ほんの一時の穏やか
「ふぅー・・・さてどうしようかな・・」
衛兵の詰所では身元の確認と調書のようなものを取られた。
身元の確認では身分証の提出と包帯を解くように言われたので、素直にしたがった。偽装皮膚により偽装された俺の顔をみた衛兵は青い顔をしていた。
そのまま調書を取る部屋に行くように言われたので従って部屋に向かうと担当の人が大声をあげて腰を抜かした。呪いと説明するとすぐに包帯を巻いてくるようにと言われたので従った。
調書の担当には状況を詳しく聞かれた、あと俺に狙われていると忠告した人物を聞かれたので飲み屋の女と答えると担当の衛兵は「あぁ」と一言つぶやいてそれ以上そのことには触れなかった。
担当は何度か入れ替わりそのたびに同じことを聞かれて、同じことを繰り返し答え続けた。最後の担当との会話が終わり解放されたのは明け方だった。
詰所を出ようとすると硬貨の入った袋を渡された。今まで証拠がなく懸賞もかけられなかったヴェルマ兄弟を潰した功績はなかなかに大きかったようで持たされた袋はなかなかの重量だった。
そして今、俺は開店の準備するためにバタバタと走り回る人達を横目に大通りを歩いていた。
(あー早く寝たい。風呂入りたい。人目のないとこどこかないのかぁ?)
この世界の人はなかなかに早起きなようでどこへ行ってもだれかしらが忙しなくしているようだった。
当然昨日人を殺した裏路地の方面には近づきたくない。
悩みながら、フラフラと歩いていると冒険者ギルドの前に来ていた。
冒険者ギルドから出て左にまっすぐ、今の俺からみて右にまっすぐいけばもう一つの俺が門を開くのに使った場所ロノリアという店がある。
その店は日が落ちてからじゃないと受付が店に立たない、俺の中ではすでに常識的なことだ。
行っても無駄だろうな。
そう思いながら店のある方と逆の通りに向きを変えて歩き出す。だがその足は止めらてしまう、向きを変えた先の正面にいる妖しい雰囲気で辺りを圧倒しているとても綺麗な女性と目があったから。
女性はこちらに歩み寄ってきて一言。
「報酬を渡しにきたのだけれど、辛そうな顔をしているわね。戦いのあと詰所で何度も同じことを聞かれて先ほど解放されて眠くて眠くて人気のない場所を探してる、そんな顔をしているわ」
「なんだってするって約束。有効ですか?」
「ええもちろん」
「人目に付かない場所に行きたいんです、連れて行ってください」
「では私の部屋へどうぞ」
そういうと女性は俺を先導するように歩き出し、俺はそれを追いかけて行った。
集合住宅のような建物につくと入口である狭い空間通り過ぎ3階の奥の部屋の前にたどり着いた。
女性が扉を開くといそいそと部屋の中に入って行った。不思議に思いながら後を追いかけて俺も中に入る。
「リーシェくん、おかえりなさい」
「リアさん、ただいま疲れたから俺もう風呂はいって寝たいよ」
「その方がいいわね。あなたが起きてくるまで私はこの部屋にいるわ。夜になっても誰も通さないでずっとここにいる。」
「なんか待たせてるみたいで悪いなぁ。だったらさぁ、うちくる?」
「ええお呼ばれさせていただくわ」
そういうやり取りをして俺とロノリアは異空間ハウスに入る。
ロノリアをリビングにおいて俺は風呂に入った。
風呂からでてそのままベットに向かおうとするとロノリアが部屋までついてきた。
ベットに寝そべる俺をベットの隣で椅子に座るロノリアがじっと見ていた。
優しい表情だった。なにも言わないでただただ傍にいるだけ。それがどうしようもなく嬉しく感じた。
だからなにもかも忘れて目を閉じることができた。




