第58話 激務すぎて逆に制度化!?~美月、死守のスリートップと優雅な混沌~
王都、美月の屋敷の朝。
白い光が差し込むテラスでは、湯気の立つ番茶を片手に、美月がうんざりと溜息をついていた。
「……はぁ……ついに私、国から“過労死予防”を命じられた女……」
「“薬膳使者は使い捨て禁止”って、王命ですからね」
背後で涼しい顔のリリアーナが、さらりと恐ろしいことを口にした。
「言い方、怖いから!」
「でも実際、美月さま。あなたここ1ヶ月、休んだの2日ですよ?」
「でも……ほら、ラーメン開発は止まらないし、演出のチェックもしないと……」
「わたくしたちが!やりますので!」
そこへ、クラリーチェがラーメン型のクッションを抱えて乱入してきた。
「美月さまが過労で倒れたら、わたくし、どう生きていけば……!」
「ちょ、まだ倒れてないからね!?生きてるから!元気だから!」
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そして、数日後。
王家、ギルド長、学院、そして美月薬膳拉麺の幹部たちが集められた緊急会議が開かれた。
「――で、美月殿の業務量がこのままだと、1日が36時間必要になると判明しました」
「人間界では無理だな。いや、神界でも微妙かもしれん」
ギルド長が腕を組みながら、重々しく頷く。
「なので、これからは……仕事、分担します!」
「さすがに全員、命を守る気だ……」
美月がぽつりと呟く。
「でも、どうしてもやりたい業務が、3つあるんです……!」
そう、美月が“死守業務”として選んだのは――
1)屋敷でのラーメン試作(半日)
2)学院での週1回の講義
3)店長会議への出席(週1回)
「……つまり、それらを1日にまとめて、“美月デー”を週1日だけ作る、ということですわね」
「他の6日間は……2日休んで、4日は外交や領地視察、公務に当てる。完璧なスケジュールです!」
「ちょっと!誰が決めたの!? 私の許可なく!?」
「美月さまが拒否しそうだったので、先に王印で決裁を済ませましたわ♡」
「逃げ道が……ない……」
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こうして始まった新体制。
美月は貴族の屋敷で、試作と学院講義と店長会議を1日に詰め込み、残りの日々は使節団を率いて外交へ、あるいは雪山の領地で温泉施設の設計監修へ――と奔走することに。
ある日の“美月デー”の様子。
「……はい、まず午前6時から10時までが“試作ブロック”ね。次に10時から12時が“講義ブロック”……」
「美月さま、スープの火をつけながら講義してるの、なかなか見応えありますわ!」
「学院の生徒も、『先生、スープの香りが講義の集中力を高めます!』って言ってましたよ!」
「どんな教育効果!?」
午後の店長会議では、全40店舗の支店長が、魔法通信クリスタルで同時接続。
「春の限定メニュー“花びら香るさくら薬膳”が、思った以上に人気で……」
「そのメニュー、演出担当のクラリーチェが“散り際に涙するラーメン”って名付けてたよね?」
「はい!わたくし、エモさを重要視しておりますの!」
「ラーメンに感情を込めすぎ!」
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週末、美月はリリアーナとクラリーチェを連れて、自領地の巡回へ。
「領主としての初仕事は、村の食糧事情の把握です」
「でも、みんな……ラーメン食べたがってたわよ?」
「まさか、炊き出し……!?」
「はい!ミズキ人参と、凍結貝のスープで冬季限定“温活ラーメン”を振る舞いました!」
「村長が『これで越冬できる』って泣いてましたわ」
「なんか……気づいたら、ラーメンがライフラインになってる……」
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夜、屋敷に戻った美月は、ソファにどっかりと倒れ込んだ。
「ふー……つ、疲れたー! けど、達成感……!」
「今日も、お疲れさまでした、美月さま!」
クラリーチェがハーブティーを差し出し、リリアーナはさりげなく毛布をかける。
「でも、ほんとうに良かったですわ。美月さまが、倒れずに笑っていらして……」
「……うん。新しい体制、悪くないかも。みんなが支えてくれてるから、私もやれる」
美月は、微笑みながらカップを掲げた。
「さあ、明日からも、“ラーメンと平和”のために、がんばろうか!」
こうして、新たな美月のラーメン多面活動が、世界の舌と心を繋ぎ始めたのであった。




