第79話薬膳の灯を継ぐ者たち〜短期集中ラーメン研修会、開催!〜
「――というわけで、この国を離れる前に、ちゃんと後を任せられる人を育てたいのです!」
薬膳診療所の仮設会議室にて、美月は両手を腰にあてて宣言した。
集まったのは、王立医師団の代表数名、料理ギルドの上位職人たち、そして王宮付きの料理番まで。
「……でも、あのラーメン、我々には再現不可能では?」
「ラーメンなんて、あれは神の食べ物……!」
「違う違う、技術はちゃんと伝えますって!」
美月は笑いながら、配布した「ラーメン薬膳基礎ノート」の冊子を机に並べた。
「まずは、素材の理解からです。チグー、例の香辛料セット!」
「もっふっふ!」
(※訳:はいよー!)
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◆第1日:香りとスープの秘密
「こちらが、ミズキクミンと、ミズキミントの組み合わせです」
「く、くんくん……なんだこれは……鼻が……鼻が開いた……!」
「薬では……?いや、香りが旨味に転化している……!?」
「正解です! 香りは味の一部、五感で食べるラーメンがうちの基本です!」
「すごい……これは新しい“医食同源”の概念ですね……」
王立医師団の1人がうなる。
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◆第2日:火加減とタイミング
「鍋から目を離さないで! ミズキマッシュの旨味が出るのは、ジャスト12分後!」
「ええいっ、時計なんか要らん! 俺の勘だ!」
「だめー! 勘に頼らないで! ちゃんと温度計を見てください!」
「す、すみません……!」
クラリーチェは、各調理班を回って熱心にメモを取っていた。
「すごい……王族とは思えないほどの汗と包丁さばき……!」
「ふふふ、美月さまの名誉を支えるのが、わたしの喜びです!」
「……ラーメンに人生捧げてる顔だわ……」
リリアーナが、遠くからちょっと引き気味に見つめていた。
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◆第3日:模擬診療と薬膳処方
「はい、次の方どうぞ!」
「……最近お腹が張って困っておりまして」
「では、胃腸を整える《ミズキ芋と梅の冷やし薬膳麺》を処方しましょう。レシピはこれ!」
「すごい、薬じゃなくて、ラーメンで……!」
「そう、薬膳って、生活の中での“積み重ねの治療”なんです!」
「それ、メモします!!」
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◆研修最終日:修了式と……
「……というわけで、皆さん!3日間お疲れ様でした!」
「「「ありがとうございました!!!」」」
「短い期間ではありましたが、技術も考え方も、間違いなく伝わったと思います!」
「美月先生、ぜひまたご指導ください!」
「いえ、先生じゃなくて――女神です……!」
「えっ!?」
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◆名誉女子爵・授与の儀式
数日後、王宮の中庭にて。
「美月殿。そなたの知識と献身は、我が国の宝である」
エルマーレ国王が、晴れやかな声で告げた。
「よって、本国において“名誉女子爵”の称号を授けるものである」
「……え!? ちょっと待って!? これって……名誉って、肩書きだけですよね?お給料は……あっ、いや、なんでもないです!」
「ふふふ、美月さまらしいですね」
クラリーチェが袖をくすぐるように笑い、
「お給料の件は、わたくしが交渉しておきます」とリリアーナがささやいた。
「それじゃ、また会いに来るねエルマーレ! 次は夏祭りラーメンフェス、なんてどう?」
「来て来てー!!!」
「名誉じゃなくて、もう王様にしよう!!!」
「もっふぅ〜♪(※訳:次は俺の出番!)」
こうして、海の都に薬膳の種をまいた美月は――
また新たな地へ旅立っていくのであった。




