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魔王と元始の罪  作者: 長瀬 優太
全ての始まり
17/25

0:17 昔話⑧ 遭遇戦 終結

一方、ジニーは、暗闇の中を猫の様に駆け巡り、暗殺者の様に次々と盗賊達を屠っていく。最初に比べ、少数になってしまった盗賊達。

盗賊達が暗闇で周りが見えなくて動けないのに対して、ジニーが俊敏に動き回れるのは、自身に流れる血のお陰である。ジニーは一見、ただの人間族に見えるが、実は、混血であり、猫人族(ガート)の血が4分の1ほど流れている。しかし、人間族の血の方が濃い為、表立って外見に現れない。が、マタタビ酒などにその影響が出ている。


その血が持つ能力、つまり、猫人族(ガート)が持つ能力は基本的には使えないが、ある薬を用いる事で、能力を一時的に発現させる事が出来る。ジニーは、この薬を闇市で手に入れており、盗賊達の隙を突き、服用していた。


仲間が次々とやられる中、盗賊の真の頭領だったジェルマンは、唯一、月光が雲の隙間から漏れ出た場所にフランツとオズボーンと共に、互いの背後を庇い合いながら陣取っている。 暗闇に乗じて暗殺を行うジニーにとってその場所は、修羅場である。出て行けば即座に捕捉され、殺されるだろう。


すると、ジェルマンが仲間のオズボーンに小声で指示を出した。


「おい、オズボーン。あの女を連れてこい」


「分かったぜ」


漆黒の闇に光る金色の瞳。その瞳が写すのは、無様に、辺りを警戒するl盗賊(獲物)達。

油断するその背後から斬りかかり、喉などの急所を確実に射抜き、次々と倒していく。


すると、それまでにいなかった第三者の声が闇夜を切り裂いた。


「ちょっと、何するんですかっ⁉︎ オズボーンさん」


「いいから、来いってんだよ」


「いや、離して。……どうしちゃたんですか?」


「うるせぇ、黙ってろ。これ以上うだうだ抜かすんならーー」


そう言うとナイフを取り出し、サーラを近くの木に押し付け、ガッとナイフを木に突き立てた。


「その綺麗な顔に一生もんの傷が付くことなんぜ」


恐怖で何も言えないサーラを見やるとニヤリと野蛮に笑い、ジェルマンの元に引っ張っていった。


彼女がこの場にやってきた事が因果かのごとく、急速に月を覆っていた雲が晴れていく。露わになる戦場、そこにはジニーに倒された盗賊達の死体が血を撒き散らしながら倒れている。その光景にサーラは卒倒しかけるが、喉元に突きつけられたナイフによる痛みで意識を取り戻した。


オズボーンは、ジェルマンの側に、サーラの喉元にナイフを突きつけたまま並び立ち、月の光が当たらない周囲の木々に向かって声を張り上げた。


「おい、見てるんだろ! 出てこないとこいつを殺すぞ」


「ダメ、出てこないで。 殺されちゃう」


「うるせえ、静かにしてろっ」


それでも、サーラは自身の安全を(かえり)みず、ジニーに姿を見せてはいけないと警告した。


「こ、この野郎っ」


言うことを聞かないサーラに逆上したオズボーンは思わすナイフを振り上げ、サーラを刺そうとした。

それを、寸前の所でジェルマンが腕を掴み、止めた。


「やめろ。大事な人質だ。それに、ほら……」


そう言って顎を前にしゃくる。

オズボーンが視線を元に戻し、前を向くと、ちょうどオズボーン達がいる真向かいの茂みからジニーが出てきた。

姿を表したジニーに対し、オズボーンは武装を解く様に命令した。


「おい、持ってる物全部そこに投げ捨てろ」


サーラを人質に取られているジニーは仕方なくそれに従い、投擲用のナイフや主武器である長剣を手放し、さらに、闇市で購入し、所持していた武具を捨てた。

すると、フランツとオズボーンがジニーに近づいていった。


「いいか、そこを動くなよ。動いたらお前の大事な女が死ぬことになるぜ」


オズボーンがそう言うとフランツがおもむろにジニーに近づき、l水月(みぞおち)を強打した。余りの衝撃に体がくの字に折れ、地面に膝をついてしまう。


「これから、お前を、散々俺たちを苦しめてくれたお礼にボコボコにしてから殺してやる」


とフランツが言い放ち、ジニーの脇腹目掛けて左足を蹴り上げ、振り上げた足を、仰向けさせられたジニーの胸部に振り落とした。

さらにオズボーンが地面に横たわるジニーの胸ぐらを掴み、持ち上げ、その頬を太くたくましい腕で殴り飛ばした。

それ以降もジニーに暴力を振るった。


しかし、ジニーはやり返しもせず、ただひたすらに耐え続けていた。まるで何かを待つ様に。だが、その光景に我慢が出来なった者がいた。そうサーラだ。

ジェルマンに向かって悲痛な叫び声でジェルマンに訴えた。


「ジェルマンさん、私がなんでもするから、あの二人を止めて。……これ以上したら、ジニーが死んじゃう」


「ほう、今なんでもするって言ったか? ならーー」


「そ、そいつに手を……出すな。お前が気安く触っていい奴じぁ……ねえぇ……」


散々、痛めつけられて地面に横たわるジニーが呻きながら、しかしはっきりと言った。


「でも、貴方がこのままじぁ死んじゃうっ」


「大……丈夫だ。それに時が来れば……こっちが……有利……になる」


「はっ、そんなボロボロの状態で今更何が出来る? お前はここで殺されるんだよ」


「……」


「何か言ったらどうなんだよ、おい」


「……」


「ちっ……おい、もういい。さっさと始末しろ」


指示を受けたフランツが鞘から刃渡りの大きい剣を取り出すと地面に伏すジニーの傍に立ち、その大きな剣を振りかぶった。


「やめてぇぇぇぇぇ」


しかし、サーラの制止の声も虚しく、無情にも剣はジニーの首目掛けて振り落とされた。

だが、振り落とされた剣は、狙い通りの場所に行かず、脇にそれ、首の側にドカッと音を立ててめり込んだ。その様子にオズボーンが失笑しながらフランツに言った。


「おいおい、どうした? 盲目したか?」


「うるせぇ、ちっと手元が狂っただけだっての」


「なら、次は外すなよ」


「わかってるよ」


再び、ジニーの首を切り落とそうとしたが、今度は、先程よりもずいぶんと離れた場所に剣が刺さった。またしても外したフランツを憐憫の目で見つめるオズボーン。

その視線を受けながら再度、フランツは、息を荒くしながら振りかぶるが外す。


「本当にどうした? やけに苦しそうだな」


そう言いながら、顔を覗き込んだ。


ここでオズボーンは、フランツの様子が変な事に気がついた。顔を真っ赤にし、呼吸も荒く、さらには、嘔吐までし始めたからだ。


「おい、大丈夫か?」


ジェルマンとフランツへは、オズボーンに近寄ろうと足を踏み出した。しかし、ガクンと力が抜け、地面に倒れこんでしまった。四肢に力を込め起き上がろうとするが、身体が全く言うことを聞かず、 地面に伏してしまう。


「ぐぅ、な、なんだ? 体が思う様に動かない」


すると、彼らの耳朶を震わす、声が聞こえた。それは、それまで同じく地面に這いつくばっていたジニーの声だった。


「やっと……効いて……きたか」


その声音はそれまでの途切れ途切れの声をしていた。


「どういうことだ⁉︎ これはお前の仕業か?……俺たちに何をした?」


「俺はな……特異体質で……あらゆる種類の……酒を創り……出せるんだよ。その酒を……気化させて、周りに……漂わせておいた。それを……お前らは、知らずのうち……に取り込んで……いたんだ。今のお前らは、酩酊状態に……ある」


「そんな、馬鹿な! l酒の特有(アルコール)の臭いはしなかったし、それに、体が上手く動かないだけで、はっきりと、話せる」


「言ったろ……俺は自由に……酒を……創れるって。お前らに……嗅がせたの……は、トルチニア産の……バッカ酒をベースに……した酒だ。こいつは、無臭……且つゆっくりと確実に……脳の運動神経を司る部分を……麻痺させる効果を持つ……物だ。……効き始めるまで……時間が……かかるのが……難点たけどな」


「クソ、嵌められた。動け、俺の体」


「無駄……だ。そこで……大人しく……して……ろ」


そして、ジニーは、震える手で懐から頑丈に作られた、小指ぐらいの小さな小瓶を取り出すと一気に呷った。しばらくすると、それまで痛みで言葉を話すのもままらなかったジニーが、立ち上がり、サーラの元へ歩き出した。


次々と変化する状況に呆然としてしまうサーラだったが、やってくるジニーを認識すると駆け寄りその体を精一杯抱きしめた。


「本当に、本当に良かった。貴方が無事で……」


「心配かけて済まなかった」


「でも、大丈夫? さっきまで痛みで動けなかった様だけど……」


「大丈夫じゃあないが、とりあえずは大丈夫だ。さっき呷った酒は、痛覚を麻痺させる酒だからな……さてと……l特異体質(秘密)を教えてしまったし、こいつらを始末しなきゃな」


そう言いながら、フランツが落とした大剣を両手で拾い上げると、上段に構えた。

そのジニーの背中に飛びつき、制止の声を上げるサーラ。


「やめて、お願い。貴方に守ってもらっている状況で、こんなことを言える立場では無いのはわかってるけど……それでも、もう私は、貴方が誰かを傷つけるのは見たくないの」


その涙声で訴えてくるサーラを見やると溜息を吐き、


「分かった。口封じはやめるよ。その代わり、記憶を無くして貰う」


そう言うと、衣服の一部を剥ぎ取り、ジェルマン、フランツ、オズボーンの口にそれぞれ当てた。


「今、この布には記憶中枢に強く作用するオリジナルの酒を染み込ませた。これでここ1週間の記憶は思い出せなくなるはずだ……急いでここから離れるぞ。誰かに見られたらマズイからな」


そう零すと、サーラを抱き抱え、荷馬車の御者台に飛び乗ると、急いで馬をガンガルディアに向けて走らせた。



次回、ユーグとクレアの話になります。

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