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夜のとびら  作者: GenerativeWorks


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14/19

第14話:迷いの形

迷うという形は、決して一つではない。

夜は、まっすぐではない道を、何本も、同時に、用意している。


どれを選んでも、間違いではない。

でも、どれを選んだかで、戻り方が、変わる。


こねずみは、家の外縁に、近づいていた。

外、といっても、外に出られるわけではない。


ただ、境目が、薄くなる場所。

空気が、少し、ざらつく。


夜のともだちは、ここには、来ない。

来ないのではなく、来られない。


境目は、彼らにとって、形を、持ちすぎている。

床に、細い線が、走っている。


傷のようで、道のようで、どちらでもない。

こねずみは、その線に、沿って、歩く。


歩くたび、線が、わずかに、揺れる。

揺れるけれど、消えない。

──迷いは、消えない。


なぜか、そう思った。

消えないからこそ、形を、探す。


曲がり角が、現れる。


右へ行くと、音が、少なくなる。

左へ行くと、匂いが、濃くなる。


どちらも、夜だ。

どちらも、正しい。


こねずみは、立ち止まる。


胸の奥で、小さな、重さが、左右に、揺れる。

重さは、教えてくれない。


ただ、揺れるだけ。

こねずみは、左へ行く。


理由は、ない。

理由がない、という選択が、今は、必要だった。


匂いは、土と、木と、少しの、湿り気。

懐かしい、とも、言えない。


でも、遠ざかっていた、何かに、近づく感じがする。


道は、すぐに、細くなる。

足を、踏み外しそうになる。


怖さが、胸に、生まれる。

怖さは、形を、はっきりさせる。


輪郭が、戻る。

こねずみは、自分の、足先を見る。


ちゃんと、床に、触れている。

触れている、という感覚が、はっきりする。


それだけで、少し、安心する。

道の先に、小さな、ひび割れがある。


向こう側に、別の夜が、見える。

今いる夜より、少し、明るい。


でも、そこへは、渡れない。

ひび割れは、幅が、足りない。


渡れないことが、わかると、胸の奥が、きゅっと、縮む。

──まだ、だめ。


誰かに、言われたわけではない。


夜が、そう言っている。

こねずみは、その場に、座る。


迷いは、進むことでも、戻ることでもない。

留まる、という形も、ある。


息を、する。

夜が、応える。


息と息が、重なると、時間が、少し、動く。

ほんの、わずかに。


その動きが、胸に、伝わる。

こねずみは、立ち上がる。


来た道を、戻る。

戻ることは、負けではない。


迷いは、回収されないまま、残る。

残った迷いが、次の道を、つくる。


それでいい。

夜のともだちが、遠くに、見える。


安心した、ような、していない、ような。

こねずみは、その中間の気持ちを、そのまま、抱える。

 

迷いは、解決しない。

でも、形を、持った。


それだけで、今夜は、十分だった。

夜は、迷いの形を、壊さない。


壊さないから、迷いは、次の夜へ、つながっていく。


こねずみは、そのことを、言葉にしないまま、静かな呼吸の中へ、戻っていった。


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