第77話美月薬膳診療所(仮)、開設!
厨房では、美月が目にも止まらぬ早業で食材をカットしていた。
「今回は、塩分を控えつつ、香味野菜でコクを補う感じかな……。ミズキ玉ねぎとミズキ海菜を……」
「お供しますわ!」
クラリーチェがトレイを運び、リリアーナは試食担当に徹する。
完成したのは――
《ミズキ香草の薬膳塩ラーメン〜海風仕立て〜》
「さあ、どうぞ!」
王がひとくち、すする。
「……おお……これは……!」
「塩が……ない!? いや、ある!? いや……ない!? どっちだこれは!?」
周囲の貴族たちがどよめく。
「塩分を控えても、香りと旨味で“満足感”を出してるんです。あと、血圧の調整に良い薬草も入れてます」
「……からだが……軽くなっていくようだ……!」
王の目が、潤んでいた。
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◆そして、正式に。
その日以降、王の提案で「美月薬膳診療所(臨時)」が設立される。
「本日はどのような体調で?」
「むくみがちで……」
「ではこちら、《水出しキノコの香る薬膳スープ麺》ですね!」
料理は現地の料理人が担当、美月はあくまでレシピと処方のみ。
「俺、今までラーメンを“治療”に使うなんて、考えたこともなかった……」
「これが……薬膳ってやつか……」
さらに庶民層にも開放された診療所は、毎日長蛇の列となる。
王は、ラーメンを啜りながら満足げに言った。
「……国民の笑顔が、海よりもまぶしいのう」
こうして――
“塩の国”エルマーレに、やさしい風が吹きはじめた。
ラーメンの香りと共に。




