第63話世界平和使者、美月!〜ちびグリズリーと共に、ラーメンで国境越え〜
雲一つない青空の下、王都から南東にひと月。
美月一行は、「アルマデア公国」の迎賓館に足を踏み入れた。
「ふぅ……緊張するけど、がんばらなきゃ」
「ご安心を、美月さま! あなたは世界平和使者、そして――薬膳ラーメンの伝道者!」
「お、おおげさだよリリアーナ……」
「そのくらいの自覚を持ってくださいまし! ねぇ、クラリーチェ?」
「はいっ、美月さまのラーメンは、世界に通用しますわ!」
「……みぶぅ」
一歩後ろで不思議な声を上げたのは、ふさふさの毛並みとつぶらな瞳を持つ、小さな魔獣――チグー。
体格こそ小ぶりなものの、その四肢の爪はしっかりとしたグリズリーのもの。かといって、動きはもっさり、声はぶぅぶぅ。
見た目はぬいぐるみ、魂は森の主。
しかし今では、美月の一番の相棒として、公認の“同行魔獣”となっていた。
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【歓迎の場にて】
「ようこそアルマデア公国へ、世界平和使者どの」
そう迎えたのは、老獪な笑みをたたえた宰相、ガルマ・ヴァイス。
威厳と実務能力を兼ね備えた名政治家である。
「本日は、各国の代表者も集っております。まずは、美月どのの薬膳ラーメン……お手並み拝見といこうではありませんか」
「……はい。緊張しますが、心をこめてお作りします」
「……みぶ」
チグーが短く鳴いた。
「……あ、それ“気張りすぎず、いつも通りに”って言ってる。たぶん」
「……魔獣なのに通訳できるのですか?」
「いえ、なんか……表情と肉球の角度で」
ガルマ宰相が眉をひそめたが、隣のクラリーチェがさらっと言う。
「チグーさまは、ラーメンの味の善し悪しにも敏感でしてよ。ラーメン・ソムリエ・グリズリー!」
「そんな称号あるの!?」
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【薬膳ラーメン披露】
美月が選んだのは、アルマデアの特産・乾燥トマトと薬草を使った「深紅の養生ラーメン」。
具材はシンプルに、香りを活かす構成。だが、口に含めば滋味が広がり、のどごしにキレがある。
「この味は……胃に優しいのに、背中がしゃんとする……!」
「すばらしい! これぞ“癒しと戦力”の両立……!」
各国代表たちがざわつく中――
「ぶぅっ!」
チグーが、空いたどんぶりを見つけて、ちょこんと前足をかけた。
「すみません、あの、チグー……あの器は……!」
「よろしい、美月どの。魔獣にもふさわしいスープだ」
「魔獣とて、世界の一員でございますしな!」
「ぶぅぅぅっ(満足)」
チグーは堂々と席につき、前足でどんぶりを固定しながら、器用にラーメンをすすった(というよりごくごく飲んだ)。
その姿に、場は一転して爆笑と拍手の渦に。
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【外交成功、そして……】
その日の外交会議は、和やかで有意義なものとなった。
「まさか、ちびグリズリーが会話の扉を開くとは……」
「ぶぅ?」
「……たぶん“俺のおかげだな”って言ってます」
「そうですわ! チグーさまは、我らが平和の象徴……“ふわもこの使者”ですの!」
「……称号、どんどん増えてない!?」
その後、薬膳ラーメンは公国の公式晩餐メニューに加わり、美月は“胃袋を掴む外交官”としてさらに各国から招待されるようになるのだった。
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【帰路】
馬車の中で、美月はひと息ついて呟いた。
「うん、ラーメンは……すごい。チグーも、ありがとうね」
「ぶぅ」
チグーは膝にのり、もふもふと喉を鳴らし始めた。
「次はどこかな……極寒の山? それとも灼熱の砂漠?」
「ぶぶー(どっちも暑苦しいor寒苦しい)」
「……たぶん、そういう意味じゃないよね……?」
そうして世界を巡る旅は、また新たな地へ続いていくのだった――。




