0:24 決着、そして⋯⋯
予約投稿をミスしてしまいこの時間帯になってしまいましたが次からは金曜日の7:00です。
それともう1話投稿します
「今のところは大丈夫そうですね。やはり、他の魔獣は、あのヘルハウンドを警戒してるのでしょうか?」
「はい、たぶんそうだと思います。⋯⋯っ、伏せてください‼︎」
ユーグが、クレアの言葉に同意し、ヘルハウンド以外の魔獣が襲ってくる事の警戒を解こうとすると、急激に背筋に悪寒が走った。その感覚に、促されるまま正面を見ると、ヘルハウンドの顎門から火の粉が溢れ出し、今にも放とうとしているのが目に移った。
反射的にクレアを引き寄せて抱きしめ、調合しているセリナを守るようにその身を盾とした。
刹那、そのすぐ右側を灼熱の火炎が過ぎ去った。ユーグは、空気が焼け、散りつくような痛みを皮膚に与えてきたが無視し、その光景を目に焼き付ける。
目に映るのは、灰、灰、灰。全てが焼け、焼失し辺り一面が焼け野原になっていた。所々から黒煙が立ちのぼり、遠目からでも分かる程だった。
メルドの森は既に、原型を留めていなかった。ヘルハウンドの後方の木々は切り倒され、もはや隠れるところは存在せず、前方は、灰とかした部分を除く3分の2しか木々は存在しない。そして、再びヘルハウンドはその顎門に炎を貯め始めた。
のっぴきならないこの状況。ここでユーグの撤退という選択肢は完全に潰えた。
逃げ場がなく、このままでは火炎の餌食になってしまう。そうなる前に奇襲をかけなければ勝機はない。
「くっ、まだかセリナ⁉︎」
「あともう少し! ⋯⋯よし出来た‼︎ 」
「投げろセリナッ」
投げられた薬を走りながら手に掴み取り、飲み干した。セリナ達から火炎流の狙いを外すために側面から飛び出した。
最大の障害を排除しようと、ヘルハウンドはその顎門をユーグに向け、それまで憤怒に支配されていた表情に微かに嗜虐的な笑みを浮かべ、火炎流を放った。
火炎流を放ったヘルハウンドは、勝利を確信していた。ありとあらゆる生き物を燃やし尽くしてきたこの炎の前では、たいした物でない鎧や身体強化の術は無力であると知っていたからである。火炎流による硬直が解けたら残りの敵を殲滅しようと考えいた。
敵は愚かにも火炎流を避けようともせず、そのまま炎の濁流えと呑み込まれていった。硬直を強いられる中、ヘルハウンドの思考は、残ったクレアとセリナ達を如何にして殺すかという事に傾いていた。
その為、火炎流を突破して攻撃を繰り出して来るユーグに直ちに反応出来なかった。
一方で、セリナから受け取った薬でなんとか耐えきったユーグは、その勢いのまま攻撃を繰り出した。
「うぉおおおおお」
ガッキン
しかし、その硬質な音と共に、渾身の刺突は魔力障壁に弾かれ、コアまで届かなかった。
「まだだぁぁ」
《ここで踏ん張られなければ、次はセリナ達がやられる。そんな事はさせない、俺は男として、騎士として二人を守るんだ》
その言葉と決意に、精神と肉体は時間から切り離され、加速する。それは、世界の動きが緩慢にし、1秒を10秒に、一撃を三連撃に変化させる。
「まただ、これはなんだ⁉︎ クレアさんの精霊術の効果はとっくに切れているはずなのに⋯⋯いや、この際何でもいい、大切な人を守れるのなら」
再び、刺突を繰り出した。
一撃目が魔力障壁を震わし、
「くっ、まだだもう一度」
二撃目が、ひび割れを起こし、
「よし、これでどうだぁぁぁぁ」
三撃目がそれを突破し、コアを破壊した。
その瞬間、身体の加速は終了し、世界と同調し始める。
「グッガ、ガァァァァァ」
コアを破壊されたヘルハウンドは、断末魔の叫びを上げ、崩れ落ちた。それを見届け、気力や体力共に使い果たしたユーグの意識は暗転した。
こうして、長きに渡る戦いはここに終結したのであった。




