金でてきた、商業ギルドに登録するだけでもそこそこかかるのにもう店舗を借りただと!?」
「借りたんだ」
「いや店舗を借りたのは聞いた」
「いや違う」
「カリファー、おまえ・・まさか・・」
「借金をしたんだよ!大丈夫、間違いなく儲かるんだすぐ返せるさ」
(あああああああああくそっ!)
「場所はどこだ!案内しろ!すぐ準備するぞ、一刻もはやく開店するんだ」
「なんだ、急にやる気になったな。場所は昨日の店、ロノリアの真後ろだ」
それを聞いた俺は、背中にゾクッとするものを感じた。
(偶然、だよな・・だって昨日話してそのまま俺の家に行ってついさっき別れたんだ偶然だ)
「どうしたまた急に顔色を変えて。また腹か?」
「違う、なんでもない。とにかく行くぞ。店をみて必要なものを揃えないと」
「クランから買い取った中古の武器は今日の夕方に届けてもらえることになってる」
「それももう買い取ったのかよ!どれくらい仕入れたんだ?」
「売れないものを全部だ」
「修理不可能のものまで買ったのか?」
「そのあたりはよくわからんが格安で買えたぞ」
「わかった、お前もう開店までなにもするな。いやそれだとウザったいな。そうだ店員だ、従業員やってくれそうなやつを探してくれ」
「わかった、今日中に探して見せよう。まずは我らの店に向かおう!」
俺は来た道を引き返すようにして駆け出したカリファーを追った。
ロノリアの店を過ぎて次の通りに入った場所にその店はあった。外観は鍛冶屋という感じで建物としても古くないいい物件だ。ロノリアの店の真後ろではあるが通りとしてやや離れているようだった。
「綺麗な店だな・・」
「そうだろう?」
「高そうないい店だ・・」
「確かにそれなりの値段したからな」
「一つ聞いていいか・・?」
「なんだ?」
「お前一体いくら借金したんだ・・?」
「・・本当に聞きたいか?」
「やめておく・・」
中に入り建物を見て回ると、1階は店のスペースと作業部屋、2階には休憩室のような部屋とベットが1つあるだけの仮眠室のような部屋があった。
「商品があればすぐにでも店としてやれそうだな」
「そうだろ?俺もそう思ってここに決めたんだ」
(やるしかないよな)
「さてカリファーは従業員のほうを頼む、店はそこまで広くないし、まずは1人いれば大丈夫だ」
「そうだな、算術ができるのは必須として女のほうが都合がいいな」
「なんでだ?」
「冒険者は男の方が多いからだ、女の店員なら恰好つけたがり値切ったりするやつが減る」
「それは実体験からか?」
「当たり前だ」
「じゃあ頼んだ、夕方武器が届くんだっけか?」
「私がクランの拠点にいって案内する手はずになってる」
「わかったそっちも頼む、俺は布と砥石を買ってきて店の掃除をしておく」
「わかったでは夕方にな!」
そしてその日俺はすぐに買い物にでて、それから店中を掃除した。
最初はめんどくさそうだったが掃除がはじまってみると楽しいもので気付けば夕方になっていた。
俺が2階の掃除をしていると下でガチャガチャと音がした。
(戻ってきたか)
俺が1階に下がると運んできた人たちはもう帰ったようでカリファーと少し汚れた簡素な服を着た背の小さな女の子が店のスペースに立っていた。
「おかえり、もう見つけてきたのか」
俺は関心しながらカリファーを労った。
「私にかかればたやすいことだ。さぁナコ、挨拶だ」
カリファーに促されてナコと呼ばれた少女は1歩前にでた。
「初めまして、ナコといいます。ここの従業員として御主人様に買って頂きました。一生懸命頑張ります、よろしくお願いします」
俺はナコに歩み寄りそっと頭を撫でてからカリファーの方を向き全力で叫んだ。
「奴隷買ってきてんじゃねえええええええええええええええええええええええええええ」
俺の声は店の外まで響き渡った。




