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エルドリア国物語 ― 帰れなかった騎士と、託された命 ―  (皇女の帰還ー約束の耳飾りー 外伝)  作者: 鶴見 日向子


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9/24

芽生えた想い

体は大きくても、まだちょっとは甘えたい年頃だったりします・・・


※本作は『皇女の帰還―約束の耳飾り―』の前日譚にあたる外伝です。

※本編をお読みになってからの閲覧をおすすめいたします。

※本編よりも重い描写やつらい場面が含まれる場合があります。該当する話には、前書きにて個別に注意書きを記載いたします。

フェルネスは十歳になった。


背はさらに伸び、すでに騎士の標準を超えている。


野生の飛行魔獣を捕らえ、それを自在に操れるまでになっていた。


そして気が向くと、姉のいるアストリア王国の公爵邸を訪れるようになっていた。


ある日――


公爵邸の庭に降り立つと、ひとりの少女が近づいてきた。


「あなた、また来たの?」


カトリーナだった。


公爵夫人にどことなく似た顔立ち。


背は平均的だが、ふっくらとした体つきで、どこか大人びた雰囲気を持っている。


しかし、口調はまだ子供らしかった。


「すみません……つい。ロザーリア姉上の顔を見たくて」


フェルネスは頭をかいた。


「うふふ。ロザーリアお姉さま、本当に素敵ですものね。

あこがれちゃう。気持ちはわかるわ」

カトリーナはにっこりと笑う。


「あなた、お名前は?」


「フェルネスです」


「私はカトリーナ。よろしくね」


フェルネスは少し戸惑った。


同じ年頃の女の子と話すのは、これが初めてだった。


「あなた、背が高いけど……いくつ?」


「十歳になったばかりです」


「ええええ!? 私より三歳も年下なの!?」

カトリーナは目を丸くする。


「じゃあ私がお姉さんね。ロザーリアお姉さまの弟なら、私の弟でもあるわ。“姉上”って呼んで」


「いやです」

フェルネスは即座に言い切った。


「私の姉上は、ロザーリア姉上だけです」


「あはは!」

カトリーナは楽しそうに笑った。


「気に入ったわ。言いなりになる男の子より、ずっといいわね。お友達になりましょう」

そう言って、いきなりフェルネスの手を取る。


その瞬間――


フェルネスの胸に、今まで感じたことのない感覚が生まれた。


(……なんだ、これは)


心臓が、妙に騒がしい。


「フェルネス、来ていたの?」

屋敷の中からロザーリアが顔を出した。


「二人とも中に入りなさい」


フェルネスとカトリーナは顔を見合わせ、そのまま屋敷の中へ入った。


室内でも二人の会話は尽きることがなかった。


そんな様子を、屋敷の者たちは温かく見守っていた。


特に公爵夫人は、優しい目で二人を見ていた。


「……あの子に、お友達ができたのね。うれしいわ」


「ええ。あの子、同じ年頃の子との交流が少ないものですから」

ロザーリアも微笑む。


そこへエリアスが現れた。


「あら、お兄様。今日もお部屋にこもっていたの?」

カトリーナがいたずらっぽく言う。


「仕事だ」

エリアスはぶっきらぼうに答えた。


「ふーん」

カトリーナはあっさり流す。


「お兄様って背は高いのに、騎士になる気もないし、飛行魔獣にも乗らないのよね」


「私は高いところが苦手だ」


「ロザーリアお姉さまとは正反対ね」


そして、にやりと笑う。

「お姉さま、兄のどこがよくて結婚したの?」


エリアスは言葉に詰まった。


フェルネスも気になって、じっとエリアスを見る。


立派な体躯、整った顔立ち。


なぜこの人が戦わず、内政に専念しているのか――理解しきれていなかった。


「そこは大人の領域よ」

ロザーリアが軽く笑う。


「いずれわかる時が来るわ。今はこれでいいの」


(……姉上は、もう――)

クラウスのことは、吹っ切れているのだろうか。


「フェルネス、そろそろ帰りなさい。屋敷の者が心配するわ」


「はい」


フェルネスは立ち上がる。


「今日はお話できてうれしかった」

カトリーナが少し照れたように言う。


「ずっと話しかけたかったんだけど、勇気が出なくて……」


「こちらこそ、ありがとうございました」

フェルネスは答えた。


「また来たら、話してくれますか?」


「もちろん!」

カトリーナがぱっと笑顔になる。


「楽しみにしてる!」


「では、また」

フェルネスは屋敷を後にした。


――だが。


いつもは姉のことでいっぱいだった頭の中に、


なぜかカトリーナの姿が残っていた。


読んでいただき、ありがとうございます

続きも読んでいただけると幸いです

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