表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルドリア国物語 ― 帰れなかった騎士と、託された命 ―  (皇女の帰還ー約束の耳飾りー 外伝)  作者: 鶴見 日向子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/24

奪われたもの

この回は間接的ですが、刺激が強いのでご注意ください


※本作は『皇女の帰還―約束の耳飾り―』の前日譚にあたる外伝です。

※本編をお読みになってからの閲覧をおすすめいたします。

※本編よりも重い描写やつらい場面が含まれる場合があります。該当する話には、前書きにて個別に注意書きを記載いたします。

ある日のことだった。


その日、エリアスは城で執務にあたり、ロザーリアも騎士の訓練に参加していた。


「国王陛下が、カトリーナをお呼びだそうだ」

公爵が静かに告げる。


「……カトリーナはまだ十四歳になったばかりです。お話し相手など務まりますでしょうか」

夫人は険しい顔で夫を見る。


「唯一の孫娘だから、会いたいそうだ」


「……そう、ですか」


夫人の胸に、言いようのない不安が広がる。


――あの夜。


「お父様が気持ち悪い」

そう言ったエリーナの言葉が、頭から離れなかった。


だが、すでに王宮からの迎えの馬車が門前に着いていた。


「断りを入れましょう」


夫人が言いかけた、その時。


「大丈夫です、お母さま」


カトリーナが明るく言った。

「私、行きます。本来ならお会いできる方ではありませんし……それに」


少しだけ笑う。

「お兄様やロザーリアお姉さまのお仕事姿も見られるかもしれませんし」


公爵は一瞬ためらい――

「……くれぐれも失礼のないように」


そう言うしかなかった。


「はい。行ってまいります」


――この瞬間を。


夫人は、後に何度も思い返すことになる。

________________________________________


空が夕焼けから、ゆっくりと闇に沈み始めていた。


「……遅いわ」

夫人は玄関の前を行き来していた。


「様子を見に行きましょうか」

執務から戻ったエリアスが言う。


「今日、陛下は公務に出ておられませんでした。まさかカトリーナを呼んでいたとは……」

ロザーリアも顔色が優れない。


「私が空から様子を見てきます。何かあったのかもしれません」

そう言って手を上げかけた、その時――


一台の黒塗りの馬車が、門前に止まった。


「……あれか」


エリアスが眉をひそめる。

「だが、なぜ黒塗りの馬車だ……?」


夫人の鼓動が、激しくなる。

息が詰まるようだった。


馬車の扉が開く。


最初に降りてきたのは、王宮付きの女官。


そして――

カトリーナが、女性騎士に抱えられて降ろされた。


目は虚ろで、焦点が合っていない。


毛布に包まれていた。


「カトリーナちゃん!」


ロザーリアが駆け寄り、抱き取る。


呼びかけても、反応はない。


「……何があった」


エリアスが女官に詰め寄る。


女官は顔を伏せたまま答えた。

「医師の診察を受けておりました……」


「医師? 怪我でもしたのか?」

女官は、わずかに震えた。


そして、顔を上げる。


決意したように。

「……陛下が、手をお出しになりました」


その言葉に――


空気が凍りついた。


「……は?」


エリアスの声が低くなる。

「この子は……まだ十四だぞ」


「……事実でございます」


女官の目にも涙が滲んでいた。


「これ以上は……申し上げられません」


そう言って深く頭を下げると、馬車に乗り込み去っていった。


夫人はその場に崩れ落ちた。


「母上!」

エリアスが支える。


「中へ……とにかく中へ」

ロザーリアが言う。


「医師を呼びましょう」

________________________________________


診察に来た医師は、すでにカトリーナを診た者だった。


「……強い精神的衝撃により、意識が混濁しております」


重い声で言う。

「回復するかどうかは……わかりません」


エリアスの拳が震える。


「そんな話で済むか……!」

机を叩いた。

________________________________________


公爵が戻ってきたのは、深夜だった。


「父上!」


エリアスが声を荒げる。


「どういうことですか! 母上は倒れ、カトリーナは……!」


公爵はゆっくりと外套を脱ぎ、ソファに座る。


「……決断が遅れた」

静かに言った。


「本日、家臣全員の総意で、陛下の廃位が決定した」


「明日、正式に発表される。兄上が王位に就く」


エリアスは息を呑む。

「……なぜ、もっと早く」


「……私の責任だ」


公爵は目を閉じる。

「まさか……孫娘に手を出すとは」


夫人が起き出し、その場に崩れ落ちる。

「私が止めるべきでした……!」


ロザーリアが駆け寄り、抱きしめる。

「お義母さま……」


声が震えていた。

「……命は、奪われていません」


必死に言葉を紡ぐ。

「カトリーナちゃんは、強い子です」


涙がこぼれる。

「時間はかかっても……きっと、戻ってきます」


自分に言い聞かせるように。


「今は……どうすれば回復するのか、それを考えましょう」

ロザーリアも、涙を止めることができなかった。


続きます・・・

書いていて、すごくつらかった場面です


お読みいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ