第75話世界を巡る薬膳の旅!〜再会と新たなスープの予感〜
薬膳スパの湯けむりが立ちのぼる朝、美月の屋敷には今日も賑やかな声が響いていた。
「美月さま! 次の訪問先、海洋国家“エルマーレ”の調整が完了しましたわ!」
「薬膳ラーメン、今度は海ですのね! 潮風と塩気……これは塩ラーメンの出番ですわ!」
「待ってリリアーナ、それまだ正式に塩ラーメンって決まってないから……」
いつものように美月が苦笑すると、クラリーチェがぴょこっと手を挙げた。
「その前に! 天空都市からお返事が届いていますっ。王子からの……直筆の、お手紙ですっ!」
「……王子? あ、ゼファル王子……」
美月が手紙を受け取りつつ、リリアーナがやや呆れ顔で横からのぞきこむ。
「直筆って、あの人……また詩みたいなこと書いてるんじゃないでしょうね」
「そ、それが……“雲の彼方より、黄金の湯気を想いし刻”って……」
「うわぁ、やっぱり詩だ……!」
美月は苦笑しつつも、心の中でふわりとあたたかな何かが湧き上がるのを感じていた。
(ゼファル王子……あの天空都市での、短くも濃い修行の日々。あれから、少しずつ何かが変わった気がする)
そんな美月を察してか、クラリーチェがポンと元気よく背中を叩く。
「王子は、また“雲の上の薬膳ラーメン”を味わいたいんです! 美月さまの手で、天空の人たちを再び温めましょうっ!」
「ふも!」(訳:ついでに、天空のはちみつがまた食べたい)
「……チグー、それ目当てか……」
こうして、新たな旅路が静かに幕を開ける。
「よーし、まずは塩分とミネラルたっぷりの、海洋薬膳ラーメン試作から始めましょ!」
「リリアーナは塩の管理! クラリーチェは貝の調達を!」
「了解ですわ! いい塩見つけてきますの!」
「わかりましたっ! 潮の香りに導かれて、漁師の娘になります!」
「……いや、そこまではいいから……!」
チグーは今日も「ふも〜」と転がりながら、みんなを見守っている。
それはまるで、薬膳ラーメンの湯気のように。
――熱く、やさしく、世界を包み込む冒険が、またひとつ始まろうとしていた。




