表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルドリア国物語 ― 帰れなかった騎士と、託された命 ―  (皇女の帰還ー約束の耳飾りー 外伝)  作者: 鶴見 日向子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/24

残された者たち

※本話には、つらい展開および死に関わる描写が含まれます。

ご注意ください。


※本作は『皇女の帰還―約束の耳飾り―』の前日譚にあたる外伝です。

※本編をお読みになってからの閲覧をおすすめいたします。

※本編よりも重い描写やつらい場面が含まれる場合があります。該当する話には、前書きにて個別に注意書きを記載いたします。

「私が……私がいけないのでございます。もう一人、侍女を付けていれば……」


気絶させられた侍女が、泣き叫ぶ。


「いいえ、私です……。私がお止めできなかったから……」


授乳をしていた侍女も、声を押し殺して泣いていた。


「どちらも悪くはないわ」


ロザーリアが、拳を握りしめる。


「……私が油断しました」

その声は震えていた。


カトリーナの亡骸は、穏やかに微笑んでいた。


それが、残された者にとって、唯一の救いだった。


公爵夫人は赤子を抱きしめ、声もなく泣いていた。


フェルネスは、何が起きたのか理解できなかった。


「なぜ……」


かすれた声がこぼれる。

「元気になったら、一緒に遠出をしようと約束していたのに……」


「事故だ」

クラウスが静かに言った。


「カトリーナ嬢は、バルコニーでめまいを起こし、転落した」


だが――

「フェルネス殿下の婚約者が身を投げた」


その噂は、瞬く間に広がっていった。


国王は、いつもの外面の良さを見せた。


自国で療養中の本国の娘が身投げをした――そんな事実は許されなかった。


「事故死である」

「身投げと申す者は罰する」


そう布告された。


その知らせは、アストリア王国にも届いた。


「……まさか、こんなことになるとは」

国王はうつむく。


脳裏に浮かぶのは、あどけない笑顔だった。


その目に、涙が滲む。

「弟よ……」


公爵もまた、力なく言う。

「もっと早く……廃位させておけば……」


「養女とはいえ……本当の娘のように思っていた」


扉が叩かれる。


「エリアス殿が参りました」


「……通せ」

国王はかすれた声で答えた。


「失礼いたします」


エリアスは跪く。

「葬儀は内密に執り行われました」

「エルドリアでは『事故死』として処理されております」

「赤子は問題なく育っております」


一拍置く。


「お名前を頂きたく存じます」

「今後は、ロザーリアと私の実子として育てます」


「……それでいいのか?」

国王が問う。


「はい」

エリアスは迷わず答えた。


「それと同時に、予定通り、ロザーリアとの離縁の許可を願います」

「赤子はエルドリアで育てるのが最善かと」

「……あの瞳は、こちらでは目立ちすぎます」


沈黙。


「……わかった」

国王はゆっくりとうなずく。

「ロザーリアに……よろしく伝えてくれ」


「名は……どうする」

しばし考える。


「カトリーナの父の名から取って……“カイレス”というのはどうだ」

公爵がうなずく。

「よろしいかと」


「エリアス」

「異存ございません」


「では……そのように」


「しばらく後、母と共に帰国いたします」


「……頼んだぞ」

「はい」


エリアスは静かに頭を下げた。


そして、再び飛行魔獣でエルドリアへ向かった。


「我らに……弟ができるとはな……」

国王がぽつりと呟く。


「息子でも孫でもなく……弟、か……」

公爵も苦く笑う。


新しい命と、失われた命。


そのどちらもが、重くのしかかっていた。


それをどう受け止めればよいのか――


二人には、わからなかった。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


残された者たちの物語は、まだ続いていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ