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第34話 夏だ!冷やせ!冷やしラーメン選手権!

その涼香ラーメンは、風見亭での限定販売開始と同時に――

大ブームとなった。

初日は、店の外にまで長蛇の列。

「冷やしって、こんなに美味しいの!?」「汗が引いていく感じがたまらない!」と客たちは感動し、その噂はまたたく間に広がった。

学院本部も即座に対応。

《夏限定「涼香ラーメン」、全国の美月薬膳拉麺にて販売開始》

看板メニューの「薬膳温ラーメン」と並び、異世界に**“冷やしラーメン”**という新ジャンルが誕生した瞬間だった。

◆◆◆

そして――

「各支店より提案です。“冷やしラーメンコンテスト”を開催したいとのことですが」

「いいね、それ!」と美月は即決。

「ただし、私は出ない。主催として“審査委員長”をやるから!」

「私、出場しますわ!」と手を挙げたのは、リリアーナ。

「えっ、マジで!? 貴族令嬢が出るの!?」

「何か問題でも? 冷やしラーメンを食べるだけじゃなく、作ってみたくなったんですもの!」

こうして、**美月薬膳拉麺学院主催『第一回 冷やしラーメン選手権・地域予選』**が、各地で順次開催されることとなった。

麗しの令嬢、厨房に立つ!〜リリアーナ、冷やしに恋をする〜

ここは、美月薬膳拉麺学院主催「第一回 冷やしラーメン選手権」、第一区ブロック・王都地区予選会場。

朝から行列ができるほどの熱気に包まれていた。

「次の出場者、エントリー番号7番――リリアーナ・エルスハイト様!」

会場がどよめく。

王都でも名の知れたエルスハイト侯爵家の令嬢が、まさか料理大会に出場するとは――

\えっ!?あのお嬢様が!?/

\なんで!?でもちょっと楽しみかも……/

舞台に上がったリリアーナは、涼やかな笑顔を浮かべて言った。

「本日はお集まりいただきましてありがとう。私、エルスハイト家の誇りと、食への愛をこの一杯に注ぎますわ」

審査席にいる美月が、そっと身を乗り出す。

「(ほんとに来ちゃった……しかもドレスじゃなくてちゃんとエプロン着てる!)」

リリアーナが作る冷やしラーメンの名は――

涼彩りょうさいのヴェール》

「麺には“風の穂”に少しだけ“銀水根”の粉を練り込みましたの。涼感と食感を両立する秘策ですわ」

「(根っこ!?ってか、そんなのどこで調べたの!?)」と美月が内心で驚いていると、

リリアーナは涼しい顔で具材の準備に入る。

「蒸し鶏は“香草鶏”を使いまして、皮は外してヘルシーに。ジュレ状にした“月果酢”で香りと酸味を包み込み、そこへ、“雪花瓜”と“水玉茸”のピクルスを添えて――」

助手の少年がそっと聞いた。

「リリアーナ様……これは、なんといいますか、こう……貴族の前菜っぽいというか……」

「違いますわ。“冷やしラーメン”という文化を、私の感性で再構成しただけですのよ?」

「(めっちゃ本気だ……!)」と助手も感動のあまり涙ぐむ。

そして完成したのは――

透き通る麺に、繊細な蒸し鶏。香草と果実のジュレが涼風のように絡み合い、見た目はまさに“涼彩”の名にふさわしい。

一口目をすする審査員たちが、同時に目を見開く。

「ほおお……っ! 甘さ、酸味、そしてこの冷たさの余韻……!」

「これは冷やしラーメンではなく、“冷やし美食”とでも呼ぶべき逸品……!」

そして美月。

「(すごい……ラーメンというより、冷製コース料理の前菜。でも、それでいてちゃんと“冷やし中華”の魂を感じる。やられた……!)」

ついに発表の瞬間が訪れる。

「――地区代表に選ばれたのは……出場番号7番、リリアーナ・エルスハイト様!」

\うおおおお!!/

\貴族すげぇええ!/

盛り上がる観客のなかで、リリアーナは軽やかに一礼し、控えめに微笑んだ。

「ま、当然の結果ですわね。でもこれは……美月がくれた“ラーメン”という文化との出会いがあってこそ」

審査席の美月を見て、小さくウインク。

美月は照れくさそうに、手元の審査票で顔を隠した。

「(くぅ〜〜っ、憎い演出してくれる〜!)」

こうして――

貴族令嬢リリアーナは、見事に地区代表の座を勝ち取り、決勝大会への切符を手にしたのだった。

次なる戦いの地は、氷湖の街・ルミナリス――

彼女の冷やし革命は、まだ始まったばかりである。


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