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第42話【王女の文化祭大作戦!〜はじめての裏方奮闘記〜】

──文化祭前夜。

「裏方を務める? 本当に貴女が?」

リリアーナ様の眉が跳ね上がった時、わたくしはむしろ嬉しゅうございました。

なぜなら、ようやく「王女殿下」としてではなく、「ただのクラリーチェ」として、美月さまのそばに立てる気がしたのですもの!

「この身と矜持に賭けまして、どんな雑用でも必ずやり遂げてご覧にいれますわ!」

──文化祭当日、朝。

「おはようございます、美月さまーっ!!」

「うわ、すごい元気……。クラリーチェ、お団子の準備ありがと。今日も裏方よろしくね」

「はいっ! 湯葉巻き班、出発いたします!」

ええ、やってみせますとも!

だって今日は、わたくしの“もうひとつの初陣”なのですから!

──9:30 湯葉巻き準備中

「クラリーチェさま! 湯葉が……湯葉が全滅ですー!!」

「うわあ!? 何が起こったのですの!?」

湯葉の保管箱のフタが開いておりました。おそらくわたくしの確認ミスでございます。

「落ち着くのです! 湯葉がなければ、代用品を探すまでです!」

「代用品って、何に!?」

「……わたくしの服の袖、とか……?」

「やめてください王女様ァ!!」

──11:00 ラーメン屋台補助

「美月さま、こちら具材をお持ちしましたわ!」

「ありがとう! あ、クラリーチェ、ねぎが全部横になってて切りづら……あっ、指切った!」

「大変ですわーっ!! わたくしのハンカチ! これ! お包みしますわね!」

「わー、柄がめちゃくちゃ高貴……」

「包帯のようにお使いくださいませ、美月さまの小指ならば……」

「そこまでしてくれなくていいよ!? いやありがとう!」

──13:30 薬膳杏仁豆腐屋台補助

「クラリーチェ様! テントが倒れそうです!」

「支柱はこちらで支えますわ! 助手の心得に“構造力学”も含まれるはずですもの!」

「えっ……王女様……柱の下に足入ってますよ……」

「っ……かまいませんわ……わたくしの足など……テントの安定には代えられません……」

「無理しないで!? 貴族とか関係なく!!」

──15:00 ほっと一息

「ふぅ……杏仁豆腐、美味しいですわね」

「うん。クラリーチェ、今日はがんばったね」

隣に腰を下ろした美月さまが、わたくしの額に貼った冷却薬草パックを、そっと撫でてくださいます。

「でも……いっぱい失敗しましたのに……」

「ううん。いっぱい動いて、いっぱい笑って、いっぱい反省して……全部、経験だよ」

「……美月さま……」

その笑顔を見た瞬間、疲れなんて一瞬でどこかへ飛んでいきましたわ。

──文化祭、終幕。

「今日、わたくしに“裏方魂”が宿りましたの……」

「えっ、なにそれこわい」

「来年も、再来年も、またお手伝いさせてくださいましね?」

「う、うん。嬉しいけど、無理しない程度にね!」

文化祭は終わってしまいましたが、

わたくしの心には、新しい“ラーメン人生”が始まった気がいたしましたの。

それは、美月さまの隣に立つ者として、たしかな一歩。

そして、きっとこれは――

王女であるわたくしにとって、いちばん“自由”な時間だったのです。


文化祭の喧騒が静まり、学院の中庭に静けさが戻った夜。

照明が落ちた屋台と、片付け途中のテーブルが並ぶその場所に――

「……あ、美月さま、こちらにいらしたのですね」

クラリーチェは、薬膳杏仁豆腐の空き皿を両手に持ってやってきた。

「うん。ちょっとひとりで、今日を振り返ってたとこ。座る?」

「はいっ!」

草の上に並べた木のベンチに二人並んで腰を下ろすと、夜風がふんわりと吹き抜けた。

「クラリーチェ、今日はありがとう。本当に、すごく助かった」

「いえ、こちらこそ……たくさん失敗しましたけれど……でも、すごく、楽しかったです


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