知ってしまった真実
読む人によっては「えっ?」って思うかもしれない場面がでてきます
※本作は『皇女の帰還―約束の耳飾り―』の前日譚にあたる外伝です。
※本編をお読みになってからの閲覧をおすすめいたします。
※本編よりも重い描写やつらい場面が含まれる場合があります。該当する話には、前書きにて個別に注意書きを記載いたします。
一週間後――
フェルネスは再び公爵邸を訪れた。
「ねえねえ、行ってみたいところがあるの。一緒に行かない?」
カトリーナが駆け寄ってくる。
瞳がきらきらと輝いていた。
「どこですか? 可能なら、飛行魔獣でお連れしますが」
「それが無理なのよ」
カトリーナは首を振る。
「林の中にあって、降りる場所がないの。馬か徒歩じゃないと行けないのよ」
「……乗馬は?」
「できるわよ。あなたは?」
「問題ありません」
「じゃあ決まりね!」
二人は公爵夫人に許可をもらい、馬で林の中へ向かった。
やがて見えてきたのは、煉瓦造りの小さな建物だった。
「ここ、公爵家の別邸なの。お兄様とロザーリアお姉さまがよく来ているの」
フェルネスの表情が曇る。
「……お二人だけなら、邪魔はしない方がよいのでは」
胸の奥に、言いようのない違和感があった。
「大丈夫よ。今日はお針子も来てるって聞いたもの」
カトリーナはうっとりとした顔になる。
「ドレスの仕立てを見てみたくて」
(……姉上のドレス姿……)
フェルネスは、少し複雑な気持ちになる。
「そんなに見たいものですか?」
「弟のくせに失礼ね!」
カトリーナは頬をふくらませる。
「いいわよ、私だけ入るから」
そのまま扉を叩く。
「今、少々取り込み中でございます」
侍女が困ったように言う。
「少し待っていただければ――」
「いいじゃない、入れて」
カトリーナはそのまま中へ入ってしまった。
「カトリーナ殿、いけません!」
フェルネスは慌てて後を追う。
――そして。
一つの扉の前で、カトリーナは迷いなくそれを開けた。
「やっぱりね」
中を覗き込み、はっきりと言う。
「……お兄様」
フェルネスも思わず視線を向ける。
そこにいたのは――
ドレスをまとった、長身の“女性”が二人。
一人はロザーリア。
もう一人は――
「……見られてしまったのね」
低い声。
銀の髪、紫の瞳。
エリアスだった。
フェルネスの思考が止まる。
理解が追いつかない。
ただ――
強い違和感と、拒否感に近い感覚が胸に広がっていく。
「……フェルネス?」
ロザーリアが気づく。
フェルネスは何も答えられなかった。
視界が揺れる。
そのまま――意識を失った。
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――エリアスの告白――
気がつくと、フェルネスはベッドに横たわっていた。
「気がついた?」
ロザーリアが額に布を当てている。
「……姉上……」
気分の悪さがこみ上げ、思わず嘔吐する。
「大丈夫よ、無理しないで」
ロザーリアが背をさする。
「……あれくらいで倒れるなんて」
カトリーナが小さく言う。
フェルネスは苦しそうに息を整えながら尋ねた。
「……どうして、お二人は平気なのですか……?」
ロザーリアは静かに答える。
「……人にはね、自分の在り方を否定され続ける苦しさがあるの」
少し言葉を選びながら続ける。
「心と体が一致しないって……とてもつらいことよ」
フェルネスは戸惑う。
「でも……」
言葉が出ない。
ロザーリアは視線を合わせる。
「すぐに理解しなくてもいいわ」
「でも……見てしまった以上、少しずつ考えてみて」
「それから、これは絶対に外で話してはいけないことよ」
フェルネスはしばらく黙り込んだ後、うなずいた。
「……約束します」
その声は、まだ揺れていた。
そこへエリアスが現れる。
「……すまなかった」
いつもの姿に戻っている。
「驚かせるつもりはなかった」
カトリーナが口を開く。
「……ごめんなさい。勝手に入ってしまって」
エリアスは小さく首を振った。
「いや……私の油断だ」
少し間を置いて、フェルネスに向き直る。
「無理に理解しようとしなくていい」
「ただ――」
「人には、他人からは見えない事情がある」
静かに言った。
フェルネスはその言葉を受け止める。
「……はい」
「まだ、わからないことだらけですが……」
「少しずつ、学んでいきます」
エリアスはわずかに微笑んだ。
「それでいい」
そして、そっとフェルネスの頭を撫でる。
「十歳だ。知らないことがあって当然だ」
フェルネスは目を伏せる。
「……こんな私でも、嫌わないでいてくれるか?」
エリアスの問いに、少し考えて――
フェルネスはうなずいた。
「……はい」
「こうして普通に接してくださるなら……大丈夫です」
エリアスは苦笑した。
この後、場面が急激に深刻になります
ご注意ください
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