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夜のとびら  作者: GenerativeWorks


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第6話:声ではない声

ふくろうは鳴いたが、それは合図でしかなかった。

夜は、ひとつ、深く息をした。


森の音が、同時に、半歩ぶん、下がる。

それで、入口が、整った。


ふくろうは、高い枝にとまっている。


羽は閉じている。

目も、こちらを向いていない。


それでも、見られている、というより、受け取られている、という感じがあった。 

声は、いらない。


ここでは、声は、輪郭を持ちすぎる。

輪郭は、夜を裂く。


だから、ふくろうは、鳴かない。


ほう。


それは、意味を運ばない音だ。


 


でも、森は、その音を聞いて、配置を変える。

木と木のあいだが、ほんの少し、広がる。


風の通り道が、ひとつ、増える。

空気が、均される。


人の子は、まだ、何も知らない。

知らないまま、胸の奥で、夜の重さを感じている。


それで、十分だ。

知ってしまえば、戻れなくなる。


戻れなくなるには、早すぎる。

ふくろうは、その境目を、知っている。


知っているからこそ、迷う。

迎えることと、留めることは、紙一重だ。


守る、という言葉の中には、止める、が含まれている。

ふくろうは、その重さを、羽の内側に抱えている。


古い重さだ。

思い出そうとすれば、名前が浮かぶ。


浮かんでしまえば、役目が揺らぐ。

だから、思い出さない。


ほう。


二度目の音は、森の奥へ、沈んでいく。

それを合図に、影が、円を描く。


円は、扉ではない。

まだ、扉にしてはいけない。


ただの、気配の輪だ。

そこに立てば、夜が、少しだけ、近くなる。


進むことも、戻ることも、許される。

許される、というより、急かされない。


それが、今夜の夜だ。

ふくろうは、枝から、わずかに視線を落とす。


人の子の夢が、森の手前で、かたちを持ちかけている。

光でも、闇でもない。


迷いに、似たもの。

それは、悪くない。


迷いは、入口の条件だ。

ふくろうは、翼を少し、広げる。



迎える準備。

だが、呼ばない。


呼べば、来てしまう。

今夜は、気づかせるだけでいい。


ほう。


最後の音は、夜に吸われ、音にならずに、消えた。

そのかわり、森の呼吸が、ひとつ、深くなる。


扉は、まだ、見えない。

見えないまま、夜は、そこにあった。


そして、それが、正しかった。

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