第31話 四天王の部下
「おやおや、お客様がこんなところに入ってきてはいけませんよ」
階段から下りてきたのは細身の男性。
ローブを着ていて、いかにも魔術師というような格好をしている。
私達を確認してもなお、笑っていて余裕そうだ。
「誰かと思ったらヴァルキリーの皆様ではないですか」
「止まれ! ここの店主だな! 事情は全てわかっている! 大人しくしろ!」
ジニーさんが強い口調で静止を促す。
真犯人の錬金術師は立ち止まりはしたけど、表情を崩さない。
「事情? 何の事情でしょう?」
「トボけたことを! お前が王都で起きている連続誘拐事件の真犯人だということだ!」
「なるほど……それだけですか?」
それだけ? いやそれが重要なんじゃないの?
「はは、はははははは」
真犯人は高笑いをする。
「何がおかしい!」
バカにしたような笑いにジニーさんが怒る。
「いやいや、まさかその程度の情報だけでここに乗り込んでくるとは思いませんでしたよ」
どういうこと。
なんだろう、このAランク冒険者を前にしてもこの余裕の感じは。
何か隠してる手段でもあるってこと?
「そうだ、ここまで来たご褒美に私の正体を教えてあげますよ」
真犯人は懐に手を入れる。
何か嫌な予感がした。
「動くな!」
ジニーさんも私と同じだったのか、叫ぶと同時に攻撃魔法を飛ばした。
攻撃魔法は矢のように飛んでいき、真犯人の手に当たる。
しかし手に当たった瞬間、魔法の矢が消え去った。
何かに相殺された感じだ。
「ははは! これが私の真の姿です!」
真犯人が懐から真っ黒い球のようなものを取り出して砕く。
砕かれた球から黒い煙が吹き出し、真犯人を包む。
「離れて!」
危険と踏んだのか、ジニーさんが叫ぶ。それに合わせてセシルさんが距離を取った。
私もちょっとだけ距離を取っておく。
黒い煙が晴れた後、そこにいた真犯人の姿は先程とは違っていた。
シルエットは先程の男性のままなんだけど、肌の色が紫色になっている。
その上で、顔と体中に何やら紋様なようなものが浮かんでいる。
「貴様……まさか魔族か!」
ジニーさんが息を呑んだ。
魔族!? いや、たしかに魔族っぽい見た目はしてるけど。
「その通り、私は四天王が一人、フォーシア様の部下。オンタゴだ!」
四天王!? また!?
『王都でも四天王の暗躍してたんかい!』
『これは、この放送見てないとわからんかったよ』
『四天王の部下、アリスちゃん大丈夫か?』
「その四天王の部下がここで何をしていた!」
「さてね、それを知りたければ私と戦って勝つことです!」
真犯人、改めオンタゴが黒い魔法を飛ばし、それをジニーさんが魔法で相殺した。
戦闘の始まりだ。
オンタゴの攻撃は基本的に魔法攻撃だった。
四天王の部下ということもあって警戒をしていたんだけど……
『なんかあんまり強くない?』
『ああ、攻撃も割りとパターン数が少ないから読めるな』
『基本、単発攻撃しかして来ないから避けるのも余裕だし』
『見た感じ威力もそんなに高くない?』
オンタゴの魔法攻撃は全部セシルさんが自分の盾で受けている。
私達のところまでは全然飛んでこない。
『というか、ヴァルキリーの3人がやっぱり強いな』
『ああ、ヴェラさんの攻撃とか全然見えん』
『俺……あれ防げる気しないんだが?』
わかってたけど、Aランク冒険者は伊達じゃないね。
魔族を相手に一歩も引かないどころか圧倒している。
そんな感じだから、いつでも倒せそうに思ったんだけど。
「……なんか攻撃が効いてない?」
思わず呟いてしまった。
一応私も弓で援護をしているけど、オンタゴは全く避ける様子もない。
私の威力が低いからかと思って無視されているのかと思ってただけど、ヴェラさんの攻撃もジニーさんの魔法も効いていないように見える。
一応防ぐ素振りみたいのを見せているけど、当たっても何の反応もしてない。
「あ、アリスちゃんも気がついた?」
「はい、なんか変です」
「そうね、きっとなにか秘密があるはずだわ」
ジニーさんも同じように気がついているみたいだ。
『なるほどギミック付きの戦闘か』
『流石に弱すぎるもんな』
『ギミック戦闘ってのは、何らかの仕掛けを解除する必要がある戦闘のことよ』
ああ、やっぱりそういうことか。
でも一体どこだろう?
GM『教えましょうか?』
おっ、GMさん。いや、確かにGMさんなら知ってるか。
『いや待て! 俺たちが見破る!』
『何、俺たちの観察眼からすればすぐだ! というわけでお願いします』
『余裕だなお前ら』
いや、本当だよね。
まぁ、その理由もわかるけど。
『だって、部下さん、ヴェラさんの攻撃を受ける一方になっちゃってて魔法を唱えさせてすらもらえてないじゃん』
『辛うじて唱えてもセシルさんが盾で速攻止めてるからな』
『後衛に危険なさそうだし』
うん、私も攻撃来ないなぁとは思ってた。
ジニーさんも攻撃の手を止めて観察に入っているし。
『攻撃が効いていないっていうのは、2パターンくらいかな』
『あれが偽物で本体が別にいるパターン』
『何かが攻撃を吸収 or 肩代わりしているパターン』
『どっちかって言うと後者っぽいな』
『吸収かなぁ』
視聴者さんの推測に私も同意する。
流石に偽物には見えないし。
そういえば、仮にも錬金術師やってたんだよね。
だったら、その関係で攻撃を防ぐアイテム使っているとかかな?
「そういえば、最初にジニーさんが攻撃した時も効いてませんでしたね」
「そうね……」
そうなると、変身前から敵が身に着けてた何か、かな……
『首から何かぶら下げてるな』
『ローブで隠している風だけど、ヴェラさんの攻撃避ける時にちらっと見える』
『攻撃当たった瞬間光っているようにも見えるな』
『俺のVRMMO歴が言ってるぞ、あれで確定だ!』
視聴者さんの方からいい情報が入った。
確かに言われてみれば首にネックレスのようなものを付けている気がする。
なるほど、なるほど。
それじゃあ、アレを壊せばいいわけか。




