第90話ソルティナ、王都へ行く!〜出張演出補佐と、まさかの貴族様デビュー!?〜
「え? わたしが、王都に……っ!?」
朝、湯けむり立つみづき庵。厨房で大盛りつけ麺を両腕で抱えていたソルティナが、耳を疑った。
「そうよ。急きょ決まった“王都ラーメン劇場”の追加公演。補佐として、あなたに来てもらいたいの」
リリアーナが軽やかに告げると、隣のクラリーチェがにっこり微笑む。
「“実戦”での人心掌握力、情報処理能力、そして何より――あの笑顔。あなたにしかできないことがありますわ」
「ひぇえ……ッス……!」
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◆旅の道中:三人娘、馬車に揺られて
「リリアーナ様、クラリーチェ様、ほんとにあたしで大丈夫っスかね……王都の空気、ぜったい高級スよ……」
「空気に“ス”とか付けてる時点で大丈夫じゃなさそうだけど」
リリアーナが呆れた顔で笑う。
「ふふ、でも緊張してるのが可愛らしくて素敵ですわ」
クラリーチェはソルティナの手を取り、ぎゅっと握る。
「だ、大丈夫ッス……あたし、みんなの顔、ちゃんと見てがんばるッス……!」
「うん。ソルティナならやれるわ。任せてちょうだい」
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◆王都ラーメン劇場・開演前日
「しょ、商人の服装だと浮くッス!? 王都のホール、客がみんな宝石ついてる……!」
「というわけで、急遽こちらを用意しましたのよ」
クラリーチェが差し出したのは、黒地に金刺繍のオリジナル制服――
襟にはさりげなく、みづき庵のロゴが刺繍されていた。
「す、すごい……あたしが高級に……いや、ちょっと詐欺っぽい……ッス……!」
「堂々としてなさい!“演出”とはそういうものよ!」
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◆そして開演――!
劇場内、ラーメンを待つ貴族たちがざわつく中。
「皆さま、お待たせしましたッスー!
本日は、美月様特製・王都限定《金胡麻たっぷり薬膳つけ麺・極光仕立て》をご提供いたしますっ!」
「おお、あの声は……!」
「先導係の子か? なかなかハキハキしておるな」
その笑顔とテンポに、会場の空気が和らいでいく。
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◆舞台裏にて…
「クラリーチェ様、貴族の中に“背もたれの反り方”で機嫌をはかれる方がいます。2列目左から3番目の方は今ちょっと不満ス!」
「その観察力……!もはや諜報部レベルですわ!」
「あと、あの方は“香りの強い具材”が苦手っぽいので、次の回は調整ス!」
「完璧だわ。リリアーナ、彼女、即戦力です!」
「ていうか私より動いてる気がするんだけど!? おかしくない!?」
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◆終演後――
「よくがんばったわね、ソルティナ」
「うん、ほんと……助かったわ。ありがとう」
「ひぇええ〜ッス! なんかもう……夢の中みたいッス〜!」
彼女の頬を風が撫でる。遠くで王都の鐘の音が響く。
「また……来たいッス。もっと勉強して、もっと堂々と!」
「それでこそ、わたしたちの看板娘よ」
「うん、“王都仕様の看板娘”ですわね」




