秘密の約束
いよいよ「初夜」のはずですが・・・・
※本作は『皇女の帰還―約束の耳飾り―』の前日譚にあたる外伝です。
※本編をお読みになってからの閲覧をおすすめいたします。
※本編よりも重い描写やつらい場面が含まれる場合があります。該当する話には、前書きにて個別に注意書きを記載いたします。
いよいよ「初夜」をむかえた
エリアスはベッドの上に座り、静かに口を開いた。
「……ロザーリア、先に話しておきたいことがあるの」
その声は、どこか覚悟を決めたものだった。
「私は――心が女性で、体が男なの」
ロザーリアは目を瞬かせる。
「だから……その……夫婦としての行為は、できないの」
エリアスは視線を落とし、頭を下げた。
「……今回のことも、本当に申し訳ないと思っているわ」
少し間を置いて、続ける。
「あなたを初めて見たとき……自分と同じくらいの背丈で、きれいにドレスを着こなしていて……思ってしまったの」
「“いいな”って」
「その一言が、あんなことになるなんて……」
ロザーリアはしばらく考え込んだ。
「……つまり、本当は女性になりたい、ということですか?」
エリアスは静かにうなずく。
「普段は男として振る舞っているけれど……ドレスを着た自分が、本当の自分だと思っているわ」
「もしかして……あのウェディングドレスも?」
ロザーリアがふと気づいたように言う。
「そうよ」
エリアスは少しだけ微笑んだ。
「いつか着られる日が来ると信じて……自分で仕立てたの」
「すごい……」
ロザーリアは素直に感嘆する。
「私なんかより、ずっと女性らしいですわ。お裁縫なんて、まったくできませんもの」
「そう言ってもらえると……うれしい」
エリアスは少し照れたように笑った。
「……驚いたでしょう?」
「ええ、まあ……びっくりはしましたけど」
ロザーリアは肩の力を抜いた。
「でも、世の中いろいろありますもの。これも経験ですわ」
あっさりと言う。
「私にできることがあれば、何でも言ってください。協力いたします」
エリアスは目を見開いた。
「……ありがとう」
そして、少しだけ声を柔らかくする。
「これからは“エリアス”と呼んでちょうだい。私もロザーリアと呼ぶわ」
「できれば……女性同士の親友として、仲良くしたいの」
「はい」
ロザーリアはすぐにうなずいた。
「私、お友達が少ないので……そう言っていただけてうれしいです」
そのまま、自然にエリアスに抱きつく。
「ちょ、ちょっと!」
エリアスが慌てる。
「そんな簡単に抱きつくものじゃないわよ。もし私が嘘をついていたらどうするの?」
「大丈夫ですわ」
ロザーリアはあっさり答える。
「私、そこらの男性より力も魔力もありますから。自分の身ぐらい守れます」
「……それもそうね」
エリアスは苦笑した。
「でも、本当に鍛えていないのね。背が高いのにもったいないわ」
ロザーリアがじっと見つめる。
「女性として生きたいなら……この身長は少し大変かもしれませんけど」
「あなたもでしょう?」
エリアスが軽く言い返す。
「ドレス、似合わないって言っていたじゃない」
「うっ……」
ロザーリアは言葉に詰まる。
「……でも、気持ちはわかります」
少しだけ、照れたように笑った。
それが――
二人の奇妙な夫婦生活の始まりだった。
外から見れば、仲の良い夫婦にしか見えない二人。
その様子に、王太子や公爵は――
(このままでもよいのではないか)
と、思いかけてしまうのだった。
あれれ??な展開
本編をお読みの方はまあ、予測できましたね
これからのエリアスの活躍にご期待ください
お読みいただきありがとうございます




