0:19 薬草の在庫
ジニーから話を聞いた翌日の朝。
昨晩、ジニーの話が終わった後も話が弾み、サーラが働く医院と薬師の仕事を見学させてもらう事になったクレア達はサーラが、働く医院へと来ていた。
医院は、孤児院からは近くに有り、徒歩で五分もかからない場所にある。
その為、サーラは、医院の仕事がひと段落着くと、孤児院に様子を見にいく。
一通り見学が、終わり休憩所で休んだいると、サーラの同僚の女の人がサーラを訪ねてきた。
「サーラ、ちょっといい?」
「どうしたの? ナタリア」
「⋯⋯今、倉庫にある薬草の在庫確認をして行きたとこなんだけど、シラン草が無くなってるのよ」
「えっ、シラン草は月の初めにかなりの量を仕入れたから、まだ、かなりあるはずでしょ⁉︎」
「えぇ、そのはずなんだけど⋯⋯」
二人は、しばらく黙り込み無くなった理由を考えているとナタリアが、信じられない事を切り出した。
「誰かが盗んだ⋯⋯とか?」
「待って、そんなはずはないわ。あの薬草は、単体では何にも役に立たたない代物よ。あっ⋯⋯」
「どうしたの? 何か思い出したようだけど」
「ほら、あれよ。10日程前から3日ほど連日で大量の重度の火傷を負った人が担ぎ込まれて来た時があったでしょ」
「あ~あ、あの時の事でしょう。なんでも黒いドラゴンが出たとかで、傭兵や衛兵隊の人がかなりの損害を出しながらもどうにか討伐出来たっていう」
ナタリアがそう言う事件は、今月の初旬に起きたものである。
ここ、ガンガルディアでは、最西部にドレッドノート火山帯が存在し、それを囲むように深緑の樹々が密集している森がある。森を抜ければ大草原が広がっている。また、火山帯から大草原超え、さらに大海原まで通ずる巨大な運河やそれから派生した小川がある。
その森には、多種多様の魔獣が生息している。火山地帯に生息しているためか、炎に関係する攻撃をする他、耐火性のある、強固な分厚い皮膚を持つ事が特徴的である。
しかし、黒色の皮膚を持つ魔獣は有史以来観測された事がなく、異常事態とされ、その黒色のドラゴンを討伐する為に討伐隊が編成された。
だがしかし、通常のドラゴンに比べ、かつてないほどに機敏に宙を舞い、此れまでとは格段に威力が違う爪やドラゴンブレスーーそう呼ばれる、口から吐き出される火炎流ーーに討伐隊は大打撃を受け、大勢の負傷者(主に火傷を負った者が多かった)を出しながらもなんとか撃退したという事件のことだった。
「そう、それよ! その時に大量に消費しちゃったのよ。⋯⋯最近すごく忙しいかったからすっかり忘れていたわ」
「私もよ。⋯⋯でも、どうしましょう?」
「そうね、この時期では、もうこの近くには自生してないわ。⋯⋯あるとしたら、メルドの森だけど、彼処は、獰猛な魔獣が出るから危ないし、仕事を依頼にするとしても、結構高くつくし⋯⋯本当にどうすればいいのかしら?」
ユーグは、そんなサーラ達に対し、こう提案した。
「では、自分が採ってこようか?」
「えっ、いいの⁉︎ ⋯⋯でも、クレアちゃんの護衛はどうするの?」
「それは、大丈夫だよ。クレアさんと話し合って一緒に行くことになったから」
「そ、それならお願いしちゃうかしら。……あっ、少し待っててちょうだい、今、他に採ってきて欲しい物があるか倉庫に行って見てくるから」
そう言い残すと、休憩所から出て行ってしまった。しばらくすると、紙切れをその手に持ちながら部屋へと入ってきた。そして、ユーグにその紙切れを渡し、続けて言った。
「ここに書いてある薬草を記入量採ってきて欲しいの」
「いいよ。ついでに採ってくるよ」
こうしてユーグとサーラはメルドの森へと薬草を採りに向かうのであった。




