◆第26話 クラリーチェ王女、ラーメン修行はじまる!? ~鍋より重いお玉は初めてですの!~
リシェル王国の王宮厨房――
いつもは格式高い料理が並ぶこの場所で、異変が起きていた。
「では、まずはこの寸胴鍋に水を……あっ、クラリーチェ王女!そっちは塩じゃなくて砂糖です!!」
「きゃっ!? し、しょっぱいラーメンには甘さが必要だと思いまして!」
「それは……ラーメンじゃなくてスイーツですわ!」
リリアーナが眉をひそめて突っ込む横で、美月は苦笑しつつも優しくフォローする。
「でも、発想は面白いかも。少しの甘みって、コクを引き立てるしね。でも入れるなら“玉糖”を小さじ1が限度かな」
「さ、さすがですわ美月さまっ! わたくし、その匙加減を体で覚えてみせますわ!」
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その日から、王女のラーメン修行は本格的に始まった。
だが、彼女の道のりは困難の連続だった。
「はぁっ、はぁっ……湯切りのザルって……こんなに重たいものだったのですの……?」
「クラリーチェ様、鍛え方が貴族の社交ダンス基準ですからね……これは“戦のラーメン”ですのよ」
リリアーナが横で腕を組みながら得意げに言う。
「ちなみに、私も最初は寸胴鍋を落としかけましたわ。でもいまでは、片手で投げられますのよ」
「り、りりあーなさまっ!? それはもはや兵士の筋力では!?」
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そして翌日――
クラリーチェ王女は、トレーニング着姿で現れた。
「今日から“ラーメン武者修行モード”ですの! いざ参ります!」
「いや、そこまで本気にならなくても……」
「いいえ、わたくしは決めたのですわ! 美月さまのように――熱き魂でラーメンを鍋に注ぎたいと!」
「……いや、注ぐのはスープでいいんだけどな」
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その後も王女は――
・火霊草をすりつぶして手がピリピリになる
・ラードを練りすぎて髪の毛に付けてしまい「新感覚ツヤ髪」になる
・味見のつもりががっつり完食して「作った分、全部食べたですの……」と涙ぐむ
――などなど、トラブル続き。
だが、誰よりも真剣で、誰よりも楽しそうだった。
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ある日、厨房の隅で火を使う王女に、美月がそっと声をかけた。
「クラリーチェ王女、疲れてない? 無理はしないでね」
「……大丈夫ですの。わたくし、美月さまと出会って初めて“好きなことに夢中になる”という気持ちを知りましたの」
リリアーナがそれを聞いて、そっぽを向きながらぽつりと呟いた。
「……いいですわね、若いって。私も昔は、同じように美月さまを追いかけて……今も追いかけておりますけども」
「今の“今も”のとこ、強調しなくても……!」
「ふふっ。でも、ふたりが楽しそうで、わたしもうれしいよ」
美月がそう言って笑うと、ふたりの令嬢はそろって頬を染めた。
「「美月さまが一番ですの(ですわ)!」」
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こうして、クラリーチェ王女のラーメン修行は、汗と笑いとちょっぴりの嫉妬(?)を交えて、日々進行中である。
そして近い未来――
彼女の手で生み出される“王女の一杯”が、国の枠を超えて伝説になることを、この時まだ誰も知らなかった。




