第31話 休日は優雅に、気ままに〜ラーメンもお休みな一日〜
「美月さま、今日は完全なる・完璧なる・誠に尊い休日でございますわ!」
朝の光が差し込む窓辺。まだ寝ぼけた顔で髪をぼさぼさにしている美月の枕元に、花の香りとともに現れたのは、リリアーナだった。
「……おはよう、リリアーナ。って、なんでドア鍵かかってたのに入ってこれるの?」
「この令嬢、鍵束ひとつにてすべてを制すのです。ではさっそく、第一の工程――“お姫様のような朝食タイム”に参りますわよ!」
「勝手に工程組まれてる!?」
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◆王都の隠れ家カフェ『ブラン・ルージュ』
そこはリリアーナ行きつけの、貴族御用達の静かな庭付きカフェ。
「お待たせしました、マダム・シュタイン。こちらは今朝しぼったミルクのミルクティーでございます」
「ありがとう。美月さま、ここの紅茶は絶品ですのよ」
「うわ、ミルクが濃い……やさしい味だ……」
テーブルには、ラズベリーのスコーン、山羊乳のチーズトースト、ハーブサラダとベリーのジャムが美しく並ぶ。
「いつもの忙しさを忘れて、ほら、たまにはこういうのも大切ですわよ?」
「うん……こうしてゆっくり食べるの、ほんとに久しぶりかも」
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◆昼:路地裏の古書市と香料屋
「この通り、古書だけじゃなくて香草の屋台もあるのですわ。ラーメンに役立ちそうでしょ?」
「えっ、この乾燥シナ樹皮、香りすごい……スープに使えそう」
「うふふ、美月さま、せっかくの休みにもラーメンのことを考えてしまうのですね……可愛い」
「え、えぇ……?」
「それに、ほらこの本、“古代リシェルの精霊鍋”なんて……! スープ文化の先祖みたいなものですわ!」
二人は猫の置物を買ったり、チグー用のおやつを探したりしながら、のんびりと通りを歩いた。
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◆午後:湖畔のティータイム
風のやさしい午後、美月とリリアーナは小舟で湖を渡り、中央の浮島でティータイムを楽しんでいた。
「この湖、静かで好きなんだ。鏡みたいで……落ち着く」
「わたくしも、こういうところであなたと過ごせるのが、いちばん幸せですわ」
「えっ、なにさらっと重たいこと言ってるのリリアーナ!?」
「冗談ですわ、ふふ。でもね、美月さま。あなたのためにこの休日を計画して……本当に楽しいの。普段はあなたが皆を支えてるから、今日は、わたくしが支える番ですのよ」
「……ありがと、リリアーナ」
ふたりは紅茶を一口すすり、優雅に微笑みあった。
その様子を見て、岸辺にいたクラリーチェが鼻をぐすっと鳴らした。
「ぐぬぬ……!姉様の座が……!!(今日だけは譲りますけれどもっ!)」
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◆夕方:町の湯屋へ
「え、ほんとに行くの!? 町の湯屋って……!」
「庶民派の文化に触れるのも、大切な教育ですわ!それに、今日の仕上げは湯けむりと、牛乳ですの!」
「それ言い方がなんか違う気がするけど、いいやもう、全部乗っかる……!」
ぽかぽかの湯に浸かりながら、美月はしみじみと呟いた。
「……こんなふうに、ただの“日常”を楽しめるのって、幸せだね」
「はい、美月さま。ラーメンを作らずとも、あなたは素敵ですのよ」
「……そっちのほうが重い!」
そして――牛乳を一気飲みするふたりの姿は、他の客にちょっとだけ注目されていた。
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◆夜:月明かりの下のささやき
宿へ戻る道すがら、月を見上げながらリリアーナがそっと言った。
「また、こうして過ごせたら……嬉しいですわね」
「うん、次の休みも……一緒に行こうね」
ふたりの笑顔に、月がやさしく微笑んでいるようだった。
──美月の休日は、何気なくて特別な、心がふわっと温まる1日となった。




