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第65話天空都市編:ゼファル王子の密着修行編

――『空に浮かぶ都市』。その存在は、地上に生きる者たちにとって伝説に近かった。

しかし、ラーメン外交を進める美月に、ついにその招待状が届く。

「天空都市アエリスタ……正式な外交訪問ですって?」

美月が目を丸くしていると、隣のリリアーナが書簡をのぞき込みながら呟く。

「王子直々のご指名ですわね。……しかも“修行”希望とまで書かれているなんて、どこまで本気なのやら」

そして――天空都市アエリスタ。雲を突き抜ける浮島に築かれた白銀の街で、美月を出迎えたのは、金の刺繍がきらめく制服姿の青年だった。

「ようこそ、天空へ。お会いできて光栄です、美月殿」

「わあ……想像以上に、空が近いですね!」

「私はゼファル=エル=アエリスタ。この都市の第一王子であり、そして……あなたの料理の一番のファンだ」

「えっ」

美月が戸惑って視線を泳がせると、リリアーナが小声で突っ込む。

「またファン増えてますわね。しかも今度は王子様」

「いやいやいや、何の修行よ……ラーメン修行って王子がやることなの!?」

ゼファル王子は、本気だった。

「私は、自らこの味の奥義を学びたい。そして、天空都市にも“人を癒やすラーメン”を根付かせたい」

そんな熱意に、美月も「よし、ならば本気で鍛えます!」と厨房に案内。

――が。

「ぎゃっ!? こ、この火力、熱風だ!」

「ゼファル王子、それは水じゃなくて酢です!」

「えっ!? このスープ……甘い!? ってチグー!? なぜ鍋の蓋を開けた!?」

「モフう~~~!」(←どうやら『これは違う』という意味らしい)

天空都市の厨房は悲鳴と笑いとモフで満ちていった。

数日後――

「このスープ……やっと、少しだけ、美月殿に近づけた気がします」

「すごいです、ゼファル王子。まさかここまでやるとは……」

美月が微笑むと、ゼファルは顔を赤らめた。

「……私はね、美月殿。あなたが作るラーメンそのものだけでなく、それを作るあなたに、惹かれているのです」

「え……」

不意に告げられた言葉に、美月は一瞬言葉を失う。

だがすぐに、ふっと微笑んで答えた。

「……そんな風に言われたの、初めてかも。でも……嬉しいです」

リリアーナが遠くでぽつりと呟く。

「ふん、ライバル……増えましたわね」

クラリーチェがにっこり笑う。

「でも王子、まだまだですわよ。美月さまを支えるには、もっと修行が必要ですわね♪」

天空に揺れるラーメンの湯気の中、美月の心にも、ふんわりとあたたかな何かが芽生え始めていた――。


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