表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
36/155

第36話 ラーメンは外交の架け橋!〜女男爵の屋敷、世界の麺を煮る〜

「もう、いい加減にしてくださいませ、美月さま! 貴族になった今も、屋敷を空けたまま風見亭で暮らすなんて――!」

朝からリリアーネの説教が響き渡る。

「うぅ……だって、厨房が慣れてて落ち着くし……ティナたちも近いし……」

「“ラーメン外交の拠点が、木造二階建ての大衆食堂”などと各国の使節が口を揃えて言っておりますのよ? せめて屋敷に試作台を!」

「うむ、その通りだな、美月殿」

ギルド長も、腕を組んでうなずく。

「貴族としての自覚も持たねばならんし、国際的な客人への対応も増えておる。王族が朝ラーメンを食べに来るたび、風見亭が警備の迷惑になるとな」

「ぴゃあ……!」

美月が両手をあげて白旗をあげたところに、風見亭の店主・カズロウじいがふらりと現れた。

「……美月や。今の“美月薬膳拉麺”、もうわしじゃないんだ。運営はお前が育てた学院の第1期生、ナギとペルルがしっかりやってくれてる」

「ナギとペルル……あの真面目すぎるコンビ……」

「もうわしの出番もない。あの子たちの腕と情熱、ちゃんとお前の意思を引き継いどる。わしはこのへんで隠居しようかと思ってな。ほら、風見亭の屋号も、もう“美月薬膳拉麺”にしてええじゃろ」

「カズロウさん……ありがとう。でも寂しくないですか?」

「寂しいもなにも、ほら見ろ、朝っぱらから猫が三匹も寄ってきてるわい。これからは、猫と茶と昼寝の生活じゃ。贅沢なもんや」

その日の午後、美月は決意する。

屋敷に拠点を移し、正式に「女男爵邸 美月庵びげつあん」として、外交と試作の中心とすることを。

屋敷の一角には、特製の大型厨房が設けられた。

チグー用のにおいゾーン、温度管理室、調味料研究棚、そして専用の“国際来客ラーメン試食カウンター”。

「ふふっ……これはこれで、悪くないかも……!」

さらに屋敷の外には、各国の旗が翻るようになる。

王族、貴族、外交官、料理人――

国を超えて、ラーメンを味わいに集まる者たちが次々と訪れた。

「美月様の“清涼ミント冷やし中華”、我が国でも採用したい!」

「この“グルン白湯”……胃が踊るぞ!」

「我が国の香辛料とのコラボをぜひ!」

気がつけば、美月の屋敷は「ラーメン大使館」と呼ばれ、

一杯のスープで、世界と世界を繋ぐ拠点となっていった――

一方、風見亭では――

「師匠が残してくれた“薬膳の哲学”……次の一杯に活かす!」

「ナギ、味見! スープ、ちょっとだけ柑橘足すと香りが際立つよ!」

学院第1期生のナギとペルルが、

今日も元気に厨房を切り盛りし、町の人々にラーメンを振る舞っていた。

そしてリリアーネはと言えば、今日も美月のスケジュール帳を見ながら嘆いている。

「次は、アズィール砂漠国からのラーメン親善訪問団ですわよ! 美月さま、また試作を忘れてたでしょう!」

「ええっ!? うう……屋敷に住むのって、やっぱり……」

「“だからこそ、優雅な美食外交官であれ”って言ったでしょうっ!」

――ラーメン外交官・女男爵、美月の新たな物語が、ここから再び、ぐつぐつと煮え始めるのであった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ