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夜のとびら  作者: GenerativeWorks


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17/19

第17話:重さの在り処

重さは、持ったままでも歩ける。

夜は、前よりも、少しだけ、低くなっていた。


天井が、下がったわけではない。

ただ、胸の位置に、夜が、来ている。


こねずみは、それを、息で、感じる。

吸うと、夜が、胸に入る。


吐くと、重さが、残る。

残るけれど、苦しくはない。


むしろ、確かだ。


歩く。

一歩。


床が、きちんと、鳴る。

鳴るたびに、体の中で、何かが、揃っていく。


夜のともだちは、少し、遠い。

遠いが、消えていない。


距離が、生まれただけだ。

 

距離は、切断ではない。

重さを、持ったまま、近づくための、余白だ。


こねずみは、自分の胸に、手を当てる。

鼓動が、わかる。


早くも、遅くもない。

ただ、続いている。


続いている、ということが、急に、ありがたくなる。


──おもい。


言葉が、浮かぶ。


思い。

重い。


どちらも、同じ音だ。

同じ音なのに、逃げるものと、抱えるものに、分かれる。


こねずみは、逃げない。

でも、抱え込まない。


重さを、置きどころに、探す。


床に、小さな、くぼみが、ある。

昔、何かを、置いた跡。


こねずみは、そこに、座る。

重さが、少し、沈む。


体から、完全には、離れない。

でも、分け合えた。


分け合う、という感覚に、胸が、ゆるむ。

夜は、重さを、奪わない。


奪わない代わりに、置く場所を、残している。

それが、この夜の、やさしさだ。


ふくろうの気配が、高いところに、ある。


見下ろしていない。

見守ってもいない。


ただ、そこにいる。


こねずみは、その在り方を、まねる。


立ち上がり、歩く。


重さは、まだ、胸にある。

でも、足取りは、遅くならない。


むしろ、少し、安定する。

重さが、軸になる。


夜のともだちが、遠くで、動く。

呼びは、しない。


それで、いい。

呼ばれなくても、進める。


進めることが、わかる。

こねずみは、小さく、息を、整える。


重さは、敵ではない。

道を、選ぶための、目印だ。


そのことを、体が、先に、理解している。

夜は、低く、静かに、続く。


こねずみは、その中で、自分の重さを、失わないまま、歩き続けた。ま

だ、外へは、行かない。


でも、戻れない、わけでもない。


重さのありかを、知った夜は、それだけで、ひとつ、進んでいた。


夜は、答えを、与えない。

代わりに、足元を、確かにしてくれる。


こねずみは、その確かさを、踏みしめながら、次の夜へ、向かっていった。

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