第74話【閑話】薬膳スパの町で、もふもふ視察!?
朝霧がまだ立ち込める薬膳スパの町に、どこからか響く湯けむりポッポの汽笛。
「ん〜〜、湯気の香りが……今日は柚子と生姜かしら……」
美月は屋敷のテラスから、湯気に包まれた町並みを眺めて、にっこり微笑んだ。その後ろで、ちびグリズリーのチグーが、ごろんと転がりながら「ふも〜〜」と心地よい鳴き声をあげている。
その様子を見つつ、美月がぽつりとつぶやいた。
「ほんとに……ちゃんと町になってる。あんなに山しかなかったのに」
「その手腕、見事としか言いようがないですねぇ!」
ドアをバン!と開けて入ってきたのは、ギルド長の双子の弟にして領主代行――ギュスターヴその人である。
「温泉、宿、薬膳ラーメンに薬膳岩盤浴、モフ動物園、湯けむり演舞ショー! 全部ワタクシが中心となって運営しております!」
「え、ちょっと待って、今“モフ動物園”って……」
「そうですとも! 薬膳鶏と薬膳羊、そして目玉はこのチグーくん! 触れ合いコーナー大人気!」
「……チグー、あんた働いてたの……?」
「ふも……?」(訳:よくわかってないけど楽しい)
さらに、村の薬膳スパを体験しに来ていたリリアーナとクラリーチェも、湯上がりのバスタオル姿でやってきた。
「美月さま〜♡ 薬膳ミルク風呂、最高でしたわ! お肌がもっちもちですの!」
「ミヅキハーブ蒸しサウナ、息が通るって感じだった〜。やばい、あれは王国輸入すべき……」
「二人とも、少しは貴族らしく……って言いたいけど、まぁ、いいか……」
すると、ギュスターヴが突然両手を広げて高らかに宣言した。
「領地名、そろそろ正式に決めませんか? ワタクシの案は、“ミヅキ湯けむり共和国”!」
「共和国!? え、なんでそこだけ民主制なの!?」
「あるいは“湯気の都・モフリオン”!」
「モフリオン!? もふもふ+イオン!? なんの新興温泉施設!?」
「ふも!」(訳:名前はどっちでもいい)
その場に笑いが広がり、美月は改めて胸に手を当てた。
(こんなにたくさんの人が、この地で笑ってくれるなんて……)
「名前は……もう少し考えよう。けど、ここは私の、そしてみんなの“癒しの町”にしたいな」
「“癒し”……いい響きですわ!」
「うんっ、世界が疲れたら、ここに来てラーメンと温泉で元気になれるような、そんな場所にしよっか」
「「「賛成〜〜〜!!」」」
こうして、“湯気の都”は今日も元気に、ぽっぽと薬膳の香りを乗せた湯気を、空へと立ち昇らせるのだった――。




