第78話美月薬膳診療所・エルマーレ分室 〜笑顔とスープと鳴き声と〜
「次の方〜!今日の体調はどうですかー?」
カラリと潮風が吹き抜ける青タイル張りの仮設診療所。そこには、今日も行列を作る市民と、奮闘するひとりのラーメン女子の姿があった。
「えっと……最近むくみがひどくて……」
「それなら《ミズキ海菜と香草の清涼スープ麺》ですね!塩分控えめ、でも出汁はしっかり!むくみ、吹き飛びますよ〜!」
「ほんとですか!? 信じてる!!」
「信じて正解、結果にコミットします!」
「言い回しが軽くなってますわよ、美月さま」
横で受付を手伝うリリアーナが、眉をひそめながらも笑みを浮かべる。
「いや、でもすごい人気ですよね、これ……あっ、クラリーチェ様、診察券は縦に並べてくださいって何度言いましたか!」
「す、すみません! つい……色で並べたほうが見やすいかと思って……」
「それはそれで合理的かもしれませんけども! でもルールはルールでしてよ!」
「ふたりとも落ち着いてー!」
美月が笑いながらタオルを掲げる。
「ちょっと一息入れよう!ほら、チグー、差し入れのお魚干し食べる?」
「もっふぁー♪」
(※訳:ありがたい!)
チグーがもふっと顔を光らせ、うれしそうに干物を咥えた。
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◆王族からのお願い(という名の無茶振り)
「ふむ、美月殿」
王の側近が急ぎ足でやってくる。
「午後から王宮の重鎮たちが来られます。高血圧、糖尿、胃弱、腰痛、そして偏頭痛のコンボらしいです」
「えっ!? コンボ!?」
「あと、夕方には貴族婦人による《健康美容薬膳講座》の開催も予定されております」
「やるって言ったっけそれ!? リリアーナさん、確認取ってた!?」
「ええ、確か……王妃陛下の“命令形のご相談”でございましたわね」
「えええぇぇ……!」
「大丈夫です、美月さま! わたしが資料まとめておきましたからっ!」
クラリーチェが、ちょっと自慢げに薬膳素材の一覧表を掲げる。
「さすが!クラリーチェ!」
「ふふっ、当然です!」
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◆お昼休憩
「……今日もすごい数ですねぇ……」
「ありがたいことだよね……はは、体調相談で予約が埋まるのって、現代日本でもなかなかないよ……」
「それだけ、美月さまのスープが心を動かしたということですわ」
リリアーナは、手元のハーブティーを静かに差し出した。
「でも、無理はしないでくださいね? 心と体は資本ですもの」
「そうですとも!」
クラリーチェが身を乗り出す。
「もし美月さまが体調崩したら……この診療所、私たちでやるしかなくなっちゃいます!」
「それはそれで……見てみたいけど……」
「えっ」
「えっ」
「冗談だよー!」
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◆午後も全力ラーメン診療!
「では次! 胃弱・高血圧・冷え性の三重奏のあなたには、こちら!」
「《ミズキ葛根と生姜の回復ポタージュ麺》です!」
「おお……体がポカポカする……ラーメンなのに、温泉に入ったみたいだ……!」
「これが、“食べる薬湯”……美月様、さすが……!」
クラリーチェの目がうるんでいる。
「チグー、冷やしたタオルお願い!」
「もっふぉー!」
(※訳:了解!)
「みんなで分担してやれてるのが、ほんとありがたいよ……」
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◆夜――
ひと息ついたころ、美月はみんなにラーメンを振る舞っていた。
「今日のまかないは、《ミズキ海老香味らーめん》ね。疲労回復と眼精疲労に効くよ!」
「ありがたき……!」
「尊い……!」
「もっふぅ……!(※幸せ!)」
潮風と薬膳スープが入り混じる、美味しくて優しい夜。
こうして、エルマーレの美月薬膳診療所は――
日々、健康と笑いを届け続けていた。




