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第84話休日マニュアル実践編!〜ピクニックに集う、働きたがりたち〜

ある晴れた休日。

王国が正式に制定した《美月女子爵・週休二日制度》の実践第一日目を祝して、リリアーナとクラリーチェが主導する「美月強制癒しピクニック」が開催された。

場所は王都郊外の緑豊かな丘。春の陽気に包まれ、野の花がゆれる絵のような風景だった。

________________________________________

「さて、皆さま、よくお集まりくださいました!」

広場に広げられたレジャーシートの中心で、クラリーチェが高らかに宣言する。

「本日、ここに《第1回・美月さまを働かせない選手権》を開会いたします!」

「そんな選手権あったの!?」

美月がすっとんきょうな声をあげた。

「ええ、賞品もありますわよ。優勝者には……“来月の美月さま休日、計画主導権”を授与!」

「なんだその特典……!」

「つまり、美月をどう休ませるかを企画できるんです!」

リリアーナが自信満々に腕を組んだ。

「私はすでに“湯豆腐とひたすら寝るだけ旅館プラン”を構想済みよ」

「私は“猫と触れ合うだけツアー”を!」

クラリーチェは猫のぬいぐるみを取り出し、チグーの鼻先にぴとっ。

「もっふぅー(……それ、おれのライバル)」

________________________________________

◆働かせないための過剰な接待

「まずは第一種目! “美月に料理させる前に全員で囲め!”ゲームです!」

「どんなゲーム!?」

「ピクニックといえばサンドイッチですが、美月が手を出す前に、我々で先に用意します!」

「これ、ただの取り合いでしょ!?」

すでに現地で待機していたスタッフが、ずらりと並べたのは――

・薬膳レバーペーストと紫キャベツのサンド

・野草ハーブとローストチキンのサンド

・まさかのラーメンの麺を挟んだ“炭水化物で殴るサンド”

「……なんでラーメンサンドがあるのよ……」

「やはり一口でもラーメン要素がないと、美月さまが寂しがるかと!」

「いや、私そんなにラーメンしか興味ない人間みたいに……あ、ちょっとそれ食べてみたいかも……」

「はい、ダメです!」

リリアーナがスッと腕を出して遮った。

「今日はあなた、食べるだけ!作らない、考えない、スープを煮込まない!」

________________________________________

◆午後の自由時間=美月監視タイム

お昼ご飯も済み、日差しが穏やかになってきたころ。

美月は静かに本を開いて、レジャーシートの隅っこで読書を始めた。

「ふぅ……休日って、こういう時間なんだな……」

そのとき。

カサッ。

何かを取り出す音。

「……ん?……あれ、メモ帳?」

「なにしてるの、美月?」

クラリーチェがすかさず背後に回ってのぞき込む。

「いや、なんか……ふと“ミントと胡麻のバランス、1:1.5くらいなら爽やかさ出るかも”って思って……」

「――破り捨てなさい」

「わぁ!?」

リリアーナがさっそうと現れ、メモ帳をヒラリと奪い取り、遠くの草原にスロー。

「自由時間に仕事したら、自由じゃないでしょ!」

「いや……でも、ひらめきが……」

「そのひらめきは明日聞きます!だから今日は!黙って!寝てください!」

「……うん……はい」

美月はおとなしく、ふかふかのチグーに頭を乗せて、空を見上げた。

チグー「もっふぅ(今日も平和だな)」

________________________________________

◆夕暮れとともに、幸せの余韻

陽が沈みかける頃、美月は穏やかな表情で寝返りをうった。

「……なんか、すごく幸せだなぁ……」

「でしょ?」

リリアーナが微笑みながら隣に座る。

「ね、たまには何もしないのもいいもんでしょう?」

「……うん、なんか、胸の中がほかほかする」

「それはきっと、ラーメンじゃないわね」

クラリーチェがくすりと笑った。

「今日は……ちゃんと、“美月の休日”でしたね」

「うん、ありがとう。ほんとに、ありがとう」

そして静かに眠る美月の周囲に、春の夜風と、ささやかな笑い声が漂っていた。



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