第28話 犯人の狙いは
「アリスちゃん、これ美味しいわよ!」
「ジニーさん、自分で食べれますから!」
ジニーさんから押し付けられたマカロンを受け取って自分で口に運ぶ。
「あ、甘くて美味しい」
「ねっ、美味しいでしょ。でも、まだまだ美味しいものはあるわよ!」
ジニーさんはそう言って、市場の中を行く。
『ちょっと目を離した隙に市場の食べ歩きが始まってたんだが?』
『奇遇だな、俺もずっと見てたけど全然わからん』
『アリスちゃんが美味しいもの食べて嬉しそうだから、これはこれでOk』
うん、私も違和感あるよ。
犯人探しをしてたのに、なんで食べ歩きをしているのか。
ちょっと思い返してみることにしようか。
私の家から市場までは何の事件に遭遇することもなかった。
まぁ、流石にそんなにすぐに遭遇するとは思ってなかったから引き返そうと思ったんだけど。
「アリスちゃん、市場の中は見ていかなくていいの?」
「はい?」
私が引き返そうとすると、ジニーさんに呼び止められた。
「ほら、市場の中だって怪しい人がいるかもしれないじゃない?」
「いや、確かにいるかもしれませんが……こんな人通りの多いところで犯人が行動するでしょうか?」
市場の中は常に人で賑わっている。
日本の縁日みたいな感じで、通路の両脇に屋台が出ているから人目に触れないってのは難しいと思う。
「わからないわよ。市場だって広いもの、ほら屋台の後ろとか閑散としてそうじゃない?」
指を差されて見てみれば、確かに……、でもそんな可能性あるのかな?
『一応、夜だと市場でも事件には遭遇したな』
『昼間にってのは聞いたことないけど』
『ランダムってことを考えるとないわけじゃなさそう』
『どうせだから一回りくらいしていけば?』
視聴者さんも可能性として否定できないとのこと。
「まぁ、それじゃあちょっと回ってみましょうか」
「わかったわ……あっ!」
決めて市場に入ると、すぐさまジニーさんが走りだした。
何かを見つけたのかな!
急いで後を追うと、
「アリスちゃんアリスちゃん! これ美味しいのよ!」
ジニーさんは屋台を指差している。
えっ? 美味しい?
「買ってあげるから食べよう。ねっ!」
私の返事を聞く前にジニーさんは屋台のおじさんに話しかけていた。
というわけで、いろんな屋台を巡ってはジニーさんのお勧めをいただいている今に至る。
いや、確かにジニーさんのお勧めは全部美味しいけど。
久々のお菓子でテンション上がっちゃったけど。
目的は犯人探しなんだよ!
「そろそろ戻らないか?」
セシルさんが呆れたような声で提案してくる。
「はい! そうですね! そうしましょう」
「えー、まだ時間あるでしょー」
「いいから、行きますよ!」
ジニーさんの手を掴んで私は市場の入り口まで急ぐ。
ジニーさんと市場の組み合わせは危険ってこと、覚えたよ!
市場を出た後、私の家の方向に向かって歩く。
道は適当だ。
ただ、できるだけ人のいなさそうな道を選んで進んでいく。
『なんか誰ともすれ違わなくなってきたな』
『これパターン入ってる?』
『ありえる。俺の時もこんな感じだった気がする』
おっ? 視聴者さんの反応からするといよいよかな?
「……アリスちゃん」
「はい? なんですか?」
期待していると、ジニーさんが少し声を潜ながら話しかけてきた。
「あの人、ちょっと怪しくないかしら?」
視線で示された方向を見ると、そこには一人の男性がいた。
「うわぁ……」
思わず声が出てしまった。
『反応wwwいやわかるけどwww』
『もういかにも悪そうなチンピラだよなw』
『スキンヘッドに赤色のモヒカンが肩切って歩いているとか』
『顔もナイフでも舐めてそうな面してるからなwww』
『なんの世紀末かな?』
視聴者さんが全部言ってくれたけど、今まで見た人の中で一番異様な感じの人が歩いている。
あれが犯人だとするとわかりやすすぎるでしょ!
「ジニーさん、少し追ってみましょう」
「わかったわ」
視聴者さんの反応からもう確定だとは思うけど、後をつけることにした。
『追ってると対面から誰か歩いてくるから現行犯逮捕しよう』
視聴者さんの言う通り、しばらく後を追っていると。
「前方から誰か来たわよ」
情報どおり、私達が向かっている道の先から誰か歩いてきた。
小さい女の子。あれ? 見覚えがあるシルエットなんだけど。
「……ひょっとしてルーナちゃん?」
「……そうね」
見覚えがあるのも当然、一緒に暮らしている子なんだから。
って、あれ? ひょっとしてこのタイミングそういうこと?
『ルーナちゃんピンチでは!?』
『あかん! 犯人がルーナちゃんと接触するぞ!』
『ポケットから魔導具を取り出そうとしてる!』
『魔導具は相手に使うとダメージを与えて気絶させる効果なはず!』
やっぱり!
犯人とルーナちゃんの距離はもうすぐそこ。
このままじゃ、ルーナちゃんが誘拐犯の手にかかっちゃう!
「させない!」
走っても間に合わない。
だったら……
すぐさまインベントリから弓を取り出して、
「……っ!」
犯人を狙って矢を放った。
矢は犯人の肩の当たりを目掛けて飛んでいきそのまま貫いた。
「ギャッ!!」
犯人の男が悲鳴を上げる!
同時に犯人の手から何かが落ちる音がした。
「えっ!!」
「アリスちゃん!?」
ルーナちゃんとジニーさんの驚く声が聞こえる。
「ルーナちゃん! こっち!」
「アリスさん?」
「早く!」
私が声をかけると、ルーナちゃんは急いでこちらに走ってきた。
走ってきたルーナちゃんを抱きとめて確認するけど、何事もなさそうだ。
「よかった。間に合った」
「えっ? っと? アリスさん? どうかしたんですか」
ルーナちゃんにはわけのわからないような感じだけど、それで良かったよ。
「もう、アリスちゃん! 手を出すなら先に言ってちょうだい!」
なお、ジニーさんには後で小言をもらうことになった。




