それはあなたが俺を雇ってくれるということで間違いないでしょうか?
「それはあなたが俺を雇ってくれるということで間違いないでしょうか?」
俺は混乱しながら思っていることをなんとか言葉にした。
「雇うんじゃない、一緒にやるんだよ!」
「待て待て待て待て詳しく話そう、まずは飯だ。飯を食べながらそこで詳しく話そう」
「君も乗り気ってことだね、わかった。そこの食堂でいいかい?」
「いやそこは騒がしい、真面目な話をするのに向いていない。どこか落ち着いてる店のほうがいいだろう、どこか知らないか?」
「夕食時ではどこも変わらないだろう、静かに飲める場所なら知ってるんだ。ここで食べてからそこで話そう」
俺は「わかった」と答えるとカリファーと共に食堂のテーブルに座るとカリファーが手慣れたように2人分の注文をして金を払う、無理したと言っても討伐はいつもの倍以上成功したようでこの後の飲み代も出してくれるという。
(朝あった時は金がなくて武器買えないとか騒いでた癖に・・。いやわかったコイツ宵越しの銭を持たないタイプだな)
しばらくして運ばれてきた料理はパンに肉や野菜が挟まれているサンドイッチのようなものだった。
「すまないね、こんな手だから手づかみで食べれるものがよかったんだが付き合わせてしまう形になった。」
「いや奢って貰えて文句言うほど人間腐ってるつもりはないよ」
「そうか、そういえば君は出会った時から全身包帯だがどうしたんだい?」
「それを今更聞くのか?」
「いや色々衝撃的なことが続いたし俺は人を見掛けで判断しないように心掛けているからな」
「いい心掛けだが少しは気にした方がいいな。俺の身体は呪いを受けて人に見せられないほどおぞましいことになってるんだよ」
「呪いか・・。何の呪いかわからないのか?」
「故郷の専門家では解呪できるのかすら検討のつかないものらしい、痛いとか狂しいとかじゃないしもう慣れたから気にするな」
「そうか、わかった。ところでこの後いく店なんだがな、少々値は張るが綺麗どころがいてすごくいいところだ期待しておいてくれ」
「そういう店かよー。商売の話すんだろー。」
「そう言いながらも期待しているだろ?大丈夫だ俺は君の期待に応えるよ」
そんな話をしながら料理を平らげると、カリファーの先導で冒険者ギルドを出て左の道を歩き始めた。
(大丈夫だ、この方向にあの店しかないなんてことはない。きっと他の店だ)
俺の予想というなの願望を無視してカリファーは集合住宅のようなその店の前で足を止める。
「このロノリアという店は、個室で1人女の子がついてくれるがいかがわしい店ではなくよき話相手になってくれる素晴らしい店だ」
「でもなんだか高そうだし、違う店にしないか?安くて静かなバーとか他にあるだろ」
「なんだ怖気づいたのか?今朝俺に話しかけてきたときの強気はどこへ行った?さぁいくぞ!」
カリファーは包帯でない方の手で俺の手首を持つとそのまま抵抗する俺を引きずるように店の中へと連れて行った。
「いらっしゃいませお客様。お二人様のご案内でよろしかったでしょうか」
「それで頼む、大事な話をすることになるから口の堅い子を頼みたいんだが?」
「当店の女の子にはお客様のことを触れ回るような子はございませんが?」
「それは失礼した、ではお任せで頼む」
「かしこまりました、空き部屋の確認をいたしますので少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「かまわないよ」
「では失礼いたします」
レソートはそういうと一度俺に視線を向けてから店の奥に入って行った。
「素晴らしい店だろう?受付嬢であのレベルだ。この店はこの街来てからなんども利用しているがどの部屋に案内されても満足しないということはない」
(何度も利用してるから武器買えなかったんじゃねえかよ!!ここほんとに安くないぞ!)
「そうだ、先に説明しておこう。ここでは女の子にいかがわしいことができないように最初に誓約の毒薬というものを飲むことになるのだが誓約の毒薬は知ってるかな?」
「知ってるよ・・」
「そうか話が早いな。退店の時に自分の担当してくれた部屋の女の子が解毒薬をくれることになってる。だから心配しないで飲むといい」
「わかった・・」
「そう緊張するな!この後の酒がまずくなるぞ」
(緊張じゃねえよ!・・いやある意味緊張か、なにか仕掛けてくるのか。それとも俺が一人になってから仕掛けてくるのか)
レソートが奥から戻ってくる。
「お待たせして大変申し訳ございませんお客様」
「大丈夫だ、それと連れに誓約の毒薬の説明はしておいたよ」
「お客様にお手数をおかけしてしまい申し訳ありません」
「気にしなくてもいい」
「それではこちらになります」
俺達は誓約の毒薬を飲み干すとレソートの先導で2階の階段から3つ目の部屋に案内された。
部屋の前につくと「ごゆっくり」と一言残して、レソートは去って行った。
去り際に俺にだけ聞こえるように、貸し1と呟くと返事を待たずにスタスタと歩いて行った。
(なんてこった!借りを作ってしまったということなのか!もう駄目だ!おしまいだ!!)
俺の心は慟哭していた。とてもすぐに立ち直れそうにない。
そんな俺に気付かずにカリファーは扉をノックする。
中から扉が開くと「どうぞ」という声がした。カリファーは慣れた様子で中に入っていく。
俺もここのままここにいてもどうしようもないと思いカリファーの背中を追った。
中に入るといつも行く部屋と間取りは一緒だが、シンプルなロノリアの部屋と違って女の子らしい置物やそれを飾る棚などが置かれた可愛らしい部屋だった。
そしてその部屋の主は、その可愛らしい部屋からは想像つかない大人っぽい女性だった。
(デカメロン・・・だと・・・)
俺が女性の1部を凝視していると女性は俺達二人の正面になるように移動して一礼した。
「またお会いできて光栄ですわカリファー様、そしてそちらの方は初めましてですね、私はヨールと言います」
「ヨールさん俺もまたあえて嬉しいですよ、ほら君も挨拶した前、そういえば私も名前を知らないのだ」
「初めましてリーシェです、よろしくー」
「なんだ、君はずいぶんと女性のような名前なのだな」
(久々に言われるとくるものがあるな)
「可愛らしいお名前じゃないですか、今夜はよろしくお願いしますね」
そう言うとヨールは3つのグラスに酒を注ぎそれぞれの手元に配った。
「大事なお話をなさるそうですが、まずは今日この出会いに乾杯いたしましょう?」
「それもそうだな」
「そうですね」
「ではグラスを持ってください。いいですか?この良き出会いにカンパーイ」
「「カンパーイ」」
俺は感動していた。
(この店ってちゃんとこういう接客する店だったんだ)
そう思いながら俺は、今日出会ったこの二人と共にグラスを傾けた。




