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エルドリア国物語 ― 帰れなかった騎士と、託された命 ―  (皇女の帰還ー約束の耳飾りー 外伝)  作者: 鶴見 日向子


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外の世界

エルドリア国王が再び登場です

王太子妃初登場


※本作は『皇女の帰還―約束の耳飾り―』の前日譚にあたる外伝です。

※本編をお読みになってからの閲覧をおすすめいたします。

※本編よりも重い描写やつらい場面が含まれる場合があります。該当する話には、前書きにて個別に注意書きを記載いたします。

「我が娘の婿、公子殿がおいでとのこと。ぜひ王宮へご招待したい」


その知らせが、ロザーリアたちの住む別邸に届いた。


荷物を運んだ騎士から漏れたらしい。


「……口止めをしておくべきだったな」

クラウスが肩を落とす。


「仕方ありません」

エリアスは淡々と言った。


「少し顔を出してきます。クラウス殿、道案内を頼めますか?」


「ええ、すぐ着きます」

二人は馬に乗り、城へ向かった。

________________________________________


その頃、別邸では――


ロザーリアがカトリーナの部屋に入る。


わずかに、表情が柔らいでいる気がした。


「……痛む?」

カトリーナは少しだけ目を伏せた。


ロザーリアの胸が締めつけられる。


「……変われるものなら、私が代わってあげたい」

涙がこぼれた。


侍女がそっと口を開く。

「お医者様のお薬で、少しは楽になられているようです」


「……そう」


「ただ……やはり、異性の医師には見せたくない部分でございますので……ずっと我慢なさっていたようで」


ロザーリアは静かにうなずいた。


「私が代わるわ。あなたは休んで」


「ですが……」


「私は騎士よ。これくらい大丈夫」


侍女は深く頭を下げ、部屋を出た。


ロザーリアは、カトリーナに話しかける。


昔この屋敷で過ごした日々。


幼いフェルネスの話。


王弟のこと。


クラウスが来た日のこと。


カトリーナの表情が、ほんの少し和らいだ。


やがて、静かに眠りに落ちる。


ロザーリアは、その顔をじっと見つめていた。

________________________________________


その頃、王宮では――


「ようこそ、婿殿!」


国王は酒と料理にまみれながら、下品に笑った。


「あんな小さな屋敷ではなく、ぜひ城に泊まっていかれよ!」


葉巻の煙が部屋に充満している。


王太子と王太子妃も同席していたが、ほとんど表情を動かさない。


「早く孫の顔を見せてほしいものだなあ!」

がはは、と笑う。


「ロザーリアはあの体形だ、難しかろうがな!」


エリアスは無表情を保つしかなかった。


食事も酒も、口にする気にはなれない。


やがて国王は一人で飲み、一人で食べ、そして――


そのまま眠り込んだ。


王太子が静かに目配せをする。


騎士たちが現れ、四人がかりで運び出した。


「……失礼いたしました」

王太子が深く頭を下げる。


「いつも、あのようなご様子なのですか?」

エリアスは小声で問う。


「……ええ」

王太子も同じく声を落とした。


「ここは“自分の城”ですから」

「素が出たのでしょう」

「リチャード、場所を変える」


「は」


案内された別室は、清潔で静かな空間だった。


ようやく息がつける。

________________________________________


それから三人は、長く語り合った。


政治のこと。


エルドリアの今後。


そして――ロザーリアのこと。


「……あの方は、とてもお強いです」

王太子妃が静かに言う。


「騎士としても、女性としても」

「私など、憧れるばかりでございます」


エリアスは少しだけ微笑んだ。

「……あれは、強すぎるくらいです」

「その強さが必要な者でもあります」」


王太子はうなずく。


やがて話題は、自然と変わっていく。

「……カトリーナ殿の件、聞き及んでいる」

王太子が低く言った。


エリアスの表情がわずかに硬くなる。

「……申し訳ありません」


「謝る必要はない」

王太子は首を振る。


「あの屋敷が役に立つのならよい」

短い沈黙。


「……あの子は、どうなるのだろうと不安です」

エリアスがぽつりと問う。


王太子は少し考え、

「時間はかかるだろう」

そう答えた。


「だが、そなたとロザーリアが側にいる」

「……大丈夫だ」


エリアスは目を伏せ、うなずいた。

________________________________________


帰り際――


「ロザーリアとは関係なく、今後も友人でいてほしい」

王太子が手を差し出す。


エリアスは、その手をしっかりと握った。

「もちろんです」


「私は自由に動けます。必要であれば、そちらの屋敷にも伺います」

王太子妃がうなずく。

「女手が必要でしょうし……私もお力になりたい」


「助かります」

エリアスは素直に言った。

________________________________________


エリアスが馬に乗るとクラウスも現れ、後に続いた


二人を見送った後、王太子がつぶやく。


「……妙な関係だな」


「ええ」

王太子妃が小さく笑う。


「ですが……あの方からは、不思議な気配を感じます」


「気配?」


「ええ……男性らしさとは、少し違うような」


王太子は眉をひそめる。


「……よくわからぬな」


「私も初めてでございます」


王太子妃は首をかしげた。


「……まあよい」


二人は、そのまま部屋へ戻っていった。


本編ではあまり出番がない王太子妃

こちらでは、ロザーリアの義姉として、いろいろ交流ができます

お読みいただきありがとうございます

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