第62話第3期生、はじめまして!~ラーメン学院長、美月の初講義~
「お、おはようございます! 美月薬膳拉麺学院、学院長の、美月です!」
朝一番の教室に、美月の声が響いた。
――ドキドキする……1期も2期も、もう立派な戦力。でもこの第3期生は、初めて私が“世界平和使者”として就任してからの入学生……つまり、注目度がちがう。責任、重大。
美月は、手元の講義資料をぎゅっと握りしめた。今日は、ラーメンの基礎中の基礎。スープと出汁の概念から、体調鑑定スキルを活かした薬膳の基礎理論までを一気に教える予定だ。
「ではまず、みなさんに質問です!」
と、勢いよく振り向くと――
「すごい……ほんものだ……」
「王国女子爵で世界平和使者の……」
「オーラ、光ってる……」
ざわざわと、妙に神聖な空気が流れる教室。
「ちょ、ちょっと待って!? あの……そんな仰々しく見られても、私、普通のラーメン好きですからね!?」
「かわいい……!」
「近づきがたいのに庶民的……! これはギャップ萌え……!」
(な、なんで変な方向で崇められてるの!?)
――その頃、扉の外。
「ふふ、美月さまったら緊張してますわね」
こっそり覗いていたリリアーナは、満足げに微笑む。
「クラリーチェ、お茶の準備をして。終わったあとで、労ってあげましょう」
「はーい! あ、でも私、まだ“温かいお茶”と“温めただけの水”の区別ができないんですけどっ」
「それはもはや別問題ですわよ!」
________________________________________
講義中、美月は真面目に説明を続ける。
「スープというのは、体調に寄り添うものです。冷えがあるなら、生姜や火霊草。むくみがあるなら芋葉や蓮根花を……」
「はいっ! 美月先生!」
手を挙げたのは、髪にピンクのメッシュが入った元気な生徒・ルルア。
「なんで先生、ラーメン屋なのにそんなに医学知識あるんですか!?」
「え、あ、ええと……元の世界で栄養士の資格がありまして……」
「元の世界!?」
「今のなし! 今のは流してください!」
教室内、爆笑。
(……うう、なんか方向ずれてる気がする)
だが講義が進むにつれて、生徒たちの眼差しは真剣に。
「なるほど……生薬の組み合わせで、塩分の感じ方も変わるんですね」
「この“味の設計図”って、まるで魔法陣だ!」
気づけば、教室は真剣な空気に包まれていた。
________________________________________
そして授業後――
「おつかれさまでした、美月さま」
リリアーナとクラリーチェが、にこやかに現れた。
「第3期生、元気すぎですっ……わたし、全身から水分が抜けた気がします……」
「お風呂、用意してありますわ。たっぷりの入浴薬草付きで♪」
「お茶も、たぶん温かいと思いますっ!」
「“たぶん”はいらないの!!」
3人の笑い声が、学院の中庭にこだまする。
そして美月は、心の中でそっとつぶやく。
――よし、がんばろう。第3期生と一緒に、また新しいラーメンの旅を。
その目は、誰よりも優しく、そして強く輝いていた。




